東京駅には駅長が二人いる!? 日本の鉄道の“表玄関”に秘められた謎

東京駅
1日に発着する列車、電車は4000本を超え、東海道新幹線をはじめ、地方に向かう列車の多くが起点としている東京駅。赤レンガのレトロな外観がシンボリックな日本の表玄関ともいえる駅だ。誰もが知っていて、一度は利用したことが多い東京駅だが、調べていくといつくもの謎が秘められた駅であることがわかった。

東京駅の駅長は二人いる?

1987年(昭和62年)の国鉄の分割・民営化で、新幹線と在来線が併設されている駅は、ホームなどの施設をその線を管轄している鉄道会社が管理することになった。このため、東京駅構内のほとんどすべての路線はJR東日本の管轄になるが、唯一、東海道新幹線だけはJR東日本の管轄ではないのだ。

東海道新幹線の管轄は「そうだ、京都、行こう」や「シンデレラエクスプレス」などのキャッチフレーズのCMでおなじみのJR東海。このため、JR東海が管轄する東海道新幹線とJR東日本が管轄する東北新幹線が乗り入れている東京駅は、JR東海とJR東日本がそれぞれ駅を区分して持っていることになる。いわば、JR東日本の東京駅とJR東海の東京駅が合体した状態ともいえる。

東京駅構内でJR東海が管理しているのは、線路、ホームとその真下であり、そのほかはJR東日本の管理だ。歩いていると、ついつい見落としてしまいがちだが、ホームなどにある駅の名前を表示している駅名標は、それぞれの会社の様式になっている。駅員の制服も異なるほか、ホームにある売店もJR東日本、JR東海で違ってくる。

そして異なる2つの会社が東京駅を運営しているため、東京駅の責任者もJR東日本、JR東海で当然異なる人が担っている。つまり、東京駅には2人の駅長が存在していることになるのだ。

政府は「東京駅は3つ」と認識

JR東日本とJR東海でそれぞれ東京駅を区分して持っているため、東京駅は2つ存在していることは先ほど説明したとおりだが、3つとカウントされる場合がある。地下鉄丸の内線にも「東京駅」が存在しているが、あくまでこれは地下鉄の話。JRの東京駅だけで3つとカウントされることがあるのだ。

3つとカウントしているのは鉄道行政を管理している国土交通省。同省はJR東京駅を「在来線の駅」、「東海道新幹線の駅」、「東北新幹線の駅」と3つを東京駅としてカウントしている。JR側とカウントの仕方が異なれば、JR側と行政側で混乱しそうなものだが、3つに区分しなければならない理由があるのだ。

新幹線の建設や駅やレールなどの施設の管理は国・政府が大きく関与している。このため、駅をはじめとしたすべての資産を在来線とは切り離して、独立した資産に計上しておく必要があり、このため国土交通省は東京駅を「3つ」としてカウントすることになった。

ただ、こうした状態は新幹線の発着駅だけで、異なる運営会社の在来線が接続している駅では、どちらか一方の会社が管理することが一般的だ。例えば下関駅はJR西日本とJR九州の在来線の接続駅だが、管理をしているのはJR西日本となっている。

遠く離れていても東京駅――京葉線ホームの謎

東京駅が3つあるといわれて、「もしかしたらあのホームのこと?」と思った人もいるかもしれない。乗り換えようとしても、行けども行けどもホームにたどり着かない京葉線のホームである。予定していた電車に乗り遅れて、目的地にたどり着いて、慌てて走ったという経験した人もいるのではないだろうか。

京葉線ホームは地下深くにあり、在来線のホームからは遠く離れている。最も近くて便利とされている新幹線南乗り換え口からでも、歩いて10~15分はかかる。なぜ、京葉線はこんなに不便な場所にホームを作ることになったのだろうか。

そもそも京葉線ホームは、もともと「成田新幹線」のためにつくられたホームである。成田新幹線とは現在は存在していないため、「幻の新幹線」といわれるが、実際には東北新幹線や上越新幹線と同じように計画され、工事まで始まっていた。

完成すれば、東京~成田空港間はわずか30分で結ばれ、途中駅は千葉ニュータウンのみで1日あたり45本が運行される予定だった。日本の昊の玄関口である成田空港から都心部へのアクセスは成田新幹線の登場で格段に向上したはずである。

