すべての人間関係に通じる「子どもの叱り方とほめ方」のコツ

叱られる子ども

親が子どもを叱るときはどうしても長くなりがち。しかも、なかなか相手に叱っている内容が伝わっていないと感じると、話がどんどん長くなって繰り返し同じことを話してしまう……。こんなこと、ありませんか? 問題を抱えた子どもを多数救い出してきた「土井ホーム」の土井髙德先生に、叱り方とほめ方のコツをうかがいました。

叱るときは3分以内

子どもを叱るとき、ひとつのことを話しているつもりが、どんどん過去にさかのぼって、過去のことまでさかのぼって長々と叱ってしまう―。

これはやめたほうがいい。私は、叱るのはだいたい3分以内と決めています。

これは、叱られた相手に「これ以上傷つきたくない」という自己防衛本能が必ず働くからです。その結果、その場から逃げようとしたり、それができないとイライラしたりします。極端な場合は暴れたり、「解離」といって、心のスイッチを切ってしまったりするのです。

これでは叱っても無駄です。

ただ、どんな問題児でも、心に力がない子どもでも、カップ麺ができあがる時間くらいはどうにか待つことができます。

そこで、幼稚園児でも、思春期の子どもでも、あるいは相手が大人でも、なにかを叱るときの時間は「3分以内」が原則、と考えておけばいいでしょう。

叱ったときにもほめて終わる

3分間で叱るためのもうひとつの原則は、「シングルイシュー(ひとつのテーマ)」で話すということです。

「前にも同じことをしたじゃないか、あんなこともしたじゃないか、こんなこともしたじゃないか。2年前にはあれをした、3年前にもこれをした、何度言ったらわかるんだ」などと、どんどん話が広がっていってしまうと、まったく伝わりません。

叱る内容を広げてしまうと親のほうも感情的になり、感情的になればなるほど話は長くなっていきます。絵に描いたような悪循環で、子どもに本来伝えたい内容は伝わらず、親は叱ったことでさらにストレスがたまってしまいます。

わかっちゃいるけどつい、という親の気持ちはよくわかりますが、「ひとつのことに絞って話す」ということがとても大事です。

そして子どもを叱るときに一番大事なのは、「最後はほめて終わる」ということ。

叱る立場としては「わかったわね」「もう二度としないこと!」で締めたくなるでしょう。

しかし、「最後まで聞けてえらかったね」「今日は姿勢がよかったね」などと、とにかくなにかをほめて終わりにすることです。

叱り続けて終わるよりはずっといい。かえって、子どもに叱った内容が届きやすくなります。

効果的に叱るために普段はほめておく

叱るためには、実はほめることが大事です。

前項で「最後はほめて終わろう」と書きましたが、これは叱るときだけのことではなく、日常的なバランスがとても大切になります。

「悪いことをしたら叱る」「いいことをしたらほめる」という当たり前のことです。「いいこと」を「当たり前のこと」としてまったくほめないでいると、口を開けば「叱りモード」になってしまい、子どもはいつも親に叱られているような気持ちになってしまいます。

日本人は、叱るのもほめるのもあまり上手でない人が多いようですが、まず叱り方で悩む前に、「ほめる回数」を増やしてみてください。

子どもというのは基本的に、とにかく親の関心を引きたい。親に自分のほうを向いてほしい、見てほしいものです。そして最大の願いは、親にほめてもらうことです。どんな子どもでも、子どもにとっての最大のごほうびは「親にほめてもらう」「認めてもらう」こと。そのごほうびがあって初めて、健全に育っていきます。

「叱られ慣れている子は打たれ強い」と考えるのは大きな間違いです。叱られ続けている子は、スイッチを切ってしまう方法を覚えるだけです。すると自尊感情が低くなり、自分を大事にできなくなってしまいます。

ほめられているからこそ、叱られたときも、そのときはふてくされることがあっても、相手の言ったことを受け入れることができるのです。

叱る必要ももちろんあるでしょうが、普段たくさんほめていてこそ、叱る効果もあるということです。

「しっかりほめて、軽く叱る」
これが最も効果的なのです。

「してほしくない行動」は無視してしまう

どんなときに子どもを叱ればいいのか、どういう行為はほうっておいていいのか。判断がつかない人は、子どもの行為を大きく3つに分けて考えましょう。

すごく簡単です。

1. してほしい行為
2. してほしくない行為
3. 許しがたい行為

この3つに分けて対応を決めておくのです。対応の基本は以下の通りです。

1の「してほしい行動」だった場合は、すかさずほめる
2の「してほしくない行動」については無視する
3の他人や自分を傷つける「許しがたい行動」は制止する

2番目は意外かもしれません。ただ、ペット、特にネコを飼っている方はわかるかもしれません。

子どもをネコにたとえるわけではありませんが、彼らは、注意を引きたいのです。そのため、敢えて「してほしくない行動」をすることがあります。

そして、「してほしくない行動」をしたときに反応すると、注意を引くためには、「してほしくない行動」をすればよいと学習してしまいます。

そこで無視です。

子どもが親の関心を引きたくて大騒ぎしたり、わがままを言い続けたりしている場合は、知らん顔をして無視しましょう。

そうすれば、そんなことをしても無駄だと学習するので、彼らは、「してほしくない行動」に走ることもなくなります。

「許しがたい」というほどの行為でなければ、なるべく叱らずに無視し、むしろ「してほしい行為」を探しましょう。どんなに小さいことでもいいのです。

親が気持ちをコントロールするテクニック

「どうしても叱るとき感情的になってしまう」という方はたくさんいます。感情的に子どもを叱ったことはないという親など、ひとりもいないのではないでしょうか。でも、やっぱり感情的に叱るのはなるべく避けたほうがいいです。

叱ることと怒ることは違います。

理性的に叱ることは、未来に向かった行為です。しかし、感情的に叱る(=怒る)というのは、過去にとらわれた行為です。子どものためを思うなら、できるだけ子どもの立場に立って、怒りの感情を制御するようにしてください。

感情が整理できない、コントロールできない状態になっているような子どもに対応するとき、親も一緒になって感情を爆発させてしまうと、子どもが子どもを叱っているような状態になります。

子どもにしてみれば、「わめくなって言うけど、わめいているのはそっちじゃないか」と感じてしまいます。

感情的に怒ってしまうというときのために、「自己教示法」という気持ちを落ち着かせるテクニックを知っておきましょう。

それは、次のような言葉を、実際に口に出して繰り返し言ってみることです。

「私は感情をコントロールできる」
「怒るのではなく、理性的に叱ることができる」
「私はこの子のことをすごく大事に思っている」
「穏やかに話して言い聞かせることができる」
「わかりやすい言葉で話しかけることができる」

考えているだけではなく、言葉にして口に出すことで認知が深くなります。「わかっちゃいるけどできない」ことが、できるようになるのです。

 

 

PROFILE
土井髙徳

1954年福岡県北九州市生まれ。土井ホーム代表。学術博士。北九州市立大学大学院非常勤講師、福岡県青少年育成課講師、京都府家庭支援総合センターアドバイザー、産業医科大学治験審査委員会委員。ソロプチミスト日本財団から社会ボランティア賞、福岡キワニスクラブから第24回キワニス社会公益賞を受賞。

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