「頑張ってるのに成果が出ない…」は脳の“怠けグセ”が原因だった!

仕事への要求がますます厳しくなっている昨今、誰でも「仕事を効率化して、パフォーマンスを最大にしたい」と思うもの。でも、そのためにできることはやり尽くして、「これ以上は無理…」と感じている人も多いことでしょう。しかし、健康番組でも話題の脳神経外科医・菅原道仁先生は、「脳が眠らせてしまった能力を目覚めさせれば、より大きな成果をラクに出せる」と言います。一体、どういうことなのでしょうか。

脳の「すぐに怠ける」性質が、能力を封印している

あなたの脳には、まだ使われていないリソースが眠っています。ここで言うリソースとは、「私はAだから、Bはできない」と、あなたが無意識のうちに思い込み、いつの間にか決めつけてしまい、疑うこともなくなり、長い間ずっと使わずにいる「B」の部分のこと。例えば、次のような場合です。

「私は人見知り(A)だから、初対面の人といい感じで雑談(B)はできない」

「自分は優柔不断(A)だから、リーダーシップをとる(B)なんて無理」

「ハッキリものを言ってしまう性格(A)だから、繊細な言い方(B)はできない」

 では、そういう人たちは本当に「Bの能力」がないかというと、そんなことはありません。過去の経験から、なんとなく苦手意識を持った結果、脳が「Bの能力」はないと決めつけ無意識にブレーキをかけているのです。

「頑張っているのに、今ひとつ成果が上がらない」「行き詰まっている」という人は、こうした無意識の罠(わな)に陥り、既に持っている自分のリソースを使わずに放置している可能性があります。

私たちの脳は、38億年の進化の結果できあがった完璧な存在と思われがちですが、実は意外な落とし穴も含んでいるのです。

その代表的なものが、生物として生き残るために、とにかくタスク(作業)を少なくしようとする性質です。脳は、生命維持や適切な状況判断を行うべく、実に大量の情報を処理しています。

目の前につぎつぎに現れる状況をいちいち精査したり、熟考していたらタスクが際限なく増えてしまいます。だから一度学習したことは、パターン化して決めつけ、次回からのタスクを減らそうとするのです。

例えば、「文系の人は数字が苦手なはず」と思ったこと、ありませんか? これなどは、その典型例です。文系にも数字に強い人はいくらでもいますが、効率を優先するため、いちいちじっくり観察しないで「処理済」と早とちりしてしまう。

また、柴犬、パグ、プードル、シェパードなどは見た目がずいぶん違いますが、まとめて「犬」とカテゴライズすることで、複雑な世界をシンプルにして理解しやすくしている。

脳はそうやって情報処理の速度を上げている一方で、「すぐに怠けてしまう」とも言えるのです(もちろん、怠け者という意味ではなく、生き残るためにタスクを減らしているという意味においてですが)。

定型的な作業の場合は、これがものすごい効果を発揮しますが、今のような変化の激しい時代、多様性が問われる時代には、ともすると弊害がありますし、働く人にとっては、この「すぐに怠ける」という脳本来の性質が、能力の一部を封印してしまっているのです。

つまり、怠ける脳が眠らせてしまった、あなたのリソースを揺り動かし、目覚めさせることで、あなた自身の可能性は広がるのです。

「自分なんて」と思う人には、するどい分析力が備わっている

リソースは、あなたが自分の短所だと思っていることから見つけることができます。そのときに使うのが、「リフレーミング」というテクニック。リフレーミングとは、物事を見る枠組み(frame)を変えて、別の枠組みで見直す(re-frame)こと。簡単にいうと、「視点を変える」ことです。

例えば、あなたが「優柔不断」(A)を短所だと思っているとしましょう。

でも、この短所(A)を異なる視点で見ると、「優柔不断でいつも判断に迷うのは(A)、瞬時にたくさんの可能性が見えるから。つまり、先読みに長けている(C)」ということになります。

