不動産投資コンサルタント
「明るくて会話上手の人は、人生楽しいんだろうな……」。もしあなたがそう思っているなら、考えを少し改めましょう。なにしろ不動産投資コンサルタントとして活躍している午堂登紀雄氏は、「人見知り、口下手、ネクラ」の三重苦を受け入れて活躍し、自由に楽しく生きているのですから!「人と比べてしまう自分」からの卒業テクニックを紹介します。
「外向的人間の方が価値がある」と思い込んでいないか?
自己肯定感が低い人の多くは内向的です。引っ込み思案や人見知りという傾向もあります。
話し方などコミュニケーションに関する書籍やセミナー、講座はたくさんあって人気もあるようです。自己肯定感の高低に限らず、会話ベタ、口ベタなどを改善したいと思っている人が多いからでしょう。
そしてその根底には、「会話が上手な方が能力が上」「人は外向的・社交的な方が価値がある」という認識があるのだと思います。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
実は内向的な人にも固有の強み・魅力があり、それを上手に引き出せば、外向的な人以上の成果を上げたり、幸福を手に入れることができます。
外向的な人の中には、周りを明るくする能力に秀でている一方、一人ひとりと深くじっくり話すのは苦手で、友達は多いけれども悩みや本音を打ち明けられる親しい人は少ない、という人も多いのです。
「外向的で会話上手な人が、人間として好ましい」という価値基準で比較すると「自分はダメ」となりますが、そうではない価値もたくさんあると、まずは知ることです。 学校や職場で魅力的な人、みんなが憧れている人は、一般的にコミュニケーション能力が高いと思います。
しかしコミュニケーションとは、全員に好かれるような気の利いた発言をすることや、立て板に水のごとくスラスラとしゃべる能力ではなく、目的に応じて適切に意思疎通できる力のことです。
学生時代のような、みんなの中心になって場を明るく盛り上げる能力だけではありません。
報告、相談、質問、スピーチ、プレゼン、交渉、説得、説明などなど、コミュニケーションには多種多様な形態があり、それぞれに目的も違います。
言葉よりも行動で示した方が効果的なこともあれば、聞き役に徹し適宜あいづちを打っていた方がいいときもあるでしょう。
つまり、その目的が達成できれば良いわけですから、無理して明るく振る舞ったり、饒舌にしゃべったりする必要は必ずしもなく、自分のやり方で自分らしくコミュニケーションをとればいいのです。
たとえば野球が下手だからといって、「自分は人としてダメだ」などとは思わないでしょう。
野球以外にも、ゴルフ、バスケ、バドミントン、バレーボール、卓球、剣道、陸上など競技はたくさんあり、その中で自分の才能を発揮すればいいはずです。
人間関係も同じく、自分の得意な方法で関わればいい。
憧れのあの人のようになりたいと無理して自分を変える必要はないし、「場を楽しく盛り上げる」ことができないからといって、劣等感を抱く必要もありません。
むしろ大事なのは、「自分という個性をいかに発揮できるか」を考え追求することです。
たとえば、今の私は、ほぼノートパソコンだけで完結する生活を送っていますが、自分を活かせる環境が整ってきたように感じます。
たとえば本やコラムのような「書く」仕事はもちろんですが、商談なども、ほぼパソコンとメールで完結します。
電話で話す時間も頻度も圧倒的に減っていて、仕事でも「緊急以外は電話に出ない」「なるべくメールやチャットで」という人も増えていますよね。
私も、登録してある電話番号以外からの着信には基本的に出ませんし、重要なら留守電にメッセージが入るはずですから、あとで自分の都合の良いタイミングで折り返すようにしています。
新型コロナウイルスの影響により、リモートワークやテレワークが浸透してきていますから、こうした環境は内向的な人間にとって大きな追い風です。
「外向的」へのむやみな憧れから卒業する
外向的か内向的かは、たとえば色鉛筆の青と緑を比較しても優劣はつかないのと同じで、「良いか悪いか」ではありません。
ではなぜ、自分の性格に悩む人が少なくないのか?
