自分を動かしたいときは、「気分と視座」を変えるとうまくいく

悪循環を断ち切るには「気分を切り替える」ことが大切

前回の記事で、人生を変えるには「手放す」ことが重要だとお伝えしました。

頭では理解できるものの、どうしても手放せないという方もいることでしょう。そのような方でも実は、気分と視座を変えるだけで、意外なほど簡単に「手放す」ことができます。

「仕事を抱えすぎている状態」を続けていくと、慌ただしく、いつも焦っていて、呼吸が浅く、注意が分散していて、あれもこれも気になります。一つの仕事を終えても、終わったことを味わう暇もなく次の仕事に手をつけて、心が落ち着かない、そんな状態になります。

この状態が続くと、気分が晴れずに、何も行動したくないという気分が醸成されていきます。それが固定化されると、今度は、気分が「仕事を抱えすぎる状態」を招くようになります。悪循環の始まりです。

悪循環を断ち切るためには、気分を切り替えることが大事です。拙著『結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる』では、気分を切り替える5原則を紹介しました。

1.気分は変えられる、と知る
2.感情表現の3要素(表情・動作・言葉)を変えれば気分は変えられる
3.思い出すだけで気分は変えられる
4.思い描くだけで気分は変えられる
5.環境を変えるだけで気分は変えられる

気分は能動的に切り替えられるし、自ら選択できるものなのです。

気分を変えることで「仕事を抱えすぎている状態」を抜け出してください。手放すことができたら、後は意識の集中状態をつくればよいのです。これも「気分を切り替えるための5原則」を応用すれば簡単です。

「集中した状態」を思い出そう

これから取り組む課題に集中するにあたり、まず「思い出すだけで気分を変えられる」という原則を使ってみましょう。

これまでの人生で、何かに没頭し、集中できたときのことを思い出してみてください。集中したことが一度もないという人はいないはずです。

子供の頃、学生時代、社会人になってからなど、いつの時代のことでも構いません。一心不乱に取り組んだときのことです。それがほんの数分のことであっても、数時間におよぶ集中状態であっても構いません。

一つでもそういった体験を思い出せたら、そのときの風景をより具体的に思い出してください。あなたはどこにいて、誰と一緒だったのか、そのときにどんな音が聞こえていたのか。また、頭の中でどんな言葉が流れていたのか。詳しく思い出してみてください。

その上で、そのとき、体はどんな感覚を持っていたのか呼び起こして味わってみてください。味わいきったら、その感覚を一言のフレーズで表現してみましょう。

「がむしゃらに没頭した体験」
「時間が止まったような静寂の中、集中できた体験」
「全速力で駆け抜けた体験」

など、ご自身がその体験を思い出すのにふさわしい表現を選んでください。

その体験を表すフレーズが決まったら、そのフレーズを唱えながらその体験を思い出してみてください。簡単に、集中モードに入ることができます。

理想的な集中状態を思い描く方法

また、「思い描くだけでも気分は変えられる」という原則を使った、別の方法もあります。

これから取り組む課題が完了した後の光景を思い浮かべてください。どんな状態で完了できたら最高な気分を味わえるでしょうか。心から嬉しくて喜ばしい状態を想像してみてください。

そのときに周囲の見えるもの、聞こえるものを十分に感じ取り、さらに体に呼び起こされる感覚を味わいきったら、その体験を表すフレーズを考えてください。

そのフレーズと課題完了後の感覚がすぐに思い描けるようになったら、そのために必要な集中状態はどんなものかイメージしましょう。たとえば、

・勢いよく取り組んでいる状態
・静かに集中している状態
・軽々と力みがなく、澄み切った水が流れるような状態

などです。

自分にとって必要な集中状態がイメージできたら、さらに、その集中状態になっている自分を想像してください。

そして、その課題に取り組んでいるところを想像し、まさにそのように集中している自分の状態を今まさに体験しているかのように味わってみてください。

十分に味わいきったところで、その状態を表すフレーズを決めます。

フレーズが決まったら、そのフレーズを口ずさみながら、その望ましい集中状態を全身で感じ取り、課題に取り組み始めてみてください。

このようにすると、いまだかつて体験したことのない集中状態も、すぐに出現させることができます。

他人の集中を真似しよう

もしも、身の回りに理想となるような集中状態を体現している人がいれば、「気分は伝えられる」という原則を応用して、その集中状態を取り入れることができます。

まず、これから取り組む課題に必要な集中状態をイメージしてみてください。

そして、そのイメージから連想される、すごい集中を発揮する人をイメージするのです。よくその状態で仕事をしたり、何かに取り組んだりしている人がいるのではないでしょうか。

先輩や上司や後輩の中にいるかもしれませんし、プロスポーツ選手や歴史上の人物かもしれません。実在か架空かは関係なく、あなたにとって、まさにその集中状態を体現している人を見つけるのです。

そういった人物を見つけられたら、その人物の特徴をよく思い出してみます。

顔つきや姿勢、動作、言葉遣い、身のこなし……など、細部まで思い浮かべて、自分がその人になりきってください。想像力を十分に働かせて、モノマネをする要領で憑依させてください。