しかし、成田新幹線計画は頓挫する。途中駅が千葉ニュータウンのみということもあって、沿線住民はほとんど新幹線の恩恵を受けることはない。その一方で、「振動や騒音の被害だけをこうむることになる」と計画への反対世論が高まり、用地買収を進めることができずにいた。

さらに、オイルショックなどの不景気も重なり、1983年(昭和58年)には工事がストップし、国鉄の分割民営化でJRとなる際には、計画そのものが失効してしまった。成田新幹線の東京駅の発着ホームが京葉線のホームとなり、東京駅構内の在来線からあまりにも離れたホームができあがった。

元々は貨物線だった京葉線は旅客営業を開始し、1990年(平成2年)に東京駅に乗り入れることになった。京葉線の路線のうち、東京~越中島あたりは、成田新幹線構想で建設が進められていた地域を活用したもので、京葉線の東京駅ホームももともとは新幹線のためのものだったのである。

東京駅には「ミニ新幹線」も乗り入れ

東京駅発着の新幹線は東海道新幹線、東北新幹線のほか、上越新幹線や北陸新幹線、山形新幹線、秋田新幹線がある。だが、このうちの山形新幹線、秋田新幹線は厳密には新幹線ではなく、「ミニ新幹線」と呼ばれるものだ。

山形新幹線は福島駅まで、秋田新幹線は盛岡駅まで東北新幹線のレールを走り、それぞれの駅で切り離し作業を行う。そして、それぞれが在来線のレールを走ることになるため、正式にはこの2つの新幹線は「在来線」ということになる。

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山形新幹線

そもそも新幹線と在来線では何が異なるのだろうか。

まずはサイズの違いだ。新幹線は在来線車両よりも大きく、東北新幹線の車両と東北新幹線に乗り入れているミニ新幹線を比較すると、ミニ新幹線に比べて東北新幹線のフル規格と呼ばれる車両は4~5メートルほど長く、ミニ新幹線の車両の長さが20~21メートルなのに対して、新幹線の車両は25メートルもある。

軌道幅も在来線が1067ミリなのに対して、新幹線は1435ミリとレール幅が広く、高速走行時の安定性が高い。ただし、山形新幹線、秋田新幹線も軌道幅は新幹線と同じ仕様となっている。

高速走行となる新幹線は線路は直線的となるような配慮がされている。山陽新幹線以降に建設された新幹線は、カーブの半径は4000メートル以上が基本で、在来線は半径が400メートルというカーブも少なくない。緊急停止も高速走行で難しいため、高架などにして踏切が設置さえていないことも特徴だ。

それでも冬になると「乗用車が誤って線路内に侵入、新幹線と衝突」などといったニュースを耳にすることもある。山形新幹線は在来線を利用しているため、カーブや踏切も多い。積雪が多い地域では、降り積もった雪で線路と道路の見分けがつかなくなることもあり、踏切から線路に誤って進入してしまって事故につながってしまうのだ。

新幹線の定義は1970年(昭和45年)に施工された「全国新幹線鉄道整備法」によって「主たる区間を200キロ毎時以上で走行できる幹線」と定義されている。一方でミニ新幹線である山形新幹線、秋田新幹線は踏切があるため、在来線区間内は最高速度を時速130キロに制限されている。

ミニ新幹線は基本的には在来線であり、新幹線と直通運転できるようにレール幅を広げて、車両を開発したものである。こうしたやり方のため、新たに新幹線を建設するよりも建設コストを大幅に抑えられるものの、制限がいろいろ多い方式となっている。

 

PROFILE
櫻田純

1959年東京都出身。子供時代に東海道新幹線開業、蒸気機関車廃止、路面電車廃止など鉄道激変期を経験する。神奈川県立瀬谷高校、学習院大学では鉄道研究会の代表を務める。現在は民間企業の管理部門に勤務する傍ら、趣味で国鉄時代の鉄道車両を模型で再現している。主な著書に『カラー版「乗り鉄」バイブル』(中経出版)、『最新 歴史でひも解く鉄道の謎』(東京書籍)などがある。

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