株式会社日本産業カウンセリングセンター理事長
イラスト・波打ベロ子
LINE のやり取りを強要する嫌がらせ「LINEハラ」(ライン・ハラスメント)
LINEは、ユーザー同士がメッセージやスタンプなどをやり取りする機能と、特定のユーザーだけが参加できるグループLINEなど、さまざまな機能があります。これらのメッセージや機能を利用し、他のユーザーに嫌がらせ行為をするのが、「LINEハラ」です。
LINEの連絡方法はチャット形式で、メッセージそのものが短くなりがち。気軽な連絡手段であるがゆえに、ついプライベートなことを書いたり、軽い気持ちで冗談を書いてしまいやすい。この点が、LINEハラスメントが頻発する要因にもなるのでしょう。
また、LINEの使い方には明確なマナーがなく、使用する人それぞれが使い方を分けているのが実情です。たとえば、深夜や早朝などの時間にメッセージを送っていいかどうか、休み時間や就業時間外はLINEの返信の必要なしか、など、仕事で使用する際には、そのあたりのルールをお互いに共有し合ってから始めましょう。
「LINEハラ」対策のポイント
LINEハラスメントが頻発し、長く続くようなら、いじめやパワハラにつながっていきます。特に、LINEの返信を上司が強要するとハラスメントです。また、部下に対し、精神的に追い詰めるようにメッセージをいくつも送ったりすれば、部下は精神的な嫌がらせを受けていると感じるものです。これがLINEでのパワハラです。
仕事では基本的にLINEを使わない、使うときも個人的に使うのではなく、部や課などの全員を交えたグループLINEにすることで、他者の目を気にしたやり取りにすることができます。
血液型でレッテル貼り「ブラハラ」(ブラッドタイプ・ハラスメント)
日本人は、何かと血液型占いが好きです。ABO方式なら 4つの型しかなく、そんなの当たらないと思っても、特徴を言われればたいてい心当たりがあるもの。特定の血液型の人は、どんな性格や傾向を持っているか、といった本がたくさん出ています。
この血液型(blood type)の与える印象で、その人の人格や性格を決めつけるような言動や嫌がらせ行為を「ブラハラ」といいます。
そもそも血液型というのは、赤血球の表面にある抗原によって決まります。人間だけでなく、他の動物や植物にも血液型があります。「几帳面なねずみ」とか「親分気質のサボテン」などが当たっているとは思えません。
「ブラハラ」対策のポイント
血液型の分類で、特に標的にされがちなのがB型とAB型 です。この手の分類では、B型はわがままで嫌なことははっきり嫌と主張するとされ、AB型は気まぐれで、ちょっと変人などとされています。
友人同士でこんな性格を比較して、笑い話として話しているうちはいいのですが、悪い性格として指摘したり、はやし立てるのは、やはり嫌がらせです。まして、仕事の人事に血液型での性格分類を根拠にするなど、もってのほかです。根拠のない血液型での決めつけは明らかにブラハラです。
もしブラハラに遭いそうになったら「そんなことで性格を決めつけて楽しむ人は、何型だろうね」と言ってやりたいところです。それか、フッと一笑にふして無視するのがいいでしょう。
正論がいつも正しいとは限らない「ロジハラ」(ロジック・ハラスメント)
仕事も人間関係も、規則やルール、あるいは合理的なやり方といったものが存在しますが、その規則やルールを盾にミスを徹底的に追及されたり、不快な気分にさせられたりするのは、相手が正しいだけに反論できません。そのように正論ばかりを突きつけ、相手を追い詰め、相手を不快な気持ちにさせるのが、「ロジハラ」です。
職場の上司という立場や地位など人間関係の優位性を背景にして、相手を正論で追い詰めるのがロジハラなのです。ロジハラの根本はパワハラ。言っている内容が正しいかどうかというよりも、その言い方や態度が問題とされます。
「ロジハラ」対策のポイント
部下のミスを正すとき、あるいは夫婦間なら妻のミスを正すときなど、正論を振りかざして叱責するのは賢い方法ではありません。そもそも、ミスは自分で気がついて直すのが一番の修正方法。
正論や自分の意見を言う前に、まず「あなたは今回の件について、どのように考えていますか?」と相手の言い分を詳しく聞いて、気づかせるように促しましょう。間違っても一方的に説き伏せるような真似はしてはいけません。
企業が犯しがちな二度目のハラスメント「セカハラ」(セカンド・ハラスメント)
ハラスメントの被害者が、上司や同僚などに相談したとき、逆に相談者が悪いのだと責められたり、相談したことでいじめられたりするなど、ハラスメントにかかわる二次的ハラスメントをセカハラといいます。
ハラスメントの告発や上司や同僚に被害に遭っていることを相談することは、かなり勇気のいることです。セクハラを受けたと告発すれば、色眼鏡で見られたり、セクハラされたほうが悪いのではないか、などと勘ぐられたりするのでなかなか言い出せません。
そんなハラスメントの相談者に対し、さらに嫌がらせを行うセカハラは、ますます事態を悪化させ、被害者を追い詰めてしまう行為です。
「セカハラ」対策のポイント
上司や会社など相談された側は、社員からハラスメントの訴えや相談があれば、できるだけ被害者に親身になり、ハラスメントの内容や相談者の声に真剣に耳を傾けることが大事です。相談者からすると、言い出しにくいことを勇気を振り絞って相談しており、相談窓口はハラスメント解決の最後の砦のような心境の人もいるのです。その心境に配慮した対応に当たるようにしましょう。
会社としては、専用の相談窓口や部署を設定することが必要です。もちろん、ハラスメントの担当がセカハラを行ったり、セカハラの原因になるような言動をしたりするのは絶対に避けなければなりません。そして、相談内容などが外部に漏れないように注意することが必要です。
セカハラは、「親身に相談に乗る」「外部に漏れないようにする」この2つをしっかり守れば、未然に防ぐことができます。日頃から研修を行うなど、対策しておきましょう。
セカハラはあってはならないのが大前提ですが、ハラスメントを相談する際には、セカハラ対策をしっかりとっているか、念を押して相談窓口に確認してから行うことを心がけてください。また、セカハラがあったときは迷わずに指摘するようにしましょう。
企業の相談窓口などでセカハラがあるようなら、各都道府県に設置されている労働局や厚労省の労働相談窓口などに相談するといいでしょう。
株式会社日本産業カウンセリングセンター理事長。埼玉大学卒業。教職を経て1976年日本産業カウンセリングセンター設立。企業でのカウンセリングのほか、メンタルヘルスの相談、管理者の対応相談、官公庁・大学などでの講演、研修に従事。労働省(現厚生労働省)セクシュアル・ハラスメント調査研究会委員などを歴任。臨床心理士。
主な著書:『こうして解決する! 職場のパワーハラスメント』経団連出版。『言いにくいことを伝える技術』PHP研究所。『パワハラ・セクハラ・マタハラ相談はこうして話を聴く-こじらせない! 職場のハラスメント対処法』。<改訂増補>『パワハラ・セクハラ・マタハラ相談はこうして話を聴く -こじらせない! 職場のハラスメント対処法』経団連出版。監修:『マンガまるわかり ハラスメント』新星出版社。