2つのお願いを同時にすると断られない!? 心理を突いた交渉術4選

同じ内容のことを伝えるにしても、ちょっとした言い方の違いでうまくいったり、反対に、相手との関係がこじれてしまったりするものです。たとえば、何かお願いをしたいときや断りたいときは、どんなコツがあるのでしょうか。相手の心理をつかんでスムーズに交渉できる裏技を4つご紹介します。

「指示+指示法」を使って、2つの依頼を聞き入れてもらおう

一度でも上の立場になったことがある人は、人を動かすことがいかにむずかしいことか身に沁みているのではないでしょうか。

自分はまだペーペーだからそんな立場にはないという人でも、思い返せば学生時代の委員長や班長、部活のキャプテンなどで似たような経験をしているかもしれません。極端な話、飲み会の幹事も同じといえば同じです。

「〇〇してください」というたったひとつの指示で、全員を一発で動かせるかというと、そんなことはまずありません。

個性的でまとまらないメンバーをまとめ、何度も同じ指示を出して、そのレスポンスを待つ。じつにストレスのたまる役割です。

もしもいま、リーダーの立場にある人や、これから可能性のある人に覚えておいてほしいのは、指示はひとつではなく、2つ同時に繰り出すと断りにくくなるということです。

たとえば、いつも忙しそうにしている営業職の人に「経費の精算は早めによろしく」と言ってもなかなか動いてはくれません。

ですが、「A社にアポをとったら、そのあと経費の精算をしてくれないか」と合わせ技で指示をするのです。

経費の精算はどうしても後回しにされがちな作業ですが、A社へのアポは後回しにはできない類のものです。

それをつけ加えることで、どちらもすぐにやらなくてはいけないという思考にスッと切り替わるのです。

本命にプラスする指示は、「食事をとったら」とか「着替えをすませたら」など、仕事以外のものでもかまいません。

ただし、「プレゼンの資料を作ったら」のように、同等かそれ以上の負荷のかかる指示を一緒に出しても即効性は発揮されないのでご注意を。

「10%の自由」が相手のやる気に火をつける

また、面倒な頼みごとをするときに気をつけたいのが、がんじがらめの指示を出さないようにすることです。

ただでさえみんながやりたがらない面倒くさい仕事なのに、さらに箸の上げ下げまで指示されるような窮屈な内容だと、誰も喜んで請け負ってはくれないでしょう。

言葉遣いから対応のしかたまで完全にマニュアル化された仕事が退屈なように、1から10まで上が決めたとおりにやらなければならないのはある意味ラクな反面、ちっともおもしろくありません。

それよりも、自分で創意工夫できる部分があったほうが、がぜんやる気になるというものです。

では、人に仕事を頼む場合にはどうすればいいのかというと、最低でも1割は自由にやっていいという部分を残しておくのです。

大まかな段取りやルール、目指すべきゴールはしっかりと提示し、細かな部分は本人の工夫しだいでいかようにもできるようにしておきます。

そして、「いちおうマニュアルはつくっておいたけど、この部分はキミのセンスでいい感じに仕上げてほしい」と伝えるのです。

そうすれば、頼まれたほうは信頼されているからこの仕事を頼まれたのだと感じます。

また、面倒そうな仕事だけど、いい経験になるかも…とその気にさせることができるのです。

創意工夫ができる楽しさは、それだけで人を伸ばします。1割の自由があるだけで請け負ってもらえるだけでなく、求めていたよりもクオリティの高い結果が残る場合もあるので一石二鳥というわけです。

弱さが一瞬で武器に変わる「嘆願ストラテジー」

自分は見た目の印象で頼りなさそうに思われ、実際、他人に対して強く出たり発言することもできない。そのため、人を説得したり交渉するなんてムリだと思っている人がいるかもしれません。

しかし、心配ありません。そのコンプレックスは上手に使えば一瞬で人の心を動かす武器に変えることができるからです。

たとえば交渉が決裂しそうになったり、いくら説得しても相手が首をタテに振ってくれないときは、最後の手段として「これは本当に今日中にどうにかしないと困るんです」と心情に訴えます。

これを、ふだんは人を上から見下ろすような態度をとっている人や自信満々で鼻持ちならない人がやると「なんだ、今度は泣き落としか」と冷めた目で見られてしまうかもしれません。

ところが、これをいかにも虫も殺せぬといった風貌の人がやると、本当に気の毒に思えてしまうのです。

その、心底困っている姿を見ていると不憫に思えてきて、無下に断るのもかわいそうだ、何か協力できることはないだろうかなどと考え、手を差し伸べたくなるのです。

これは、心理学的には「嘆願ストラテジー」といい、相手に弱点をさらけ出すことで協力を得る心理テクニックなのです。

同じように誰かに仕事を手伝ってもらいたいときにも、「すみません、不器用なんで…」と自分に能力がないことを強調するといいでしょう。

このひと言で相手は優位に立たった気分になり、しかたがないなと言いつつも手を差し伸べてくれるはずです。

「できない」ときも否定的な言葉を使わず、"先送り”にしてかわす

多くの場合、断るというのは勇気がいる行為です。嫌われてしまうかもしれない、がっかりさせてしまうかもしれないと考え出すと、どう断っていいのかわからなくなってしまうこともあるでしょう。

しかし、不可能なことは初めからきっぱりと断らなければ、かえってその後の関係にトラブルを招いてしまいます。そこで覚えておきたいのが、「少し様子を見ませんか」です。

たとえば、達成が困難な計画を持ってこられたとします。同僚や部下にならはっきりとダメ出しができても、上司や取引先などそうはいかない相手の場合は困ってしまいます。

そんなときは「概要はわかりました。前向きに検討させていただきますが、少し様子を見させていただけますか」と言ってみましょう。

ポイントは否定的な言葉をいっさい使っていないところです。これで、意見を受け入れてもらえたという一定の満足感を与えることができます。

その一方で、様子を見るというあいまいな表現を使うことで結論を先延ばしにしているのです。その後も、「タイミングが悪いかもしれません」「検討中なのですが時間がかかっていて」というように矛先をかわしていくと、そのうちに話が立ち消えになる可能性もあります。

あいまいに答えてはぐらかすというのは少し気が咎めるかもしれませんが、職場などの人間関係においてはどうしても必要になるスキルです。

あくまでも断るとしても、少し様子を見ませんかというひと言があるだけで気分を損ねることもなくなります。

通常ならポジティブなとらえ方をされないあいまいな言葉というのも、使い方ひとつで会話の流れを一気に決定づける決定的な意味を持たせることができるのです。

 

PROFILE
おもしろ心理学会

人間心理の謎と秘密を解き明かすことを目的に結成された研究グループ。不可思議な心のメカニズムを探るとともに、その研究成果を実生活に活かすため、日々努力を重ねている。