その人になりきってみると、その意識状態が生まれていることにも気づくでしょう。ご自身が積極的に他人の意識状態を取り込む方法です。

「感情表現の3要素」を使うことで、集中状態に入りやすくなる

集中状態をいつでもどこでも簡単に出現させるためには、集中状態を呼び起こす「感情表現の3要素」、つまり「表情と動作と言葉」をセットにして覚えておくと便利です。

集中していたときの表情と、そのときの姿勢や動作、そしてその気分を表す言葉を、見つけておくのです。たとえば、目をしっかりと見開き真剣な表情をして、姿勢を正して、「やってやる」と心の中でつぶやきます。

これが「感情表現の3要素セット」です。表情と動作と言葉のセットを再現することで、一瞬にしてその集中状態をつくることができます。

特に、顔の表情筋は感情と直結しているので、顔の表情を一つ変えただけで、一気に集中モードに入ることができます。

急にやる気になった人のことを「顔つきが変わった」というのは、まさに意識の状態が変わったことによって、表情が変わったことを指しています。逆に顔つきを変えることで意識を変えるわけです。

また、「視座の転換」によって状況を打開するという方法もあります。自分の視座に固執してしまうと、視野が限定されてしまい、自分に有利な情報をつかめなくなったり、他人と協働関係が築けなくなってしまったりします。

それを回避するために、他人の視座に立って物事を見るのです。

お客様の立場、他部門の立場、上司の立場など、それぞれ視座が異なっています。異なる視座から見える風景や意味合いを味わっていくうちに、硬直した現状がゆるんでいき、新しい世界が見えてきます。すると、不思議と解決策が見つかるようになるのです。

「抱えすぎている状態」も、自分以外の人の視座から眺めてみると、意外と簡単なほど脱出の道が見えてきます。

どうしても手放せないなら「体を動かしてから黙想」を

ほかにも、気分と視座を変えるために有効な方法があります。

「手放す」ためには、気分を切り替えて、気掛かりのない、ニュートラルな状態をつくらなければなりません。何かにとらわれているというのは、意識の状態です。

しかし、意識を直接操作することはできないので、体を動かして、間接的に意識の状態や気分を切り替えていきます。

たとえばウォーキングやジョギングなどの単純な動作で、軽く汗をかくくらいの運動があります。これらを数分間継続してみると、簡単に気分は切り替わります。

その上で、その動作を止めて、リラックスできる姿勢で深呼吸をしてみましょう。とくに何も思い浮かばない数秒間、数十秒間という時間が訪れます。この時間がまさに「手放している状態」です。

多くの武道では、稽古に入る前と稽古を終えるときに「黙想」をする習慣があります。「黙想」は気分を切り替え、あらゆるものを手放す稽古になっています。

武道でなくても、エアロビやジムの筋トレ、あるいはストレッチなどでも、一連の動作やワークが終了したときに、ひととき目を閉じて黙想すると、心を整えることができます。運動の後に目を閉じて呼吸を整えながら、ニュートラルな意識状態になれます。

黙想だけを行うよりも、体を動かしたほうが、悩みや堂々巡りを手放せます。運動中には日頃の仕事を忘れられて、その後で黙想をすれば、より気分がニュートラルになり、手放した意識状態が生まれます。

体を動かせないときは「声を使った方法」をやってみよう

運動が苦手で「体を動かしてから黙想」というのが楽しくない方は「声を使った方法」を試してみてください。

深呼吸をしながら、息を吐くときに声帯を震わせて声を出します。「アー」とか「ウー」とか「オー」とか主に母音を長く伸ばして声に出してください。呼吸に合わせて声を出すことを数分間楽しんでみてください。

発声することに集中・没頭し、楽しむことが大切です。

その後に発声をやめて、深呼吸しながら黙想してみましょう。何も思い浮かべないで、呼吸に意識を合わせます。何かを思い出したとしても、思い出すままに任せ、一つひとつの記憶にこだわらず、呼吸を意識します。

また、母音を発音するだけでなく、短めの章句や一まとまりの文章を何度も繰り返し発声しても構いません。

ある瞑想指導者は、その日の新聞をぱっと開いて、無作為に指さしたところの言葉を繰り返し唱える瞑想を実践しているそうです。その指導者は、意味のある言葉を唱えるのも、意味がわからないお経をひたすら読むのも、瞑想の効果としては変わらないという立場をとっていました。

声を出し、呼吸に意識を向けて、あらゆる雑念を手放してください。

 

seishun.jp

 

seishun.jp

 

PROFILE
藤由達藏

株式会社Gonmatus代表取締役。夢実現応援家®。 「人には無限の可能性がある」をモットーに、作家・シンガーソングライターから経営者・起業家・ビジネスパーソン、学生・親子まで幅広い層を対象に、対面コーチングや研修、ワークショップなどを提供している。 各種心理技法や武術、瞑想法、労働組合活動、文芸・美術・音楽創作等の経験を統合し、「気分と視座の転換」を重視した独自の「夢実現応援対話技法®」を確立。ユーモアを交えながら熱く語るスタイルが親しみやすくわかりやすいとの定評を得ている。 初の著書でベストセラーとなった『結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる』(小社刊)は文庫化され、ますます読者を広げている。