「決められない人」を苦しめる5大要素とは
「優柔不断と言われるし、自分でもそう思う」「誰かが決めてくれたほうが楽だと思う」。もし仮に、あなたがそういうタイプであるならば、何があなたの決断を妨げているのでしょうか。
多くの方にとって、決断を妨げる要因は、大別すると次の5つに分類できます。
1.過去に対する執着
2.未来に対する不安
3.現在に対する無知
4.他人に対する恐怖
5.自分に対する不信
一つひとつ見ていきましょう。
1.過去に対する執着
私たちは、過ぎ去ったことに引きずられてしまいます。
「あのときは、うまくいかなかった」「失敗して、痛い目にあった」「昔から苦手だった」「やってみたいけれど、過去に一度もやったことがないのでできない」
いちいちごもっともで、そのコメントには真実や事実も含まれているのでしょう。しかし、これからの行動を妨げる根拠にはなりません。
かつてうまくいかなかったとしても、次もうまくいかないとは限りません。これからも失敗するとは限りませんし、かつての苦手が、これからの得意になる可能性も否定できないのです。
やってみたことのないことほど、やってみなければわかりません。
2.未来に対する不安
これから何が起こるか、すべて予知できる人などいるのでしょうか。いらっしゃるならば、ぜひご紹介いただきたいと思います。未来のことは、わからないからこそ面白いのです。同時に、未確定のことだからこそ「不安」も感じます。
「不安」とは「期待感」や「ワクワク感」と表裏一体なのです。
同じく未確定の事象に対して「ワクワク」してもかまわないのに、「不安」に注目してしまうと決断できなくなってしまいます。
3.現在に対する無知
決断するためには、「今を知る」ことが重要です。
三国志の時代、
現在起きていること、環境やほかの人の動きを理解していないと、決断はできません。そのことに無自覚な人であっても、いざ決めなければいけない立場になってあたりを見回すと、
「現場のことも、今どうなっているかも全然わかっていない!」と愕然として、パニックに陥ります。これは、むしろ当たり前です。現状を何も把握していなくて、決断できるとしたら、それは無謀というものです。
4.他人に対する恐怖
「すべての悩みは、対人関係の悩みである」と心理学者のアルフレッド・アドラーは言いました。他人に対する様々な思いが、決断を鈍らせることがあります。
他人に対する思いの中でも特に多いのが、以下の5つの恐怖です。
- 他人に嫌われる恐怖
- 他人に笑われる恐怖
- 他人に非難される恐怖
- 他人に白い目で見られる恐怖
- 他人に陰口をたたかれる恐怖
特に日本人は、村社会で生きている感覚が強いので、他人からの批判を恐れる傾向が強いものです。気にし始めると、自分の意見を殺したり、思考がフリーズしたり、決断できなくなったりします。
シリーズで累計200万部(世界累計600万部超)にもなったベストセラー『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著/ダイヤモンド社刊)には、個人を大切にするためにも「嫌われる勇気」を持つことの重要性が説かれています。
一人ひとり違っていていいのです。他人が嫌う自由もあれば、自分が自由に決断し行動する自由もあるのです。
笑う自由もあれば、笑われることもあるでしょう。非難されることもあるでしょう。価値観が違えば白い目で見られたり、行動が裏目に出て陰口をたたかれたりすることもあるでしょう。
でも、誰が何を感じ、何を思うかは自由です。それはあなたも同じ。人の目を気にしすぎる必要はないのです。
5.自分に対する不信
信頼できる人の言うことは、聞く気になります。そして命令を受けたら、やろうかなという気になります。やろうと決めたら実行するでしょう。
一方、自分が行動しようと決めるというのは、自分が自分に命令するのと同じことです。命令する人と実行する人が、ともに自分であるという状態です。
もしも、実行する自分が、命令する自分を信頼できなかったらどうなるでしょうか。
信頼できない自分の決断など、まともに受け止めるはずがありません。
自分を信頼できない人、自信のない人が、なかなか決められないのは当然です。自信がないのに決めろと言われている状況そのものが、とても苦しいはずです。
まずは自分自身に対して、ウソをつかずに言ったことを実行することです。自分自身が信頼できる人になることから始めましょう。
自分の気持ちに蓋をしたままだと、物事を自分で決められない
また、「自分で決めたいけれど、自分の気持ちがわからない」という場合もあります。
いつもまじめに仕事をしてきて、上司や仲間の意見を聞いてきた方の中には、「自分の意見を言え!」とか「お前はどう思うんだ?」と問い詰められて、何とも答えられず悔しい思いをしたことがある方もいらっしゃるでしょう。
昔から「
古代ギリシアでも、デルフォイの神殿に「
本当は自分の気持ちに注意を向けなければならないのに、自分の気持ちに蓋をしているのです。多くの人が、そのことに気づいていません。
では蓋を開けてみましょう。
まずはノートを用意してください。自分の意見がわからないときには、微細な自分の気持ちを書き出していき、それを見ながら自分の意見をまとめるということをしてみてください。
たとえば、上司から「この企画どう思う?」と聞かれたときに、「あ、よくわからない」と思ってしまったとします。これまでだったら「いいですね」とか、周りの反応を見ながら適当に答えていたかもしれません。その流れを断ち切りましょう。
一呼吸おいて「もっとよく聞かせてください」と企画内容を尋ねてください。資料があったらよく読み込んでみましょう。資料を読みながら、メモを取るのです。資料がなかったら話を聞きながらメモを取ってみてください。
わかったこともわからないことも、どんどんメモに書き出していきましょう。
「難しそうだ」「つまらない」「やってみたい」「若い人に受けそうだ」
何でもかまいませんので、感じたことを書き出します。そうすることで、自分の気持ちを確認できます。
この作業をしてから、自分の意見をまとめてみるのです。
器用に何でも自分の意見を言える人もいますが、真似ることはありません。自分の気持ちや本音がわからなければ、意識的に言葉にしていき、ノートなどに書いて、「見える化」しましょう。
その言葉を見ながら考えをまとめてみればいいのです。それを続けていけば、自分の気持ちを少しずつ言葉にできるようになります。
「自分には意見がない」「わからない」「難しい」と、気持ちに蓋をしている状態では、物事を自分で決めることができません。蓋を外すために、自分の気持ちを書き出して、意見をまとめるようにしていきましょう。
イラスト せとゆきこ
株式会社Gonmatus代表取締役。夢実現応援家®。「人には無限の可能性がある」をモットーに、作家・シンガーソングライターから経営者・起業家・ビジネスパーソン、学生・親子まで幅広い層を対象に、対面セッションや研修、ワークショップ等を提供している。各種心理技法や武術、瞑想法、労働組合活動、文芸・美術・音楽創作等の経験を統合し、「気分と視座の転換」を重視した独自の「夢実現応援対話技法®」を確立。ユーモアを交えながら熱く語るスタイルが親しみやすくわかりやすいとの定評を得ている。初の著書でベストセラーとなった『結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる』は文庫版もベストセラーに。ほか、精力的に執筆を続けている。