第一志望は不合格…それでも中学受験を人生の糧にできる家庭の心得

なぐさめる親

いよいよ中学受験本番。でも、実は希望通り第一志望に合格できる子は全体のわずか約3分の1。多くの子がそれ以外の学校に通うことになります。そんなとき、親の考え方や声がけ一つで、中学受験やその後の人生そのものを有意義にできるのです。これまで受験を通じて親子の絆を強くするコミュニケーション術をアドバイスしてきた西村則康先生に、いざというときの親の心得についてうかがいました。

併願校も含めた“いい学校選び”が重要

どんなにがんばっても合否が出てしまうのが受験です。希望通り第一志望に合格できればこれほどハッピーエンドな受験はありませんが、そうならない家庭もあるでしょう。

いや、実のところ、中学受験で第一志望の学校に合格する子は全体のわずか約3分の1。それ以外の多くの子が第二志望、第三志望、第四志望の学校に通うことになるのです。

併願校は第一志望校の偏差値を基準にしたとき、偏差値15の幅を持たせることが理想。第一志望校を偏差値65の学校にするなら、第二志望校の偏差値は60、〝おさえ校〟は偏差値50までにするということです。

受験当日にたまたま実力が発揮できず、本来持っている実力の偏差値よりも10も下の学校に通うこともあります。それはお子さんにとっても、親御さんにとっても不本意な結果かもしれません。

しかし偏差値こそ低くても、お子さんに合った学校選びをきちんとしていれば、ガッカリすることはありません。その学校は、たくさんの学校の中からお子さんと一緒に訪れ、気に入って選んだ学校だからです。どんな学校に通うことになっても、「いい学校に通えてよかったね」と言ってあげてください。

偏差値50の私立中でも上位にいれば早慶が狙える

中学受験をする理由として、「私立中高一貫校に通う方が、大学受験に有利」と考える家庭が多いですが、それは「難関中学に合格すれば、難関大学に行ける」というシナリオを思い浮かべているからかもしれません。

しかし、難関中学に合格すれば誰もが難関大学に進学できるわけではないことくらい、少し冷静になってみればわかるはずです。例えば開成中学の入学者は300人ですが、当然、入学後はそのなかでまた1位から300位まで順位がつきます。

開成に合格できるくらいですから、その地域では相当優秀な子で、小学校はもちろん塾でも常にトップクラスにいた子たちです。それにもかかわらず、なかには授業にまったくついていけず、途中で学校を辞めてしまう子もいます。

難関校でそういう厳しい現実がある一方、中堅以下の学校では、私学ならではの面倒見のよさが魅力です。昨今は少子化で、多くの私立中高一貫校では生徒募集に苦戦しています。御三家のような難関校であれば受験倍率約3倍と激しい競い合いになりますが、生徒募集をしても定員に満たない学校もたくさんあるのです。

そういう学校は、生徒数を増やすために、さまざまな対策を行っています。その一つが「面倒見のよさ」です。

面倒見のよさをウリにしている学校では、朝・放課後・夏休みなどの長期休みの講習や補講が充実しており、「この学校に通っていれば『予備校いらず』ですよ」とばかりに、非常に熱心に勉強を見てくれます。

なぜかといえば、中堅校は在校生から一人でも多くの難関大学合格者を輩出することで、生き残りを図っているのです。中堅校で東大合格者が一人でも出れば、翌年の中学受験では必ず応募者数が増えます。そのくらい、学校にとって進学実績は大事なのです。

成績上位の子は難関大学への可能性を期待され、手厚く面倒を見てくれます。そのため、偏差値50レベルの学校でも、成績上位3分の1にいれば早慶クラスの大学へ行ける可能性は十分にあるのです。中学受験をする目的の一つが難関大学へ進学することであれば、そこから難関大学に合格することは逆転合格だと言えるでしょう。中学受験の結果がすべてではないのです。

しかし、中学受験が人生のゴールではないように、難関大学へ合格することもまたゴールではありません。中学受験で培った学びの姿勢は、中学生になってから「本質を学ぶ勉強」へ切り替えていくことで、子どもにとって一生モノの財産になっていきます。

