「反抗期が迎ない子」の親に見られる共通点
子供が中学生ぐらいになると、思春期特有の問題がいろいろ浮上してきます。親としては、今までになかった心配を抱えることになるかもしれません。なかでも子供が迎える〝反抗期〟は、今から心配している親御さんも多いことでしょう。反抗期の子供には苦労させられるかもしれませんが、それも仕方のないこと。まずは、そう覚悟しておきたいものです。
人間が成長していくうえで、反抗期は必要な過程です。これを通過してこない子供は親離れ、自立ができません。その結果、大学生くらいの遅い時期に問題が出はじめて、つぶれてしまうことになってしまいます。
私が過去に見てきた学生たちでも、反抗期を経てこなかった子は、全般に自分の頭でモノを考える習慣があまりなく、周囲に流される傾向が見られました。また、甘やかされて育ち、楽しいことばかりに目が行くような子が多かった印象です。
〝なにも考えずに育ってきた子〟こそが反抗期を迎えられず、いざ大学生になったら問題が表に出てしまうのです。
そして、こうした学生の裏には、やはり〝問題のある親〟の存在がありました。反抗期を経験できなかった学生たちを調べると、次のような親をもっているケースが非常に目立ったのです。
- 強い権力を振りかざして子供を縛りつける親
- 家庭内にお父さんの存在感が薄く、全権を握っているお母さん
- 甘やかしてわがまま放題の子育てをする親
こうした親のもとで育った子供は、親の権力が強すぎて逆らう意欲をもてなくなります。反対に、存分に甘やかされて育つと、反抗する機会がないまま育ってしまいます。
息子の反抗期にはどう対処すればいいか
そもそも反抗期というのは、頭の中に知識が積み重なり、物事を自分の頭で深く考えられるようになったことで、親に対する葛藤や人生における矛盾が湧き上がることからはじまります。いわば、自立に向けてもがくのが〝反抗期〟。つまり、自分の頭で人生について考えはじめるようになった証拠だともいえます。
ですから、子供が反抗期を迎えたというのは、間違いなく喜ばしいこと。親としてはしばらく対応に手を焼くことになりますが、先行きを想像してうんざりするのではなく、「わが子は健全に成長しているんだな」と、むしろ誇らしく思っていいはずです。
では、反抗期の子供に対して、親は具体的にどのように接するべきでしょうか。
こういった時期は一過性のものと親はあきらめ、放っておくのが一番です。特に男の子の場合、反抗期に差しかかると話もしなくなり、時には衝動的な怒りを家族にぶつけたりするかもしれません。
しかし、いくら心配だからといって、親との会話をイヤがる子供をせっついて根掘り葉掘り聞いたり、あれこれと手をかけるのはNG。親は子供の態度に振り回されず、「早く嵐がすぎてくれればいいけど」くらいの気持ちで、おおらかに接したいものです。
子供のころに親からかわいがられて健全に育ち、中学生ぐらいで反抗期を迎えた子であれば、比較的早い時期に必ず嵐はすぎ去ります。どんなに長くても3年間くらいで反抗期は終わり、子供自身「自分は親にひどい態度をとってしまった」「自分はなんとムダな時間をすごしてしまったのか」と反省する時が必ずきます。
反抗期の子供に対しては、社会的に問題のある行動をしていないかという点にだけはしっかり目を配り、叱るべきポイントでは親として厳しく対応します。あとは、黙って見守る姿勢を貫くのが反抗期の男の子に対する正しい親の態度です。
わが子が不良行為にあこがれを抱いたら……
タバコを吸う、お酒を飲む、夜遅くまで遊ぶ、学校をサボる……。男の子というのはある時期、不良行為にあこがれを抱いてしまうもの。では、子供が不良行為に興味をもち、もし実際に悪さをしてしまった時、親としてはどう対応すべきなのでしょうか。
それが社会的に許される行為かどうかがポイントになってきます。社会的に見て許容の範囲内なら、親としてまずは黙って見守るようにしてください。特に中学生ぐらいまでの男の子は羽目を外すことがよくあり、これは成長するうえで必要な体験ともいえます。他人に害をおよぼさない悪さなら、本人なりになにかを感じとるまで、目をつぶってやってもいいでしょう。
ただし、それが社会的に許されないような行為であるなら、「それは反社会的な行為で、許されないことだ」と厳しく諭す必要があります。ほとんどの子は、自分の行為が悪いことだというのを認識しています。まともに育ってきた子であれば、親が真剣な面持ちで厳しく叱ると一度きりでやめるはずです。
また、悪い仲間に入ってしまうというのも、中学生ぐらいの男の子をもつ親にとって大きな心配ごとの一つ。
「好ましくないグループに入りたがるのは、親の愛情が不足気味でさびしい思いを抱えている子に多い」というのは、学校現場で一般にいわれている事実。さらにもう一つ、実は家庭内で規則やルールなどの縛りがほとんどなく、好き放題に育ってきている子ほど、こうしたグループに興味をもってしまうようなのです。
まったくルールがない状態では、人間はかえって居心地悪く感じてしまうもの。それゆえ、同じ年ごろの仲間に入り、その中における独特のルールに頼ることで安心感を得ようとします。そして、好ましくないグループほど独特の厳しいルールを仲間に課しており、そうした点に不思議な魅力を感じてしまうというわけです。
わが子が好ましくないグループに接触している様子だったら、まずは親として子供に愛情を注いでいたか、家庭内に問題はなかったかを省みるべきです。
獨協医科大学名誉教授。東京都出身。1963 年横浜市立大学・生物学科卒業。研究生活に入り、京都大学・水産生物学で学位を取得。獨協医科大学で細胞生物学、分子生物学、行動学を通じて、地球環境と人類、哲学と医学等の人間教育に力を入れ、人間学をライフワークとする。