それは、「外向的でなければならない」という思い込みに執着しているからで、その執着を外してしまえば、それは悩みではなくなります。
そもそも内向的というのは、単に人間関係の中で目立たないだけで、仮にコミュ障とか話ベタでもあっても、そこに結果がついてくれば何ら問題ないはずです。
あるいは自身が満足し幸福感を得られるなら、外向的であろうと内向的であろうと、どうでもいいことです。
そもそも弱みや欠点というのは相対的であり、環境や立場を変えると強みになることがあるというのは、よく知られていることです。
口ベタだと人間関係においてマイナスだと考えがちかもしれませんが、誠実でまじめそうな印象を与えることができます。
無口な人がたまに言葉を発すれば重みをもって受け止められるし、寡黙さは冷静さとなり、頭が良さそうとか、落ち着いた人と映ることもあります。
反対に、外向的ゆえにそれが欠点となることもあります。
たとえば社交的な人はワイワイ騒いだり場を盛り上げることはできても、前述の通り、ひとつのテーマに対して深くじっくり話すことが苦手な場合が少なくありません。
内向的な人は友達が少ない分、深いつきあいになるのに比べ、外向的な人は、友達はたくさんいるものの、そのつきあいは浅いこともあるのです。
口がよく回る人、外向的でおしゃべりな人はコミュニケーション上手と思われることがありますが、コミュニケーション能力と「口達者」はまったくの別ものです。
つるんと口が滑って炎上し、叩かれる政治家や芸能人がよくメディアを騒がせますが、これではいくら口達者でも、むしろ損ですよね。
外向的な人は、落ち込んでいる人に対して「元気を出して」などと安易な慰めをしがちですが、落ち込んでいる人にとっては、そういう声かけはむしろうっとうしいこともあります。
しかし内向的な人は、自分の空間を大切にするため、相手の領域にずけずけと踏み込むようなことはしないで、優しく見守るということができます。
外向的な人は、何か問題が起こると大騒ぎして周囲を巻き込みがちですが、内向的な人は人に頼る勇気がない分、自分でなんとかしようとするので、物事にいちいち動揺しないものです。
内向性を強みにする
学生時代を思い出してみると、クラスの中でいつも中心にいて人気を集めていた人がいたと思います。
では、その人たちは今、どんな状況でしょうか?
成功している人もいるかもしれないし、そうでない人もいるでしょう。
つまり成功や幸福は、外向的か内向的かで決まるわけではないということです。
私は数人のITベンチャーの社長を知っていますが、ほとんどの人は無愛想で、口数も少なく、ノリも良くありません。
一方、飲食業のオーナーもたくさん知っていますが、たいてい人懐っこくて、周囲を楽しませる話術に長けています。ホスピタリティも高く、サービス精神旺盛です。彼らがいると場が盛り上がります。
ここからわかることがあります。
成功している人は結局、自分の資質や適性を活かせる職業、活かせる分野を選んでいるからこそ活躍できているということです。
そしてそれは、一般人である私たちも同じです。
資質は、自分を活かせる世界をある程度限定してくれます。
また、性格は学習して獲得した処世術です。
それらを踏まえて、自分が生き抜く方法、生きていく世界を選ぶことが大切です。
肌の色が違うからといって、人間としての魅力や価値には関係がないように、内向的か外向的かという資質も、人間としての価値には無関係なのです。
それに、内向的に生まれてきたということには何らかの意味があるわけですから、素の自分のままで自分の才能が発揮できる場所を選ぶことです(むろん努力しなくていいという意味ではなく、努力が苦でない環境を選ぶということです)。
たとえば私の卑近な例で恐縮ですが、すでにできあがった人間関係の中には入れないので、アルバイトをするときも「居酒屋新店オープンのためアルバイト募集」など、みんなが初対面で横一列スタートのものを選んでいました。
次は工事現場やビル清掃など、会話をあまり必要とせず、一人で黙々とやるものを選ぶようにしました。
そのおかげで、人の輪に入れず肩身が狭い思いをすることはありませんでしたし、黙々とマジメに仕事をする人間だという評価を受けることができました。
また、人はある場面では内向的でも別の場面では外向的になるなど、いつも同じではありません。
たとえば前述のITベンチャーの社長で言えば、普段は寡黙であっても、仕事に関する話になると饒舌になります。
彼らにとっては、雑談が苦手なら部下に任せればいいし、仕事できちんとプレゼンできれば問題ないということなのでしょう。
だから自分の特徴とそれが及ぼす影響を知っていれば、有利に働く場面ではフル活用し、不利に働く場面では回避行動を取ればいいのです。
自分の外向的な部分と内向的な部分をしっかり把握しておけば、自分に無理をせず、でも必要な場面では有利に働かせるということが可能となります。
内向的素質に逆らって別の自分になろうともがくよりも、素質にプログラムされている特徴や能力を活かしていくことが大切です。
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。米国公認会計士。大学卒業後、東京都内の会計事務所を経て、大手流通企業にて店舗及びマーケティング部門に従事。世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。「極度の人見知り、口下手、ネクラの三重苦」という自身の特性を生かし、ストレスの少ない働き方を実践し強く支持されている。著書に『年収1億円を稼ぐ人の頑張らない成功法則』(学研)、『「いい人」をやめれば人生うまくいく』、『人生の「質」を上げる 孤独をたのしむ力』(日本実業出版社)などがある。