「自分なんて」が口癖の人は、「自分なんて、何をやったってどうせたいした結果は残せないんだから」と考えると、前進する気がなくなってしまいます。しかし、逆に言うと、ある程度「身の丈を知っている」ということ。自分の能力がどれほどのものか、他者の能力がどれほどすばらしいか、そこそこ正確に理解しているわけです。これは、するどい分析力や洞察力がすでに備わっているということでもあります。

他人と比べるのをやめて、どんなに小さくても自分だけの成功体験を積み上げられるようになると、人生の可能性はこれまで以上に大きく開けるはずです。

あるいは、「ちょっとした仕事の失敗をズルズルと引きずってしまい、立ち直れない」「一度注意されて落ち込むと、なかなか気持ちを切り替えられない」という人。いわゆる「打たれ弱い人」は少なくないようですが、打たれ弱いということは、「自分への期待度が高い」ということでもあります。

もともと目標設定を高くとれる人ですから、折れない心さえ手にできれば、自らの向上心に従って、どんどん伸びていくことができます。

また、「ちゃんと仕事をしているのに、頑張っているところを見てくれている人が誰もいない」「自分は正当に評価されていないから」と感じている人。やるべきことをきちんとこなしている人の場合、ミスをしないという点では目立たないため、上司から声かけされずにさみしい思いをすることがあります。

しかし、やるべきことを責任をもって着実にこなす人は、責任感の強い立派な人です。また、成果をコツコツと地道に積み上げられる人でもあります。これは、社会人として成功し続けるために不可欠で大切な能力です。

こんなふうに、短所をリフレーミングすることで、「短所の陰に潜んでいた長所」を見つけられるようになるわけです

外だけに希望を求めるのは、自分をないがしろにするのと同じ

実際にリソースを使いこなせるようになると、今までできなかったことができるようになるため、仕事をこなすのがグッとラクになります。あるいは、人づきあいや新たなチャレンジなど、あなたが苦手としていることが、やっぱりグッとラクにできるようになります。

自転車で例えるなら、何かの影響でブレーキのゴムが車輪に接触したまま走っていた状態から、ゴムがパッと離れる感じでしょうか。

こうなると、これまでと同じ力でペダルを踏んでいても、スピードはグンと上がります。同じ労力でも、より速く、遠くまで行けるようになります。

仕事をしている私たち大人には、これまでの経験から、苦手意識が災いして、脳が眠らせてしまった能力がたくさんあります。

そんな能力の存在を自覚して、必要に応じて選び出し、使いこなすことができたら、できることはまだまだ、どんどん増えていくはずです。

人は、限界の壁にぶち当たったとき、自分の外に解決法を見出そうとします。さまざまなビジネススキルを身につけるのも、そうした行為の一環です。

ただ、わざわざ外に「探しに」行かなくても、可能性はまだまだ自分の中に眠っています。それを忘れて外側だけに希望を求めることは、自分の能力を過小評価して、大切な自分をないがしろにするのと同じことではないでしょうか。

必要なのは、再び「自分の内側」を覗いてみること。もう十分な大人でも、まだまだ可能性はあるのです。自分さえ、大切な自分自身をないがしろにしなければ、まだ眠っているすばらしい能力を見出して、人生を豊かにするために使うことができると、私は信じています。

 
PROFILE
菅原道仁

脳神経外科医。菅原脳神経外科クリニック院長、菅原クリニック 東京脳ドック理事長。杏林大学医学部卒業。クモ膜下出血や脳梗塞などの緊急脳疾患専門医として国立国際医療研究センターに勤務後、脳神経外科専門の北原国際病院に15年間勤務。その診療経験をもとに「人生の目標から考える医療」のスタイルを確立する。2015年に菅原脳神経外科クリニック(東京都八王子市)を、2019年に菅原クリニック東京脳ドック(港区赤坂)を開院。心や生き方までトータルにサポートする診療を日々続けている。『名医のTHE太鼓判!』(TBS系)等テレビ出演多数。脳のしくみについての独自のわかりやすい解説が支持されている。著書に『そのお金のムダづかい、やめられます』(文響社)等がある。