本質的な勉強とは知識自体を疑ってかかること

では、本質的な学びとはどんなものでしょうか。私は次の3つであると考えます。

①物事を論理的に考えること。また、その際に、明らかに正しいこと(過去の自分の経験や学習によって得た知識を元にした、疑いようなく正しいと信じていること。また、それが今の知見と違わないこと)の積み重ねで理解しようとする姿勢。

②自分の思考過程を他人に正確に伝えようとする姿勢。

③上記の二つの学習過程において、納得できたときの快感を欲する気持ち。

これだけではよくわからないかもしれませんが、例えばこういうことです。 二等辺三角形は3本の辺のうち2本の辺の長さが等しい三角形というのが特徴です。小学生の勉強であれば、「なぜ二つの底角が等しいのか?」の問いに対し、「だって正しいんだもの」(身体的理解)でも十分でしょう。

でも、中学生からは二つの三角形の合同を証明し、疑いなく正しいことを理解する必要があります。その証明を考えながら、「ちょっと待てよ? 本当にそうなのか?」と疑って確認することを何度もくり返し、最終的に「よし、これで大丈夫。間違いない」という納得感を得る。これが本質的な学びです。

実は、この「ちょっと待てよ、本当か?」の気持ちを持ち続けることは、社会人になってからも非常に大切です。

中学受験の勉強では、そこに何か疑問があったとしても、「AはB」と習ったらそれをそのまま覚えました。その知識自体を問われるのが入試だからです。しかし、それだけやっていると勉強に面白みを感じないばかりか、自分で考える(疑う)習慣が身につかなくなります。

勉強とは本来、とても面白いものです。自分が疑っていたことが本当だったとわかったときの喜び、わからないことがわかったときの快感。その経験があれば、人は生涯学び続けます。人は学ぶことで世界を広げ、自分を成長させることができるからです。

中学生になって「本質的な学び」の姿勢を身につけられる、よりよい環境に身を置くために中学受験を選択した。これが中学受験本来のあり方だと私は思っています。

中学受験は人生の模擬練習

しかし、なかには中学受験の結果をいつまでも引きずり、変われない子がいます。よくあるのが、難関校の滑り止めの学校で、「俺は開成を受けたんだ」「俺は麻布。塾では確実って言われてたのに」など、落ちた学校自慢をするケース。

「自分は、本当はできるんだ」と思い込み、過去の栄光にすがりつくだけで努力をしないため、成績が伸びません。

一方、その学校が第一志望校で受験した子は、自分がギリギリで合格したことを自覚しているため入学後も努力を怠りません。1学期の中間テストまでは両者に学力の差はありませんが、中学1年生の夏休みが終わるころから差が開き始めます。

中学から伸びていくのは、中学受験をゴールとは思わず、より難しいことを勉強するために入ってきたと考えられる子です。ですから、たとえ中学受験で希望の学校に入れなくても、勉強に関して常に前向きな気持ちを持ち続けることが大事です。

私は常々、中学受験に挑戦するのは人生の模擬練習をすることだと思っています。成功をするためには何をすればいいか、どんな努力が必要か。中学受験は、成功するためのやり方を学ぶよい機会になります。

ここで言う「成功」は「合格」だけではありません。中学受験の目標は、志望校に合格することかもしれませんが、そこまでの努力もまた大事だからです。

一方、子育てのゴールは子どもを自立させること。子どもが自分の足で歩いていくためには、「目標に向けて努力を継続する人」に育てることが大切です。それが親の本来の願いであるはずです。

第一志望校に合格できなかったことは、とてもショックだったかもしれません。でも、夢が叶わず挫折を味わうことは決して無駄な経験ではなく、むしろこれからの長い人生におけるよい教訓になります。

中学受験の失敗を「失敗」だと思うか、「人生の模擬練習」だと思うか。子どもを伸ばすのは、中学受験を終えたあとも、わが子のがんばりを応援し続ける親。子どもの成長を長い目で見ることができる親です。

 

seishun.jp

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PROFILE
西村則康

30年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から、「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイス。これまで開成中、麻布中、武蔵中、桜蔭中、女子学院中、雙葉中、灘中、洛南高附属中、東大寺学園中などの最難関校に2500人以上を合格させてきた実績を持つ。テレビや教育雑誌、新聞でも積極的に情報発信を行っており、保護者の悩みに誠実に回答する姿勢から熱い支持を集めている。また、中学受験情報サイト『かしこい塾の使い方』は16万人のお母さんが参考にしている。

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