食物繊維のとりすぎで便秘に!? 「腸にいい食品」の大いなる誤解

健康のために「よかれ」と思って食べていたものが、実は効果がなかったり、逆に不調の原因になっていたら? これまで30年以上にわたって大腸内視鏡検査を行ってきた松生恒夫先生が、巷間ささやかれる健康食情報のありがちな誤解と真実について、解説してくれます。

「腸にいい食品」の思い込みが不調を招く

高度経済成長期以降、日本は食事の面でも大変豊かになりました。

食物繊維や植物性乳酸菌が豊富に含まれる伝統的な和食が減り、肉類、油脂類、乳製品をとる食事が増え、それによって栄養状態がよくなった面もあります。一方で、がんや生活習慣病をはじめとするさまざまな病気が急増し、食生活との因果関係が疑われています。

その反省からか、近年人々の健康の意識は高まっています。次々に現れては消え去る健康ブームはその象徴といっていいでしょう。

からだによいとされる食べ物、悪いとされる食べ物に関する情報が飛び交い、ひとたびある栄養素ががんを予防すると話題になれば、その成分を含む食品がたちまち店頭から消えるほど、健康の維持に熱心であるといえます。

しかし、それらの情報の中には、必ずしも健康によい影響を与えるとは限らないものも多く見られるのです。

私のクリニックを受診する患者さんには、どんな食事をしているのか、どんな生活を送っているのかも聞いていますが、流行りの健康食をとりすぎたり、間違ったダイエット方法を続けたりしていたために、かえって大腸の状態を悪くしてしまった患者さんを何人も見てきました。

長年、日本人の大腸を診てきている専門医の立場から、からだによいと思われている健康食情報がはたして本当なのか、見ていきたいと思います。

ヨーグルトを食べると腸が健康になる?

「ヨーグルトが腸によい」というのは、もはや一般常識のようになっています。だから朝食はヨーグルトだけ、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌には整腸作用があり、腸内の善玉菌を増やすはたらきがよく知られています。実際、軽度の便秘傾向の人には効果もあるようです。ただ、私のクリニックに来られる重症の便秘の人には、あまり効果は見られません。

一口に乳酸菌といっても、ヨーグルトやチーズなどに含まれる動物性乳酸菌と、漬物や味噌、しょうゆなどに含まれる植物性乳酸菌の2種類があるのはご存知でしょうか。動物性乳酸菌は、そのほとんどが胃液や腸液によって死滅してしまうため、大腸の奥まで届きにくいという欠点があるのです。

一方、植物性乳酸菌は、温度の変化に強く、胃腸内の過酷な環境でも死滅しにくいため、生きたまま大腸まで到達してくれます。

ヨーグルトが一般家庭にも普及し、日本人が日常的にとるようになったのは1970年代以降ですが、それ以前は植物性乳酸菌が含まれる漬物などの発酵食を日常的にとることで、腸を守っていたのです。

ヨーグルトを適度に摂取することは悪くないのですが、脂肪分の多いヨーグルトばかりを食べ続けるよりは、ごはんと味噌汁、漬物といった伝統的な朝食の効用を見直したいものです。

食物繊維も、とり方次第で逆効果に

よく、「食物繊維をとるために、サラダをたくさん食べるようにしている」という方がいらっしゃいます。しかし、サラダによく入っているレタスやキャベツなどの葉物野菜は、大半が水分で、かなりの量を食べないと十分な食物繊維がとれません。コンビニの野菜サラダに含まれる食物繊維量を調べたら、2.4グラムしかありませんでした。

また、食物繊維はたしかに便通の改善に効果がありますが、だからといってたくさんとったほうがいいとは一概にいえません。摂取のしかたを間違えてしまうと、便秘がかえってひどくなることもあるのです。

食物繊維には、不溶性食物繊維と、水溶性食物繊維があります。不溶性食物繊維を多く含む食品には、たとえば玄米やニンジン、レタス、干し柿などがあります。一方、水溶性食物繊維は、コンブやワカメといった海藻類やミカン、桃などの熟した果物、ナメコ、オクラなどに多く含まれています。

不溶性食物繊維は、その名のとおり水に溶けにくく、腸内の水分を吸収してふくらみます。食物繊維が豊富そうだからとサラダばかり食べて水分が不足すると、便が硬くなったり、お腹が張ったりしてしまうのです。

不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は、どちらか一方だけでいいということではなくて、それぞれをバランスよくとる必要があります。その理想のバランスは、2対1です。

「玄米菜食」は必ずしも腸にいいとはいえない

自然食のブームが続いており、とくに「玄米菜食」は健康意識の高い女性に人気の高い食事法です。この玄米菜食を徹底した食事療法であるマクロビオティックは、高血圧や糖尿病、メタボリックシンドローム、大腸がんなどの生活習慣病予防に有効であるとされています。

玄米菜食の食事療法には、マクロビオティック以外にもいろいろな流派がありますが、いずれも、肉・魚・卵・乳製品などの摂取を控え、全粒穀物や野菜を中心にした低脂肪の食事をとることが、共通する特徴といえるでしょう。

