材料を半分に切ると調理時間は4分の1? 科学でわかる料理のコツ

私たちの身の回りでおこるさまざまな現象には、科学のチカラが働いています。普段は見逃しているけど、あらためて考えると不思議なことがたくさん! 学校では教えてくれなかった“科学の小ネタ”を3つご紹介します。

時短で調理するには材料をなるべく小さく切る

ちょっと忙しいときでも、おいしい料理をさっと作れたらいいですよね。そんなときに役立つアイデアがこれ。食材の厚さを半分にすると、調理時間はなんと4分の1になるのです。

例えばカレーを作るとき、じゃがいもやにんじんの大きさは、料理時間を左右する重要なポイントですよね。でもあまりに小さなじゃがいもやにんじんのカレーはちょっと……という方は、ためしに1辺だけ半分に切ってみてください。

いつも3センチ角ぐらいの立方体の大きさでじゃがいもを切っているとしたら、その1辺だけを半分にして、3センチ×3センチ×1.5センチの直方体にするのです。こうすれば、火が通るまでの時間が4分の1に短縮され、見た目には大きな野菜がゴロゴロ入っている、おいしいカレーができ上がります。

なぜかというと、一般に食材に熱が伝わる速さは、食材の厚さの2乗に比例するからです。ですから、ある一辺の厚さを2倍にすると調理時間は4倍、厚さを3倍にすると調理時間は9倍……という関係になっています。

もちろん、火の通りやすさは食材によって違います。食材によって、熱伝導率(熱をどの程度伝えやすいか)や、熱容量(温度を1℃上げるのにどれだけのエネルギーが必要か)がまちまちだからです。

ですから、じゃがいもとキャベツの炒めものを作るときは、じゃがいもをなるべく薄くスライスして最初に炒め、あとからキャベツを加えて手早く仕上げるのがおいしさのコツといえるでしょう。

料理の科学

KEYWORD 食材に熱が伝わる早さ

家庭で焼きいもをおいしく作るコツは?

「いーし焼きいも~、焼きいも」。最近、こうした焼きいも屋さんの声を聞くことは少なくなってきましたが、石で焼いたさつまいもは本当に甘くておいしいんです。

その理由は、石の熱でじっくりじっくり焼くから。

石で焼いたさつまいもが甘くなるのは、さつまいもに含まれているデンプンが、麦芽糖になるからです。その作用をするアミラーゼという酵素(生体の作用を助ける物質)がもっともよく働く温度は60~70℃なのですが、石焼きいもの石は、遠赤外線でその温度を長時間保つことができるのです。

しかも、長時間焼いているうちに水分が蒸発するので、甘さがより濃厚になり、おいしくなります。つまり、石はさつまいものおいしさを引き出す名シェフだったのです。

では、家庭でおいしい焼きいもを作るには、どうしたらいいのでしょう? ポイントは60~70℃を長時間保つこと。いもの大きさやオーブンの機種によって違いますが、そのためには、120~150℃程度に熱したオーブンの下段で、20分ずつを目安に両面を焼いてみましょう。

実は、電子レンジ加熱で甘くなる「クイックスイート」という新品種のさつまいももあります。電子レンジは急激に温度を上げてしまうので、本来焼きいもには向かないのですが、この品種はデンプンを工夫し、幅広い温度で麦芽糖ができるようになっているのだそうです。

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KEYWORD 遠赤外線による長時間加熱

ビールの泡が最後まで消えないようにするには?

お店で飲むクリーミーな泡立ちのビールは、とてもおいしいですよね。この泡、ビールに溶けている二酸化炭素が主な成分です。

さらに、ビールにはタンパク質が含まれています。タンパク質を構成するアミノ酸は、水とくっつきたい部分(親水性)と水とくっつきたくない部分(疎水性)があります。

これは石けんととてもよく似た特性で、かき混ぜると安定した泡を作ります。卵白や生クリームもホイップして空気を含ませることで泡立ちます。タンパク質は一般的に、このような性質があるのです。

ビール

ビールの場合、初めに述べたように二酸化炭素を含んでいますので、グラスに勢いよくビールを注ぐだけで、きめの細かい泡を作ることができるというわけです。

問題は、これをいかに消さないでおくかということ。ビールをよく見ると、グラスの壁から気泡が一直線にボコボコと上がっていることがあります。

この気泡は、炭酸飲料といわれて私たちがまずイメージする発泡ですが、実は先ほどのきめ細かな泡に衝突して、泡のもちを悪くする原因となります。

これはビールに溶けている二酸化炭素が、グラスのキズや汚れのある場所で液体から気体に気化しているのです。

したがって、キズのないグラスを中性洗剤でよく洗って、ホコリがつかないように自然乾燥させておくというのも大事なことです。

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KEYWORD 二酸化炭素の気化

 

 
PROFILE
瀧澤美奈子[監修]

社会の未来と関係の深いさまざまな科学について、著作活動等を行う。2005年4月、有人潜水調査船「しんかい6500」に乗船。著作に『日本の深海』(講談社ブルーバックス)、『地球温暖化後の社会』(文春新書)、『アストロバイオロジーとは何か』(ソフトバンク)など。内閣府審議会委員。文部科学省科学技術学術審議会臨時委員。慶應義塾大学大学院非常勤講師。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。

身近な疑問がスッキリわかる理系の知識

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