要警戒! 毎日晩酌する人は立派なアルコール依存症の予備軍です

お酒を飲む人

外でお酒を飲む機会は減っていますが、「かえって家でたくさん飲んでしまう…」という方が多くいるようです。「自分は大丈夫」と思っていても、いつの間にか耐性ができて“アルコール依存症”になってしまうケースは多いもの。アルコール依存症の専門医として多数の患者を回復させてきた垣渕洋一先生が、セルフチェックの方法を教えてくれました。

依存症の“ハイリスク者”は普通の会社員のなかにいる

お酒の飲み方や考え方は十人十色です。イベントのときだけ飲む人、習慣的に飲んでいても問題ない人、依存症の予備軍、すでにグレーゾーンを超えて飲酒問題が続発している人、逆にあえてシラフを選ぶ人……。普段のお酒の飲み方は、人によって異なります。

(1)イベントがあるときだけ飲酒する「機会飲酒」

(2)イベントがなくても定期的に飲酒する「習慣飲酒」

(3)夕食の際に飲むことが習慣になっている「晩酌」

(1)の場合、イベントの頻度が低ければ問題が起きるリスクはそれほどありません。(2)は、専門的には「常用量依存」と言います。量が増えていないうちは目立った害はないとはいえ、「飲まないとなんとなくさびしい、つまらない、物足りない」と感じるのは「依存性」という慢性的な副作用が進んでいるお知らせです。

ちなみに、(3)は習慣飲酒のタイプの一つでもっとも多いパターンです。「まさか」と思われるかもしれませんが、厳しく言えば(2)と(3)はアルコール依存症の予備軍に位置づけられます。

「わかっちゃいるけど、やめられない」というのは、すでに依存性という副作用が進行している状態。「いつも飲んでるから」となんとなく飲み続けていると、年月を重ねるほど引き返すのが難しくなるのです。

月曜日の「ポカ休」には要注意

もしかして自分にもアルコール依存症になる危険がある?……。飲酒の習慣がある人なら、自分のリスクレベルがさっそく気になるところでしょう。そこで、身近によくある事例として、グレーゾーンからもっと危険なレベルに足を踏み入れつつある、ビジネスパーソンA氏の週末の生活をご紹介しましょう。

A氏は会社の経理部に所属する30代の会社員ですが、ここ数年のうちにだんだんと酒量が増え、月曜から金曜は晩酌するのが習慣になっています。

「このごろ、飲みすぎだな」と自覚しているもののうまくコントロールできず、飲む量や時間が長くなってきています。ただし、毎日きちんと定刻に出勤し仕事をこなしています。

金曜日の午後になるとがぜん落ち着かなくなり、お酒のことが頭から離れません。そして、待ちに待ったアフターファイブ。一人暮らしのA氏は、帰宅途中にコンビニに寄ってお酒とつまみになる総菜を買い、帰宅するとさっそく飲みながらゲームをしたり、テレビを見たりするのがいつもの週末のすごし方です。

金曜の夜から日曜日の昼まで、飲んでは寝て、起きてはまた飲むの繰り返し。日曜の午後以降、翌日の出勤に備えて飲まなければ月曜からは問題なく働けます。飲みすぎを心配されても、「ちゃんと会社に行ってるから大丈夫」が常套句でした。

ところが……半年ほどたったころから、A氏の週末にちょっとした変化が。日曜の午後も我慢できず飲んでしまうようになり、翌朝が二日酔いで辛くなってきたのです。そしてあるとき、ついに初めての「ポカ休」。出勤当日になって、急に「ちょっと体調不良で」と上司に休むことを伝えました。

そこから、飲酒欲求はさらにエスカレートしていきます。平日の日中もお酒を飲みたくなるので、通勤途中にコンビニに寄ってストロング系飲料などを2缶以上買い、まずはその場で1缶飲みます。もう1缶は通勤用のバッグに忍ばせて、昼休みに隠れてこっそり……。

こうなるともう止まりません。今度はそこから帰宅までが我慢できず、最寄り駅前のコンビニで立ち飲みし、帰宅してまた飲むという状態に。ここまでくると、周囲の人も「あれ……Aさんが変だ」と気づき始めます。

これこそ、働きながら依存症になっていく人の典型的なパターンです。「自分の(あるいは身近な人の)今の状態と似ている」と思った方、要注意です。

飲み過ぎな人

依存症が疑われる危険なサイン

日本のアルコール依存症「予備軍」は、推計で900万人います。この「ポカ休」以外にも、そうしたハイリスク者に共通して表れる“サイン”を紹介しておきましょう。該当項目が多いほど、予備軍から依存症への移行が疑わしくなります。

