「気づくとスマホ」「ギャンブル」こんな悪習慣をやめる脳の使い方

「しょっちゅうスマホを触っている」「つい食べ過ぎてしまう」「課金ゲームがやめられない」……依存症というほどではないけれど、やめられない習慣、ありませんか? 適度に楽しむ分にはいいけれど、仕事や家庭生活に影響が出てしまうのは避けたいところです。脳神経外科医の菅原道仁先生に、ありがちな悪習慣や依存を手放すヒントを伺いました。

スマホが視界にあるだけで、仕事や勉強の効率が下がる⁉️

習慣とは「毎日のように繰り返し行うこと」。ですから、自分にマイナスをもたらす習慣を持っていると、人生のマイナスが日ごとにどんどん積み重なります。

すると、仕事や勉強を頑張ってどんなにプラスを積み上げてみても、マイナスがプラスをガンガン打ち消していくことに……。やったことがムダになるほど、モチベーションが下がることはありません。

「どんなに頑張っても、意味なんてないんだ……」そう感じると脳は投げやりになり、さらに怠けてしまいます。

30代以下の人たちに多いのが、「スマホを手放せない」という習慣です。もちろん、必要なやりとりや情報収集のために、意識的に使うのであればまったく問題ありません。気になったことをその場で調べれば知識も増えますし、SNSで培ったゆるく広い繋がりで仕事をしやすくなることもあると思います。

しかし、ポンポン飛んでくるSNSやメールのプッシュ通知が気になって、何時間もスマホを触ってしまい、仕事が疎かになるのは考えものです。また、夜間もそうしたものが気になってしまい、睡眠不足から生産性が落ちるのも困りますよね。

では、どうすればスマホを必要以上に気にせず、仕事ができるのでしょう? 実は、「スマホなしではいられない」という人は、スマホが視界にあるだけで、仕事や勉強の効率が下がることがわかっています。

テキサス大学オースティン校にあるマコームズ・スクール・オブ・ビジネスのワード准教授らの研究では、800人近くのスマホ・ユーザーに、集中しなければ解くのが難しいテストを受けてもらいました。その際、参加者にはスマホをオフにしてもらった上で、「伏せてデスクの上に置く」「ポケットにしまう」「自分のカバンにしまう」「別の部屋に置く」のいずれかをしてもらうよう、無作為に指示しました。

テストの結果、最も成績が良かったのは、スマホを「別の部屋に置く」よう指示された参加者たちでした。わずかな差で続いたのが、「ポケット・カバンにしまう」よう指示された人たち。最も成績が悪かったのは、「デスクに置く」ように指示された人でした。

ワード准教授によれば、スマホが視界に入ると、「スマホがあることを気にしないようにする」ための努力に脳のエネルギーが無駄に使われてしまい、課題解決に注げるエネルギーが少なくなってしまったようだ、とのこと。

ですから、集中して仕事をするときは、まず、スマホは電源を切った上で、見えないところにしまうこと。できればロッカーなど、離れた場所にしまえればベストでしょう

「自分へのご褒美」が多いときはストレス過多を疑おう

買い物にも依存性があります。買い物をしようと考えると、その刺激で脳の報酬系が刺激されて、ワクワクをもたらすドーパミンが分泌されます。買い物が楽しいのは、このドーパミンの作用です。

特に、忙しいなど強いストレスを抱えたときほど、買い物の誘惑は抑えがたくなります。

「買いたい!」という衝動を抑えるのは、理性を司る前頭前野。しかし、ここがストレスにとても弱く、そのせいで疲れると自制心が効かなくなります。

「自分へのご褒美」を買いすぎてしまう人や、よく考えたらさほど欲しくないものをバンバン買っているという人は、ストレスから前頭前野が働きにくくなり、自制ができなくなっている可能性があるんです。

また、そんなときに大金を払うと、心理学でいう「アンカリング」(anchoring)作用が働いて、それ以降も大金を払い続ける傾向があります。

アンカリングのアンカー(anchor)は、船の「錨」のこと。錨を降ろすとそこで船が停泊するように、一度印象的な体験をすると、そこが価値観の基準になるという心理現象のことです。

例えば、これまでは1足5千円の靴で十分だと思っていたのに、一度1万円の靴を買うと、次に靴を買おうとするときも「まぁ……1万円までなら、出してもいいかな」と考えるようになる。そんな経験、あなたにもありませんか? これがアンカリングです。こうして自制心が一度緩むと、どんどん買い物の額がかさんでいくことがあります。

無計画に浪費する人は、自分の人生の目標を意識していないことがよくあります。これを機に、人生で「これだけは絶対にやっておきたいこと」を3つ挙げてみましょう。「車を買いたい」「犬を飼いたい」「植物を育てたい」など、どんなことでも構いません。

お金を使いたくなったときは、まずここに使うようにします。

今のあなたが若くても、1年後も生きているという保証はどこにもありません。

ですから、大切なお金は、あなたの人生の目標をひとつでも多く叶えることに、優先的に使ってください。そのために使うお金は、無駄遣いではありません。1つ夢を叶えたら、次々と夢を追加していきましょう。

