大手塾に入れておけば中学受験は安心? 失敗しない塾選びのヒント

授業の様子

中学受験で難関校を目指すとすれば、大手進学塾に通うことは不可欠。大手進学塾には、中学受験を勝ち抜くための豊富なカリキュラムがあるからです。でも、そこにもいろいろな特徴があり、大手進学塾に通いさえすれば成績が上がるわけではありません。どうすればわが子に合った塾を見つけることができるのか、これまで5,000組の家庭を見てきた塾ソムリエの西村則康先生に教えてもらいましょう。

SAPIXは体験授業ができない

首都圏の大手進学塾といえば、SAPIX、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミーが四大受験塾として名を連ねています。関西でいえば浜学園、希学園、馬淵教室、能開センターなどが有名ですね。関東、関西の比較的大きな駅の駅前には、これらの大手進学塾が競い合うように教室を設置しています。駅から近く通わせるには便利そうですが、果たしてどこへ入れるべきか悩んだ方も多いでしょう。

でも、多くは「難関校に入れたいからSAPIX」「○○ちゃんが行くというから日能研」といった感じで、それほど深く考えずに決めたのではないでしょうか。四大受験塾をすべて回り、体験授業をしてから決めたという家庭はごく少数だと思われます。

そもそも、SAPIXは入塾前に体験授業を設けていません。入塾前にSAPIXの授業を見たければ、3年生(またはそれ以下の学年)の夏期講習などの特別授業を受講しなければ、その様子を知ることはできません。

もっとも、授業を体験したとしても、塾生活がスムーズなものになるかどうかはわかりません。体験授業だけでは、授業の難易度やスピード、宿題の量などの本当のところはあまりわからないからです。

子どもと塾の学力レベルは合っているか

ひとくちに大手進学塾といっても、その中身はさまざま。御三家をはじめとする難関校に強いSAPIXは、そこを目標にやって来る子どもが多いので、いわゆるできのいい子が集まります。そのため授業の難易度は高く、ハイスピード。成績によるクラス替えも頻繁に行われるため、処理スピードが速くて負けず嫌いな子に向いている塾です。

一方、日能研はSAPIX同様に成績によるクラス分けがあるものの、間口の広い塾です。カリキュラムの進み方が比較的ゆっくりしていること、テスト問題の一部がクラスで異なり、授業レベルに合った問題でテストを受けられることから、大きく落ちこぼれる心配はあまりありません。しかし、上位クラスの方が下位クラスより算数の授業時間が長く、下位クラスから上位クラスに上がっていくことが難しいという特徴があります。

マトリックス

 

マトリックス

二つの代表的な塾を見ただけでも、こんなに中身が違うのです。ところが多くの家庭では、先に挙げたその塾に対するよいイメージや、「仲のよい友だちが行っているから」という安易な動機で入塾してしまいます。

「うちは御三家狙いだからSAPIX」は正しい選択だと言えます。でも、SAPIXに入れば、誰もが御三家に合格できるわけではないのも事実です。いくら3年間在籍したところで、SAPIXの授業についていけなければ最難関校に合格できるわけがないのです。

ここで私が強調しておきたいのは、普段の行動がテキパキしている子とマイペースな子、先取り学習をやってきた子と小学校の進度に合わせてやってきた子、たくましい子と繊細な子、最難関を目指す子とそうでない子では、選ぶ塾が異なるということです。

塾選びで大事なのは、お子さんを主軸に考えることです。中学受験には大手進学塾がおすすめだと言いましたが、その中でどの塾を選ぶかは、お子さんにとってその塾のやり方や環境がマッチしていることが重要です。

中学受験の勉強を始めて約1年が経つと、お子さんと塾の相性がだんだん見えてくるものです。「何がなんでも難関校に入れたい!」と意気込んでいる親御さんは、現時点でお子さんの学力レベルが塾にマッチしていなくても、「これから伸びていくはず」と思いたいものです。

もちろん、そこから大きく伸びて逆転する子も多くいます。そして、これほどハッピーエンドな中学受験はありません。でも、誰でも逆転できるほど中学受験は甘くはないということも冷静に受け入れ、今後どうすべきかを考えるのも大事なことです。

合わなければ転塾・転校という手もある

塾通いが始まって約1年経つ4年生の終わりごろになると、転塾を考える家庭が出てきます。その理由の多くが「うちの子の成績が上がらない」というもの。

大手進学塾は成績上位な子ほど輝ける場所です。塾のカリキュラムはそういう優秀な子を基準に設定されているため、上位クラスで質の高い授業を受けている子は伸び、下位クラスでカリキュラムのすべてを消化しきれない子はいつまで経っても挽回しにくい……。こうした状況がつくり上げられてしまっているというのは、まぎれもない事実です。