医者から飲酒について注意を受けても、なかなか減らせない

検診で肝機能の指標とされる「γガンマ-GTP」の数値や血糖値が高い、あるいは糖尿病などの臓器障害があり、医者から「お酒を減らしたほうがいい」と言われても、同じくらいの量の飲酒が続いている。こうなると、臨床では依存症予備軍と位置づけます。

お酒を飲むときだけ楽しくなれる(お茶とケーキでは楽しめない)

アルコール以外の飲食の場でも楽しくコミュニケーションできるかどうかも、リスクを読み解く重要なポイントです。アルコールの有無にかかわらず楽しめるなら問題ありませんが、ハイリスク者ほどアルコール抜きだと不足感があり、楽しめなくなります。

飲みたくなる時間が変わる

以前は晩酌だけだったのが、飲酒欲求が表れる時間が変わってきたら要注意。とりわけ「朝から飲みだす」のはもっとも危険な兆候です。定年退職後に日中から飲み出したり、晩酌を待てずに夕食前に飲みだしたりするのも注意すべき変化です。

休日はお酒を飲む以外にすることがない

休日のすごし方も、危険を見極めるポイントです。もし、休日はお酒を飲むことが主で、他の活動をほとんどしない、やる気が起きないなら要注意。心理的な視野狭きょう窄さくが起こり、すでにアルコールの害が進行した不健康な状態になっています。

夕食の支度をしながらの「昼飲み」が習慣になっている

台所で料理をしながら頻繁にお酒を飲むのも、危険ゾーンに入ったサインです。アルコール依存症になった主婦の人を「キッチンドリンカー」と言いますが、そこまで進行していないとしても、昼間から飲酒欲求が強く表れて3時ごろから飲み始めたり、酔った状態で料理をつくるようになったりしたら依存症に近づいています。

実際、依存症になった女性に話を聞くと、最初の異変が「料理をしながらの飲酒だった」との証言が少なくありません。また、味つけが以前と変わったり、食卓を囲んだとき、お母さんだけがトロンとした目をしていたりして、家族が異変に気づくこともあります。夫の帰宅を待って、一緒にワインを1杯程度飲めば満足なのか、帰宅を待てずに飲んでしまうのかが分かれ目です。

飲みすぎを注意されても「否認」に徹する

料理をつくりながらの飲酒もそうですが、家族や周囲の人から「ちょっと飲みすぎじゃない?」と指摘されて、「大丈夫、私は問題ないから」などと否認したら、これも危険を表すサイン。飲みすぎを認めないと健康管理をしないので、体調も家族関係も悪化の一途をたどりかねません。

もともとの性格が頑固で人の話を聞かない人ほど否認傾向が見られ、本物の依存症に移行しやすいのです。逆に、注意されたとき「たしかにちょっと飲みすぎだった」と認められる人は、依存症にはなりづらいタイプです。

飲酒をやめたくてもやめられない自分に「罪悪感」を覚える

「もっと量を減らさなくちゃ……でも無理だ」「やめたくてもやめられない」という心境で飲んでいるなら、すでにアルコールの副作用で自分をコントロールできない状態です。

言っていること(思ったこと)とやっていることが異なる「言行不一致」の状態を続けることは精神的な苦痛を伴うため、それがお酒に逃げる原因になり、酒量が増えやすくなります。

飲む理由を自分以外に向ける「責任転嫁グセ」がある

アルコールへの依存がある程度進むと、ほとんどの人は、飲む理由を自分以外に向けます。「仕事のつき合いで飲まないわけにはいかないんだ」「人間関係のストレスで、飲まずにいられない」などが一般的です。

このような「責任転嫁グセ」がついたら要注意。その場合、相手を恨んでしまい家族関係、人間関係も悪化しやすくなります。

 


こうしたリスクはありますが、注意をしていればお酒を飲み続けたとしても楽しさと健康維持を両立することができます。お酒はすべてダメというわけではなく、効用と副作用のバランスを見ながらうまくとっていくことが大事なのです。

 

seishun.jp

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PROFILE
垣渕洋一

東京アルコール医療総合センター・センター長。成増厚生病院副院長。医学博士。筑波大学大学院修了後、2003年より成増厚生病院附属の東京アルコール医療総合センターにて精神科医として勤務。アルコール依存症の回復には行動変容が重要だという信念のもと、最新の知見を応用した治療を行い多くの回復者を送り出している。臨床のかたわら、学会や執筆、地域精神保健、産業精神保健でも活躍中。

「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本