言っている本人は無意識! 不快な「マウンティング」をかわすコツ

なんてことはない世間話なのに自慢話をかぶせたり、こちらの話を否定したり。人を疲れさせ、不快にさせる「マウンティング」という行為ですが、脳神経外科医の菅原道仁先生によると「それは本能であり、誰もが気づかないうちにマウントしている可能性がある」とのこと。人はどうして優位に立ちたいと思ってしまうのでしょうか? そのしくみと対処法を解説いただきました。

マウンティングは生存本能の現れ⁉️

コミュニケーションにおいて、もっとも怖いことはなんでしょうか? 僕は、知らずしらずのうちに、敵をつくってしまうことだと思います。例えば、自分としてはごく普通に話しているだけなのに、相手を怒らせてしまうとか。

そんなコミュニケーションの一形態が、無意識にやってしまう「マウンティング」です。あなたも気づかないうちに、次のようなことをしていませんか? 

・同僚が仕入れた情報を聞いたとき、「それ、知ってる」と出鼻をくじく。

・ディズニーランドに行った話をされて、「私はシーも行ったよ」と上乗せする。

・「ここのところ、忙しくて徹夜続きで……」と聞かれてないのに「寝てないアピール」。

・「いいよね、Aさんは残業ナシで。私なんかいつも課長に頼られて仕事を振られて残業ばかり……」と自虐からの、自分上げ。

 気づけばほんの少しだけ、相手より自分を持ち上げてアピールする。どうでしょう、この、そこはかとなく漂う嫌な感じ……。勝手に格下げされた相手が、面白く思わないことは明白です。敵をつくりやすい人は、こうしたマウンティングを無意識に繰り返すことがあります。

マウンティングは本来、「サルなどの動物が、自分の順位が上だと示すために、相手に馬乗りになる行為」のこと。

野生では、「強い」「大きい」など、個体として優れていることを積極的にアピールすると、歯向かってくる相手が少なくなるため、生き残れる確率が高くなります。生き残る術として、本能に組み込まれているのがマウンティングです。

人間の場合も同じで、「生き残りたいから、自分を上のランクに見せたい」という本能が、マウンティング行為を引き起こします。マウンティング意識が旺盛な人は、脳に刻み込まれた本能の強さから、人をランク付けすることが大好きです。

また、自分がランク付けをよくするので、心理学でいう「同一化」の影響から、他人も同じだと思い込みます。そのため、他人と張り合おうとする意識がことさら強くなります。

よく言えば、マウンティングしがちな人は、生来の負けず嫌いだということ。負けん気は、上手に使えば成長のための原動力になります。そこは自覚して、上手に活用しましょう。

また、「生き残りたいから、自分を上のランクに見せたい」という本能は、「他人に自分を認めさせたい」という承認欲求につながります。

承認欲求が満たされると、脳内で放出されるのが、神経伝達物質ドーパミンです。ドーパミンが出ると、すごく気持ちよくなります。マウンティングで優位に立つと、やたらと気持ちよくなるはそのためです。気持ちよすぎて、相手の気持ちを考えるのが二の次になります。

マウンティングをしがちな人の脳は、ここで怠けてしまいがちなのです。自分の気持ちよさにかまけて、相手の気持ちを考えるのをサボるのです。

それどころか、悔しがる相手を見て、さらなる優越感でもっと気持ちよくなってみたり。そりゃ、敵も増えるってもんです。

反対からいえば、マウンティングしがちな人はそこに伸びしろがあります。他人そっちのけで気持ちよくなりたがる自分に気づくことが必要です。

ついマウンティングしてしまう自分を変える方法

では、どうすれば相手の気持ちをスルーする脳を動かして、他人そっちのけで気持ちよくなる自分に気づけるでしょう?

