心が沈んだとき最も大事なこととは? 「自分を救う」考え方&ワーク

新しい感染症が世界的に蔓延したことで、私たちの日常は一変しました。働き方や暮らしが変わり、様々な不安が積み重なって、「無力感」にさいなまれているという人も少なくないようです。そうした状態から脱却するための考え方や、そういう時にこそやっておきたいことについて、ベストセラー作家の植西聰先生に教えていただきました。

衝撃を小さくするために設定しておきたい「人生の前提」

人生には、予想もしないようなトラブルや不運な出来事が起きることがあります。

「今の仕事をずっと続けたいと思っていたのに、会社が倒産してしまった」
「恋人と結婚するつもりだったのに、相手に結婚願望がないことがわかった」
「交通事故で入院して、貯めたお金をすべて使い果たしてしまった」

このような「思い通りにならない現実」に直面したとき、心が折れそうになります。

「一生懸命生きていても、自分は幸せになれないのかな」
「周りの人は幸せそうなのに、なんで自分ばっかり不幸になるんだろう」

そんなふうに深く落ち込む人や、うまくいかない原因を作った相手を憎む人もいます。また、「早めに転職しておくべきだった」「恋人と将来について真剣に話し合っておくべきだった」というふうに、過去の行動を悔やむ人もいるでしょう。

しかし、人生とは本来、理不尽なものなのです。思い通りにならないのは、自分のせいでもないし、他の誰かのせいでもありません。

フランス人は、うまくいかないことがあると、「セ・ラ・ヴィ」と言います。

直訳すると、「それが人生さ」という意味です。うまくいかないことを特別に不運なこととは捉えず、長い人生には上り坂もあれば下り坂もあって当たり前、と考えているのです。

そして実際に、人生は四季のように、移り変わるものなのです。

幸運が続く人生を誰だって望みます。

しかし、「人生には思い通りにならないこともある」とあらかじめ理解しておくことも大切です。そうすることで、何かあったときに、「こんなこともある」と柔らかく受け止めることができるからです。

思い通りにならないとき、「どうしてこんなことに」と絶望してしまう人と、「こんなこともある」と柔らかく受け止められる人とでは、心の状態が大きく変わってきます

そして、心に希望があれば、またいいことがやってくるのです

「状況がよくなったら、やりたいこと」を考えておこう

「体調が悪くて寝込んでいる。家族や友達にも会えないから寂しい」「会社から休養するよう命じられた。最初は休めてうれしかったけど、仕事に復帰させてもらえるか不安になってきた」

このように、日常の活動が制限されてしまうと、心の中にはマイナスのエネルギーが増えていきます。

いつもなら問題なくできていたことが、いきなりできなくなったり、「なるべくやらないでください」と命令されたりしたら、誰でもショックです。

しかも、この悪い状況がいつまで続くかわからないとなると、落ち込んだり、イライラしたりして、心が折れそうになるかもしれません。また、気持ちが落ち込んでいると、「前のように戻るはずがない」などと悲観的に考えてしまいがちです

しかし、「いつまでこの状況が続くんだろう」「早く普通の生活に戻りたい」と不満を募らせても状況は変わらず、ますます毎日がつまらなくなるばかりです。

こんなときは、少し先の未来のことをイメージしてみることをおすすめします。

「今の状況がよくなったら、何をしようかな?」と自分に問いかけてみるのです。

「旅行に出かけたい。温泉に入って、美味しいものを食べて、現地を観光したい」
「一人では寂しいと気づいたから、結婚するための活動を始めたい」
「テニスをしたり、ダンスをしたり、水泳をしたりして、思いっきり体を動かしたい」
「美術館に出かけて、いろいろな作品をじっくり鑑賞したい」

小さな楽しみから大きな夢まで、自由に考えてみてほしいと思います。休んでいるときは普段よりも時間がある分、深く考えることができて、意外な自分の本心に気づくこともあるかもしれません。

