「恐怖」で子どもを支配しようとしていませんか?
「子は親の背中を見て育つ」といいますが、この背中には親の抱える不安も映っています。これを私は「親の闇」と呼んでいます。問題は、親には自分の背中や、そこにある闇は見えないことです。これを子はまともに見て育つのです。
子は親の感情をエネルギーで感じますから、親が不安だと、その原因がわからなくても、子はそれを察知して不安になるものです。
親が抱える「不安」「自信のなさ」「ネガティブな思考」は、親の「闇」=「病み」として、子に悪影響をもたらします。親が先祖から受け継いだ「闇」もあるでしょう。これを親自身が浄化できていないと、子は親の「闇」に影響されて育つことになります。
そして、このような親の闇に影響される親子呪縛は、「不幸な家庭」だけに起こることではありません。どんなに幸せそうな家庭にも、この闇はつきものだと思います。
親が「成功しなければ人生は闇だ」という恐怖心や固定観念を持っていると、子にも成功しないと人生の地獄が待っているかのように、教え込んでしまうことがあります。
「大きくなったら、お金持ちになってね」「いい学校に進学してね」「いい会社に入ってね」「こんな人と結婚してね」……何の気なしに、高い目標や自分の理想を押し付けてしまう。高い目標を子どもに強要して、それを達成させようとする親は、親自身もそういう育てられ方をしたのかもしれません。
でも親の希望通りの結果を出すことだけを目標にしなくてもいいこと、たとえ上手くいかなくても、子がベストを尽くしてくれたら、それでいいと伝えてあげてください。親子で敗北感に落ち込んだり、ましてや親が子ども以上に落胆したり、怒ったりすることがあっても、子の自尊心や自信を傷つけないように守るのが親の大切な役目です。
いい成績が取れないと認めない。親の言う通りにしないと認めない。親の決める基準に沿った「いい子」でいなければ認めない。
これらは親子呪縛の典型的な例であり、これらをきっかけに、体罰などの虐待に発展させていく親もいます。親自身に将来への不安があるから、子を脅すのです。親は自分の中の不安という闇で、子を支配しているのです。
私自身も2人の子を育てながら、いろんな場面で「恐怖」を教えようとしてしまいます。「あ〜!」と私が叫ぶだけでも、かなり子どもたちを恐怖に落とし込んでいることに気がついたのは、彼らが少し大きくなってからでした。
小さい頃は、それだけで子どもたちは固まっていましたが、大きくなってくるにつれて、「ママ、声だけで脅かすの、やめてよ」と言われるようになってきました。さらに大きくなった今では、「ママ、落ち着いて!」と逆に叱られます(笑)。
危険なものから身を守るとか、やってはいけないことを知るという目的で「恐怖」をブレーキのように使うにも、細心の注意を払わないといけません。ブレーキとアクセルを上手に使いこなせるようにしてあげるべきなのですが、ブレーキをかけることばかりになってしまう可能性があることは、私自身が自分の子育てで経験しています。
子どもについ「ダメ」と言っていませんか?
親の過剰な「ダメ出し」は、親子呪縛を生みます。
自分もしょっちゅうダメと言われて育ったから、ついダメ出ししてしまうという人もいるでしょう。自分自身が経験した失敗や過ちを、我が子が繰り返すのではないかと心配してのことかもしれません。
私も子どもに対して、忙しいときや面倒くさいことに「ダメ」と言いがちです。その影響で息子たちが、「ママ、聞きたいことがあるんだけど、どうせダメって言うと思う」と切り出すようになったのです。
これは重症です。私の心ないダメ出しの悪影響が、子どもの心と思考と言動に根付いてしまっています。
自分でダメ出ししたことも忘れて、たとえばチョット危なそうなものや、片付けるのが面倒くさそうな科学の実験など、「なんでこういうのにチャレンジしないの?」と聞いたら、「だって前にやりたいって言ったら、ママがダメって言ったじゃん。もう興味ないよ」と言われて、子どもの可能性の芽を摘み取ってしまった自分の罪に気がつくのです。
そんなふうに、二度と生えてこない可能性の芽がどれだけあることでしょう。危険そうなことは一切しない息子たち、私が怖がらせすぎたかもしれないと反省しますが、成長するにつれて、もっと冒険しなさいと励ますしかないのでしょう。
”優しすぎる親”に育てられるのも一つの悲劇
過保護に育てても、逆に傷つきやすい子になってしまうという親子呪縛が発生します。親に愛されすぎたことが裏目に出るということも、よくあります。「子どもを傷つけない」というのは、過保護に育てるということではありません。
親が優しすぎたせいで、子が自立しなくなる。引きこもりになったり、社会に出ても、仕事に支障が出たりする。人に干渉されるのが嫌いで、人と交渉するのも苦手。きわめて主観的で人に合わせられない。いつまでも学生気分だったり、就職しなかったり、職場で理解されなかったり、人の嫉妬の対象になってしまったりする。
結婚して家を出る気になれなかったり、結婚してからも、親に経済的に頼りっぱなしなど、親に助けてもらえるのはありがたいとはいえ、その裏で、「自分は自立できていない」という気持ちが発生して、コンプレックスになってしまう人も多いです。
愛されすぎて、施錠されてしまう可能性の扉があって、それが自己肯定感の低さとなって現れ、すごく恵まれていても自信が持てなくなる。それは何かを自力で得た達成感がないからかもしれません。
いつもある程度満たされていると、何かを頑張って手に入れなければいけないという焦燥感や、このままじゃいけない、という危機感が生まれないのも問題です。恵まれすぎているがゆえに発生する親子呪縛は、いざというときに無理がきかない、馬力が出ない、そんな問題にもつながってしまうのです。
優しいばかりの親に、なんでも許されて育つと、自分のワガママに歯止めが効かなくなるのも自然なことだと思います。自分が間違っているのに正しいと思い込んだりして、損することもあるでしょう。
「自分って、そういえばブレーキ効かないこと多いな……」と思うことがあったら、親に何でも許されたことが、ネガティブに働いていないか、考えてみてください。人前ではコントロールが効いても、プライベートでは暴走してしまう原因も親子呪縛かもしれません。
優しさだけの子育てでは、子のブレーキが甘くなる。すると問題に激突するまで止まれなくなります。
「こんな問題を起こすなんて!」という結果になるのは、子に厳しく「限界線」を教えてなかったからかもしれません。すると子は、人生の厳しさに限界を知らされることになります。優しさが、その人の限界になってしまうこともあるのです。
大阪出身。 7歳で父親の死を予知した時から、予知能力、霊とコンタクトする能力、過去や前世を透視する能力などに気づく。1986年に渡米。未来や過去を詳しく視つつ、その人の人生の出来事の意味を分析するセラピー的な効果のあるリーディングが特徴で、ニューヨークを拠点に世界各国からの依頼を受けている。
初の著書『自分のまわりにいいことがいっぱい起こる本』は75万部のベストセラーに(2003年初版。2019年に同タイトルで文庫化)。『自分の気持ちがわからなくなったら読む本』(いずれも小社刊)、ほか、『あなたの人生で本当に大切にするべき27のこと』(サンクチュアリ出版)、『あなたの「つらいこと」が「いいこと」に変わる本』(祥伝社・黄金文庫)など著書多数。