中学受験に挑戦すべきか、やめるべきかは「片づけ」で判断できる

勉強をダラダラやる場合は“生活のスピード”を上げる

小学3年生をすぎるころから、学校の宿題の量が増えてきます。「宿題をやるのに時間がかかる」「集中力がなく、ダラダラやっている」という悩みを持つお母さんも多いようです。

ダラダラと勉強するのは一人っ子に多いようです。お母さんが今までその状態で許してきてしまっているパターンです。今の時代、「メシが食える力」に「テキパキ感」は外せません。

もし一緒に働いている相手にトロトロ仕事をされたらどうですか? たいてい周りの人間はイライラしてしまいます。トロトロ仕事をされて間に合わなかったら、シャレにならない世界です。

テキパキ感をつけるには、スピードが大切です。一つのわかりやすい方法としては、生活面で歩くスピードを上げることです。「待って待って」と言われても、さっさと歩いてしまうくらいでちょうどいいでしょう。

もう一つは学習面でスピードを上げる仕組みをつくること。花まる学習会の教材で「サボテン」(計算)、「あさがお」(名文の書き写し)というものがありますが、これは時間を決め一日1ページ行うものです。読めるギリギリの字でいいから、スピード感を持ってやることを一つの目的としています。

実は、学校のシステムではスピードをあまり重視していません。字を書くにしても、「ていねいに」「とめ、はね、はらい」を指導するだけです。それも大事なのは確かなのですが、同時にスピード感も重要です。

実際、自分の人生を決める入試では時間が限られていて、決められた時間の中で、力を出しきることが求められます。今の教育には、スピード感が欠けているのです。そしてこれは、お母さんの苦手項目でもあります。

宿題をダラダラやっているということは、おそらく食べるときも着替えるときも遅いのではないでしょうか。そういう場合は生活から勉強から、いろいろなもののスピードを上げないといけません。お母さんの声かけだけではもはや無理で、できれば塾や習い事、部活の先生など、外で関わる人にもサポートしてもらったほうがいいでしょう。

「学校の宿題を早く終わらせたいときに、どう声かけをしたらいいのでしょう」と“技術”を知りたがるお母さんが多いのですが、技術ではありません。生活をまず見返してみてください。そこにテキパキ感、スピード感をつけていくことで変わっていくのです。

宿題につき合うのはいいですが、必要以上に手を出したり、キレて「何やってるの、こんなのもできないの?」などとNGワードを連発してしまったりするくらいなら、お母さんは関わらないほうがいいでしょう。「自分のことは自分でやる」のも大事なことです。それよりも、日常生活全体のスピードを上げることに意識を向けてみてください。

高学年になったら親は勉強を見ない

高学年になったら親は勉強に口出ししないでください。とくに苦手な子が多い算数の文章題はやめたほうがいいでしょう。

普段から私が「文章題の指導は母親以外がいい」と言っていますが、お母さんがぴったり横についている限り、状況は悪化の一途をたどります。お母さんは頭ではわかっていても、つい、「なんでできないの!」「ちゃんと読んでって何度も言ってるでしょ!」「本当に授業で先生の話を聞いているの?」などと言ってしまいがち。これでは、母親の言葉が、逆にやる気を失わせてしまいます。

高学年になったらもう、外の師匠をつくることです。それは塾でも家庭教師でもいいのですが、道場並みに厳しい先生に見てもらうのが理想です。もしもわかったふりなどしようものなら、「本当にわかってるのか、じゃあ言ってみろ」「適当なこと言ってるんじゃない、こら!」と言われて、泣きじゃくるくらいでちょうどいいのです。

本当にわかったときの気持ちいい感覚を味わうのは、今からでも遅くありません。思春期はほうっておくとサボる時期。いくらでも転がり落ちる時期でもあります。親の第一の仕事は、「この人にまかせておけば」という人を見つけてあげることです。

小6で「片づけ」ができない子には難しい

中学受験をさせるか高校受験まで待つかは悩みどころだと思います。どちらにもメリット・デメリットがありますが、親が、わが子が中学受験に向いているか、向いていないかを見極めましょう。

中学受験はずばり、早熟なタイプが向いています。その一つの目安として、私は、「小6の夏の時点で片づけができない子は、中学受験をさせてはいけない」と考えています。

少し離れて見守ってみると状況がよくわかります。机の周りやカバンの整理を自分でできるかどうか、塾や学校の用意を自分でできるかどうか。これらは学習に対する「自主性」にもつながります。

もう一つポイントとなるのは「他者性」が育っているかどうか、です。国語の問題では、長文を短時間で読み込み、登場人物の気持ちの変化を問われたり、人生の機微や相手の心情をくみとるといった他者性が試されます。出題者の意図を読み取り、他者にわかるような表現ができないと中学受験は難しいでしょう。

これは、頭の良し悪しではなく、単純に成長段階の問題です。このようなわが子の成熟度を見極めず、周りに流されて安易に中学受験をさせると、子どもをつぶしてしまうのです。

そして、中学受験をさせるとなったら、夫婦が一枚岩になって決してぶれないこと。ありがちなのは、母親だけ熱くなってしまうことです。父親が地方出身で中学受験の経験がなく、「どうなんだろうな」と思いながら傍観してきた場合、こういうことが起こります。

たとえば、息子と二人でお風呂に入ったときなどに、「おまえも大変だな、お母さんカッカきちゃってな」などと言ってしまうのです。そうなると被害者は子どもです。必ず伸び悩んでしまいます。やるなら夫婦で覚悟を決めてください。

また、「もし伸びなかったらやめればいいじゃない」というような言い方をする親がいますが、これもうまくいった試しがありません。子どもが不幸になるだけです。言い訳を子どもに与えているし、子どもは本気になれなくなります。

やめるときは、スパッと後ろを振り向かずにやめればいいのです。「伸びなかったらやめる」という中途半端な気持ちだと、途中でガクーンとテンションが下がり、次に進めなくなってしまいます。

志望校については、子どもに選ばせたように思わせることは大切ですが、中学受験は100%親の仕事です。よくある失敗は、受験しようとしている学校の文化祭などに子どもを連れて行って、「あなたはどうしたいの?」と聞いてしまうパターン。

子どもというのは、なんでも好きになる素敵な生き物なのです。担任の先生は好きになるし、これやろうよと言えばやる。つまり、文化祭に連れて行った学校はたいてい好きになります。すから、あたりかまわず連れて行くのではなく、親のほうであらかじめ5、6校に絞っておき、どこに入ってもいいと思ってから見学に行くのが親のできることです。

受験で大切なのは、「主体性」です。どこかで「やらされ感」がある子は伸びませんし、自己像もさらに小さくなってしまいます。そのまま素直に公立中学に行けばあと伸びしたのに、中学受験は突破したものの、下位で合格してピラミッドの末端が指定席になってしまった子もたくさんいます。

そういう子は、「どうせできないから」と卑屈になってしまい、無駄に自己像を小さくしています。どんな環境に身をおくかで変わるものもある。何を目的として中学受験をするか、はじめに決めておくといいでしょう。

 

PROFILE
高濱正伸

花まる学習会代表。算数オリンピック委員会理事。1959年、熊本県生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年、幼児・小学生向けの学習教室・花まる学習会を設立。作文・読書・思考力・野外体験を重視したユニークな教育手法は、テレビ「情熱大陸」「カンブリア宮殿」「ソロモン流」など数多くのメディアに紹介されて大反響。子育てに悩む母親の救世主とも称される。