北欧のことわざに「今日は北風、明日は南風」というものがあります。天気によって風向きが変わるように、今の状況が突然変わることもありえます。「いい風向き」になると信じて、前向きに日常を過ごすことが大切です

「マイナス要因」を紙に書いて捨てる

心の中にマイナスの感情がわきあがってきたときに、その気持ちを消すために効果的な方法があります。

やり方は簡単です。マイナスの感情が生まれる要因を紙に書き出して、燃やしてしまうのです。

例えば、取引先の担当者に厳しい言葉を投げられたことで、仕事に対する自信が崩れてしまいそうになったときは、次のようにするといいでしょう。

「人の言葉に振り回される弱い自分」
「どうしようもないことをクヨクヨ気にする自分」
「取引先の○○さんを憎らしく思う器の小さい自分」

そのような言葉を紙に書いて、読み上げたら、火をつけて燃やしてしまうのです。

紙が燃え尽きたら、

弱い自分は、燃えてしまった。さあ、もう大丈夫だ

と口に出して言ってみると、心にプラスのエネルギーがわいてくるのを感じることができるはずです。

このやり方を試してみた女性が、こんなことを言っていました。

「私の場合、時間にルーズな自分がイヤでした。それで、紙に『約束を守れない自分』と書いて燃やしました。燃えていく紙を見ているうち、自分が生まれ変わっていくような気がしました」

彼女はその日以来、約束の時間に遅れることがなくなったようです。ウソのようですが、本当の話です。

シンプルな方法なので、拍子抜けする人もいるかもしれませんが、やってみると、効き目は意外と早く訪れます。火が嫌いな人は、紙を破いて捨てるという方法でもかまいません。自分を変えたいと思っている人には、ぴったりのやり方です。

一番大事なのは「自分を責めない」こと

心が折れやすい人は、そうでない人よりも「無力感」にさいなまれることが多いようです。無力感というのは、簡単にいうと、「自分は何もできない」「自分には力がない」というふうに、気力が保てなくなってしまうような心の状態のことを言います。

例えば、ある日突然、会社の上司から「業績が悪化したので、来月の給与は半分カットすることになった」と告げられたとしましょう。最初は「そんなこと急に言われても、困る」と怒りの感情が湧いてくるかもしれません。

しかし、しばらくすると、「来月からどうやって生活していこうか」「家賃の支払いはできるだろうか」と、今後が心配になって絶望的な気持ちになるでしょう。そして、「こんな状況になっても、自分は何もできない」と無力感にさいなまれるのです。

人間関係においても、無力感にさいなまれる場面があります。

例えば、長年の友人が家族とのトラブルで大変な状況に追い込まれていると知りました。「自分も何かサポートをしたい」と思っても、実際のところは何の役にも立てないことがわかって、「大事な人が困っているのに」と無力感に襲われてしまうのです。

心の中が無力感でいっぱいになると、日々の生活に活力がなくなります。悪化すると、気持ちがずっと沈んだまま体が動かなくなって、本当に病気になってしまうこともあるので注意が必要です。

無力感にさいなまれたときは、自分を責めないことが、とても大切です。そして、どんな小さなことでもいいので、その日、自分ができたことを数えてみるといいでしょう。

「今日も朝起きて会社に行った」
「一日分の家事を終えることができた」
「友だちが幸せになることを願った」

そして、「つらいけど、何とか頑張れたね」「人を助けようとしたのは立派なこと」というふうに、自分を励ましてあげることを心がけてほしいと思います。

 

PROFILE
植西 聰

東京都出身。学習院大学卒業後、資生堂に勤務。独立後、「心理学」「東洋思想」「ニューソート哲学」などに基づいた人生論の研究に従事。1986年(昭和61年)、20年間の研究成果を体系化した『成心学』理論を確立し、人々に喜びと安らぎを与える著述活動を開始。著書に『自己肯定感を育てる たった1つの習慣』(青春新書プレイブックス)、『不安を消すコツ』(自由国民社)などがある。