ただ、この理想的に見える食事法にしても、必ずしもよいことばかりではありません。場合によっては、大腸の状態を悪化させてしまうことがあるのです。

なかでも、慢性便秘で悩んでいる人は注意が必要です。とくに症状がひどいときに実践してしまうと、お腹の状態はさらに悪化し、お腹の張りがひどくなったり、便が硬くなって排便障害を起こしてしまうことがあります。

これは、玄米などの全粒穀物や野菜(ゴボウ、ニンジン、カボチャ、タマネギ、ダイコン、レタスなど)を多くとることになるので、前項で説明した不溶性食物繊維の摂取量が多くなるからです。とくに玄米は消化に悪いので、よく噛まないと未消化で大腸に行って滞留してしまうことがあります。

不溶性食物繊維をとる場合は、同時に水分を多めにとるか、水に溶けやすい水溶性食物繊維(ミカンやキウイフルーツなどの果物、ナメコ、海藻類、オクラなど)を一緒に食べることが必要です。それを知らずに玄米菜食を続けていると、人によっては腸の状態が悪化してしまうのです。

私のクリニックに来院される慢性便秘の患者さんにも、玄米菜食を実践して症状が悪化してしまった方がいらっしゃいます。その方に大腸内視鏡検査を実施してみたところ、上行結腸に未消化の玄米が多数残っていたことがありました。

ぬかや胚芽を残した玄米は、栄養面ではとてもすぐれた食べ物ですが、よく噛まずに食べると消化に時間がかかり、悪くすれば未消化になることがあります。

大腸が健康な人なら問題なくても、慢性便秘の人や、胃腸が弱っている人、ストレスなどで腸のはたらきが鈍くなっている人が、白米と同じような感覚で玄米を食べると、消化できずに大腸の状態をさらに悪化させてしまうかもしれません。

玄米を食べるとお腹が張ってしまうという自覚のある方は、腸のはたらきが弱っている可能性が高いです。腸の状態がよくなってから、少しずつ玄米をとるようにしたほうがいいでしょう。とくによく噛んで食べることが大切です。

赤身肉がリスクになる、これだけの証拠

また最近は、タンパク質をとらないと、筋肉や代謝が落ちて太りやすくなるという理由から、赤身肉を積極的に食べる方が増えているようです。しかし、国立がん研究センターが、約10年間で約8万人を対象にした追跡調査の結果を2011年11月に公表し、肉を多く食べる日本人は大腸がんになるリスクが高いことが明らかになりました。

赤身の肉(牛肉、豚肉、羊肉)が危険な理由としていわれているのは、次のようなものです。

①肉を食べると、脂質を多く摂取することになる

それに伴い、コレステロールや飽和脂肪酸などの摂取量の増大につながります。

②肉を焼くと焦げることもある

最近の研究では、肉を高温調理したり、焦がしたりすると、一部の成分が発がん物質に変わることが判明しています。しっかり火が通った肉を好む人のほうが、大腸がんになりやすいという指摘もあります。

③赤身肉はほかの部位に比べて鉄分が多い

適量の鉄分は必要ですが、脂質も一緒にとると、鉄と脂質が反応してがん発症のきっかけとなる活性酸素をつくりだす、フェントン反応(鉄の反応)を起こしやすくなります。

体内の鉄分の多くは、通常はヘム鉄として血液中に存在しています。酸素を細胞に運ぶ赤血球のヘモグロビンは、ヘム鉄とタンパク質が合体したもの。

鉄分はこのように人間のからだには欠かせない成分ですが、赤身肉の大量摂取などで鉄分をとりすぎてしまうと、鉄分が腸管内を通過するときに、過酸化脂質と反応して活性酸素が発生しやすくなるのです。

だから赤身肉の摂取量はできるだけ抑えるべきだという意見もあります。アメリカ対がん協会では一日の赤身肉摂取量を80g以内にすべきとしています。

ただ、赤身肉を食べる機会が多いアメリカ人と比べ、魚や豆類などからもタンパク質をとっている日本人は、もっと少ない基準でいいかもしれません。

私は1週間に3〜4回程度(つまり夕食で肉・魚を交互に、一日おきにとる)、80g以内を食べるぐらいならあまり問題はないと考えています。最近、日本の若い人は一日80g以上の肉類を摂取しているというデータもあり注意が必要です。

鉄分は赤身肉のほかにも、たとえばレバーやアサリ、ハマグリなどの貝類にも多く含まれています。赤身肉以外でも、肉や魚で赤みが強いほど一般に鉄分が多いと考えてよいでしょう。

 

PROFILE
松生 恒夫

1955年東京生まれ。松生クリニック院長。医学博士。東京慈恵会医科大学卒業。同大学第三病院内科助手、松島病院大腸肛門病センター診療部長などを経て、2004年、東京都立川市に松生クリニックを開業。現在までに5万件以上の大腸内視鏡検査を行ってきた第一人者で、地中海式食生活、漢方療法、音楽療法などを診療に取り入れ、治療効果を上げている。おもな著書に『「腸ストレス」を取り去る習慣』『「腸の老化」を止める食事術』『「炭水化物」を抜くと腸はダメになる』(いずれも小社刊)などがある。