話している最中に「あれ、なんだかやたらと気持ちいい。これってもしかしてマウンティング?」と気づければよいのですが、なかなかそうもいきません。

だとすれば、事前にマウンティングしがちなケースを知っておくことが役に立ちます。それが、次のようなものです。

  • 自分、もしくは自分の親しい知人の「優秀」「忙しい」「リッチ」「幸せ」自慢
  • 求められてもいないのに、「自分の場合は〜」と上から目線アドバイス
  • 相手の言動や持ちものに対抗して、それより「上」を提示
  • 何か言われたら「でも〜」「そうはいっても〜」など、とにかく否定から入る癖
  • 「それってほら、〜」「えらいね」など、子どもに対しているかのような口癖

こんな話をしそうになっている自分に気づいたら、そっと口をつぐみましょう。それまで相手は100パーセント、カチンと来ていたのですから、確実に好感度を上げていけるわけです。

相手の「上から目線」をさらりとかわすには?

中には、「自分はマウンティングしない」と思っている人もいるでしょう。自分がしなくても、されてイラッとしたことはありませんか? もしあるなら、あなたも、気づかないうちにマウンティングをしている可能性があります。

なぜなら、誰かにマウントを取られてイラッとしたということは、「なんでこの程度のヤツにエラソーにされなきゃいけないわけ?」と考えているということだからです。

この根底には、

 「年齢や社歴ゆえ立場的には下だが、実績や好感度では自分の方が上」

 「課長に気に入られてるのは私のほう」

といった主観的なランク付けが存在します。だからこそ、下にいるはずの相手に見下されてイラッとするわけです。

つまり、イラッとするということは、あなたも無意識にランク付けしているということ。ちなみに、こうした無意識は、理性を司る前頭葉が弱っているときに、行動となって現れることがあります。前頭葉を弱らせるものとしては、例えばアルコールなど。

そのため、普段はマウンティングをしない人でも、疲れているときやお酒の席では、「俺の若いころは……」「うちの彼氏が〜」とついマウンティングを始めがちになります。

つまり、誰もが気づかないうちに、マウンティングをしている可能性があるということです。だとすれば、重要なのはあなたがマウンティングをしないこと。さらに、誰かにマウンティングされても反応しないことです。

相手の上から目線にイラッとしたときは、「そうなんだ〜」「そうなんですね〜」などの否定とも肯定ともつかない言葉で、相手の攻撃をさらりと受け流しましょう。

運がよければ、それで相手の話が終わることもあります。心に余裕があるときは、少し深堀りして話を聞いてあげるのもいいでしょう。

ただし、おざなりな態度で話を聞くと、相手にはすぐにバレます。マウンティング意識が強い人は、自分がないがしろにされる雰囲気に敏感だからです。

そんな相手の話を聞くときのポイントは、心から共感してあげること

「でも、こちらを見下す態度になんて、まったく共感できないんだけど」というなら、話の内容ではなく、マウンティングせずにはいられない相手の気持ちにフォーカスしてみてください。

わざわざ行われる「自分すごい」アピールの陰には、強く見せなければやられてしまうと感じている、小さな自分が隠れています。相手が繰り出す言葉にはひとつも共感できなくても、自分を大きく見せなくては不安な気持ちには共感できるのではないでしょうか。

マウンティングが始まったら、「なんかゴチャゴチャ言ってるけど、不安だってことはわかる」と脳内変換して、共感を持って聞いてあげましょう。

人は自分の話を、共感を持って聞いてくれる人が大好きなのです。

 
PROFILE
菅原道仁

脳神経外科医。菅原脳神経外科クリニック院長、菅原クリニック 東京脳ドック理事長。杏林大学医学部卒業。クモ膜下出血や脳梗塞などの緊急脳疾患専門医として国立国際医療研究センターに勤務後、脳神経外科専門の北原国際病院に15年間勤務。その診療経験をもとに「人生の目標から考える医療」のスタイルを確立する。2015年に菅原脳神経外科クリニック(東京都八王子市)を、2019年に菅原クリニック東京脳ドック(港区赤坂)を開院。心や生き方までトータルにサポートする診療を日々続けている。『名医のTHE太鼓判!』(TBS系)等テレビ出演多数。脳のしくみについての独自のわかりやすい解説が支持されている。著書に『そのお金のムダづかい、やめられます』(文響社)等がある。