お風呂だと歌が上手くなるのはなぜ? 音にまつわる科学知識3選

私たちの身の回りでおこるさまざまな現象には、科学のチカラが働いています。普段は見逃しているけど、あらためて考えると不思議なことがたくさん! 学校では教えてくれなかった“科学の小ネタ”を3つご紹介します。

お風呂は「音の万華鏡」のような空間

風呂場で歌をうたうと、エコーがいい具合にかかるばかりか、自分の声が妙に艶っぽく聞こえて、うまくなったような感じがします。なぜでしょうか?

主な理由は3つあります。1つは、風呂場が適度にせまい箱型になっていることです。もし広く開けたところで歌をうたうと、私たちの耳に聞こえるのは、声を発したときに出ていく瞬間の音だけです。

でも、風呂場では四方が壁なので音が反射して、また自分の耳に入るのです。 私たちはコミュニケーションを大事にする動物です。無意識のうちに自分が発した声の反射音を聞いて、自分を認識していますので、反射音がない場所は、少し不安な気分になるものです。

2つ目の理由は、風呂の壁がツルっとしているということです。ユニットバスであれ何であれ、風呂場の壁は掃除しやすいように表面が平らなものが多いですね。そのような壁は、光にとっての鏡のようなもので、もとの音の強さをあまり減らさずに何度も反射します。これを「多重反射」といいます。

多重反射によって、音の華やかさのもとになる高音や、豊かさのもとになる低音が持続します。つまり、風呂場は音の万華鏡のような空間なのです。

3つ目は、風呂場には音を吸収するもとになる障害物がないことです。家具や布製品などがないので、音が続きやすいのです。さぁ、お風呂で思いっきりうたってください。

お風呂で歌が上手くなる原理

KEYWORD 音の多重反射

「和音」と「不協和音」、違いはどこにあるの?

私たちは和音で音楽を感じますが、和音って何でしょう? そもそも楽器の音が、手をパチンと叩いたときに出る音と違う点は何でしょう。

楽器の音(人の声を含む)は、基本の音(基音といいます)の周波数に、その周波数の整数倍の音(倍音といいます)が混じっているときに、音色として感じることができます。

つまり、ピアノである音を出したとき、基音の周波数をfとすると、同時に2f、3f、4f……の周波数の成分も混じっているのです。

それでは和音について考えてみます。例えば「ド・ミ・ソ」という3つの音は、基音の周波数の比が、およそ4対5対6になっています。

そこで、楽器でそれぞれの音を出したときの周波数の成分は、基音に倍音が混じっていますから、

[ド] 4、8、12、16、20……
[ミ] 5、10、15、20、25……
[ソ] 6、12、18、24、30……

となります。こう書き並べてみると、ドの3番目(3倍音)とソの2番目(2倍音)が、両方「12」で一致していますし、ドの5倍音とミの4倍音が両方「20」で一致していることがわかります。

和音を図解

このように、倍音が最初のほうで一致する箇所があるときに、重なった音は人にとって快く響き、和音になります。逆に、周波数がわずかにずれた音は、うなりを生じて変な感じがします。これが不協和音です。

KEYWORD 倍音の一致とずれ

あのイヤな「ハウリング」はどうして起きてしまうのか?

「えー、本日は……」
キーーーーーーーーーン!

耳をつんざく音が鳴ると、主役の座は一瞬のうちに奪い取られ、客席で聞いているほうは耳をおおいたくなるし、主催者側もあせってしまいます。
これは「ハウリング」という現象ですが、なぜ起きてしまうのでしょう?

通常、マイクが拾った音はアンプに送られ増幅されてスピーカーから出てきますが、それをさらにマイクが拾ってしまったときに、マイク→アンプ→スピーカー→マイク→アンプ…と音がループしてしまいます。

このループする音のうち、ある特定の周波数の成分だけがどんどん増幅され、「キーン」「ブーン」という音になってしまうのです。これがハウリングの正体です。

これを防ぐには、マイクがスピーカーからの音を拾わないように、スピーカーを完全に客席側に向けるなど、マイクとスピーカーが向かいあわないように設置することが第一です。カラオケの際にハウリングが起きたら、まず試してみてください。

また、マイクの指向性が弱いと、ハウリングを起こす範囲が広くなってしまいますので、マイクやスピーカーの指向性が強いことも大事です。

ハウリングの原理

ところで、ハウリングは結果が原因に戻って増幅される典型的な「正のフィードバック」の現象です。自然現象にも、核分裂の連鎖反応や北極海の氷の減少のように、結果が原因になってループしながら増幅する現象があります。

KEYWORD 音のループ

 

 
PROFILE
瀧澤美奈子[監修]

社会の未来と関係の深いさまざまな科学について、著作活動等を行う。2005年4月、有人潜水調査船「しんかい6500」に乗船。著作に『日本の深海』(講談社ブルーバックス)、『地球温暖化後の社会』(文春新書)、『アストロバイオロジーとは何か』(ソフトバンク)など。内閣府審議会委員。文部科学省科学技術学術審議会臨時委員。慶應義塾大学大学院非常勤講師。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。

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