その際は、できれば、モノより体験にお金を使うのがお勧めです。

カリフォルニア大学の心理学者、リュボミアスキー教授は、モノを購入した喜びは、手に入れた瞬間がピークで、そこからどんどん薄れていくと指摘しています。どんなに高価なモノでも、手に入れればそれは日常の一部となり、特別感が薄れてしまうからです。

けれど、お金を払って体験した楽しさは、時間が経っても、その特別感が薄れることはありません。さらに、経験値が上がるというメリットもあれば、体験によって誰かと場を共有することで、自分にとって特別な人とのつながりができることもあります。

体験したことのいくつかは、仕事にフィードバックすることもできるでしょう

「ドキドキするもの」にハマり込んでしまうのはなぜか?

悪習慣になりやすいものとしては、ギャンブルも挙げられます。「前日よく眠れなくて、遅刻した」という人の中には、ギャンブルが原因という人もいるかもしれません。

競馬や競輪などの公営ギャンブルはもちろん、パチンコや麻雀、オンラインゲームの課金ガチャなど。賭け事の誘惑は、至るところにゴロゴロと転がっています。

FX投資なども、ギャンブル性が高いと言えるでしょう。現在は、あらゆるギャンブルがオンライン上でもできるため、場所も時間も忘れてのめり込んでしまう人もいるようです。

でも、ある意味では、それも仕方ないのかもしれません。なぜなら人間は基本的にギャンブルのようなドキドキするものが好きだからです。

ギャンブルをすると、脳内の「報酬系(A10神経)」という神経群が活性化して、快感をもたらす物質であるドーパミンが分泌されます。このドーパミンには強烈な依存性があり、「またこの快感が欲しい!」という気持ちが抑えられなくなってしまうのです。

このドーパミンは、主に食欲や性欲など、本能に根差した行動を取るときに放出されますが、「楽しい!」「うれしい!」「できた!」など感情が高ぶるときにも放出されるように、人間は進化してきました。その結果、人間はドーパミンのもたらす快楽を求め、ドーパミンが出る前にとった行動を激しく求めます。そうやってモチベーションを作り上げているのです。

つまりドーパミンは、欲求が満たされたときだけではなく、その欲求が成就しそうだという「期待」の場面でも放出されるのです。期待するのをやめられなくなり、「次こそは!」という課金継続ループにハマり込んでいきます。

しかし、先ほども言ったように、ドーパミンの依存性は強く、ギャンブル好きな人が課金ループから抜け出すことは、そう簡単ではありません。

だとすれば、ギャンブル好きという性向はそのままに、賭ける対象を変えてしまいましょう。馬やパチンコ代に賭けるのではなく、「人生そのもの」に賭けるのです。

例えば移動するときに、「どのルートで移動すれば、最短で、しかも最安値で行けるか」を調べてから移動する。もし、あなたが選んだルートよりも早かったり安かったりするルートを後で見つけたら、あなたの負け。選択がベストだったとわかれば、あなたの勝ち。

あるいは、買い物をする際も、ネットや店舗を回って、欲しいものを希望額に近い値段で購入できたら勝ち、それよりだいぶ多く払うことになったら負け、など。

日常の中に、勝負事っていくらでも設定できますよね。

仕事でも同じです。勝率を上げるために、人とほんの少し違う作業をしてみる。新しい仕事を起ち上げてみる、まだ手を付けられていない地域に営業に行く。話したことのない同僚を誘って食事に行くのも、ギャンブルと言えるかもしれません。当たれば、有益な情報をもたらしてくれる人に出会えたり、心の許せる友人を得られるかもしれません。

「お金をかけないとテンションが上がらない」というあなたは、自己投資として高価な本を買うとか、習いごとを始めるとか、有料のセミナーなどに参加してみるのもよいでしょう。

そもそも、人生はギャンブルみたいなものです。

いい学校を出て一流企業に勤めるなど、本人としては堅実に歩んでいるつもりでも、社会情勢が変われば一転、明日はどんな目が出るかわかりません。わざわざよそに賭けなくても、人生はすでに十分にドラマチックです

 
PROFILE
菅原道仁

脳神経外科医。菅原脳神経外科クリニック院長、菅原クリニック 東京脳ドック理事長。杏林大学医学部卒業。クモ膜下出血や脳梗塞などの緊急脳疾患専門医として国立国際医療研究センターに勤務後、脳神経外科専門の北原国際病院に15年間勤務。その診療経験をもとに「人生の目標から考える医療」のスタイルを確立する。2015年に菅原脳神経外科クリニック(東京都八王子市)を、2019年に菅原クリニック東京脳ドック(港区赤坂)を開院。心や生き方までトータルにサポートする診療を日々続けている。『名医のTHE太鼓判!』(TBS系)等テレビ出演多数。脳のしくみについての独自のわかりやすい解説が支持されている。著書に『そのお金のムダづかい、やめられます』(文響社)等がある。