しかし、お子さんの成績が伸びないことが塾のシステムだけのせいだと断言することはできません。多くの親御さんは、環境さえ変えればお子さんの成績が上がると思ってしまいがちですが、なぜ成績が上がらないのかを正しく分析できていなければ、どこの塾へ行っても同じことのくり返しです。

その塾でうまくいっていない理由は何か? 先生の教え方が悪いのか? 先生との相性が悪いのか? 単に子どものやる気がないだけか? それとも、家庭学習のやり方に問題があるのか? そもそも基礎学力が身についていないのか?──などを一つひとつ確認し、その原因を突き詰める必要があります。

そのうえで、それを改善してくれる塾を探すべきです。例えば、SAPIXの授業が速くてついていけない子がカリキュラムの進度がゆるやかな塾へ移るのはもっともな判断です。

また、もし先生との相性が悪い、クラスの雰囲気がイヤだというのなら、同じ塾で校舎を変える「転校」というのもひとつの手です。

大手進学塾の中学受験の学習カリキュラムは、小学3年生の2月から入試直前までの3年分が設定されています。そのカリキュラムは塾によって異なり、同じ単元でも4年生の夏休みに習ってしまう塾もあれば、秋以降に習う塾もあります。

そのため、勉強の連続性という面では一つの塾に通い続けることが理想。そういう点からすると、塾のカリキュラム自体は同じなので、転校は受験勉強のリスクが少ないというメリットがあります。

例えばSAPIXは、1学年に6〜10クラス設置されている校舎が多いですが、自由が丘などのターミナル駅にある校舎は、1学年に26クラスもあります。クラスが少ない校舎はクラスごとに学力の幅があり、生徒の学力に差が出やすいというデメリットはありますが、ある程度クラスが固定されるため、そのクラスの雰囲気や先生と相性がいい子は、気持ちよく勉強ができます。

逆に1学年に20以上もクラスがあるようなマンモス校は、1クラスが細かく輪切りにされているため、テストのたびにほんの数点の差でクラスが上下します。このクラス替えをモチベーションにしてがんばれる子ならいいのですが、毎月クラスが替わり、落ち着かないという子には向かないかもしれません。

このように、お子さんの性格と照らし合わせながら、お子さんがどんな環境であれば一番気持ちよく勉強ができるか、よく検討してみてください。

転塾は遅くても5年生の夏までに

もし転塾を考えているのなら、4年生の夏休みから2月までにすることをおすすめします。前述の通り、各塾では学習カリキュラムが異なるため、転塾のタイミングが遅くなればなるほど、とりこぼす単元が出てきてしまうからです。

とはいえ、4年生の段階ではまだ決められないという家庭もあるでしょう。もしかすると、いま成績が低迷しているのはほんの一時のスランプかもしれないし、たまたま今やっている単元が苦手というだけかもしれない―。このような思いがあるからです。

でも、どんなに遅くても5年生の夏までには決断してください。

「SAPIX」「四谷大塚」「早稲田アカデミー」から「日能研」への転塾は、成功の可能性が高いです。日能研のカリキュラムの進度は他の大手塾より最大で半年くらい遅く、例えば算数の「割合」や「比」、「速さ」という最重要な単元が苦手な子が、もう一度学習できるチャンスを得られることがあります。

また、繊細な子が「早稲田アカデミー」から「四谷大塚」に転塾して成功することもあります。使用教材は予習シリーズで共通ですし、カリキュラムの進度もまったく同じ。転塾によるやり残しのリスクがありません。

一方で、教室の雰囲気や講師たちのタイプは大きく異なります。体育会系の雰囲気から穏やかな雰囲気に移ることで、しっくりくる子もいます。逆に、たくましい子が「四谷大塚」から「早稲田アカデミー」に転塾して成功することもあります。体育会系の講師陣の強制力が、その子にとってよい方向に作用したからです。

転塾を検討する際は、必ず本人を転塾先の塾に連れて行き、感想を聞いてみましょう。また、親御さんは候補となる塾のカリキュラムを調べ、習っていない単元があれば、あらかじめ子どもに学習をさせておくなど、新しい塾でスムーズにスタートが切れるようにフォローしておくことも大切です。

 

seishun.jp

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PROFILE
西村則康

30年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から、「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイス。これまで開成中、麻布中、武蔵中、桜蔭中、女子学院中、雙葉中、灘中、洛南高附属中、東大寺学園中などの最難関校に2500人以上を合格させてきた実績を持つ。テレビや教育雑誌、新聞でも積極的に情報発信を行っており、保護者の悩みに誠実に回答する姿勢から熱い支持を集めている。また、中学受験情報サイト『かしこい塾の使い方』は16万人のお母さんが参考にしている。

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