「反省文」は無意味? 子どもの成長につながる叱り方・ほめ方とは

甘やかしてはいけないと思うあまり、子どもについ感情的に対応してしまうことはありませんか。あるいは、ほめることが苦手という方も少なくないでしょう。叱ること、ほめることは子育ての基本とはいえ、なかなか難しいものです。25年間「保健室の先生」を務め、現在は養護教諭向けに“保健室コーチング”を行う桑原朱美氏にお話を伺いました。

反省が好きな日本人

私は、小中学生への講演で「反省は一瞬で終わり! しまったと思った瞬間に反省は終わっているから」と伝えています。「長くても10秒でいいよ」とも言います。

日本人は反省が好きです。しかし、反省と後悔や懺悔ざんげとの区別をつけていないように感じます。大人が子どもに「反省しなさい」と言うとき、そこには、「後悔しなさい」「罪悪感を持ちなさい」「懺悔の気持ちを持ちなさい」というニュアンスが含まれます。

そのせいなのか、子どもの態度に、落ち込んだり、後悔したような様子がないと「反省していない」ととらえ、さらに叱責することもあります。

また、いまだに、「反省文」なるものを書かせている学校もあります。反省文を書かせると本当に次から、問題を起こさなくなるのでしょうか?

その成果があるとは、あまり耳にしません。多くの学校で行われている反省文は、「罰」としての性質を持ち、書かせる側の自己満足である場合も少なくありません。この子はここまで反省したという自分の指導の成果物としてとらえる教師すらいます。

しかし、問題を起こす生徒は、いくら反省文を書かせても、何度も問題を繰り返したりします。

それどころか、反省文にどんなフレーズを書けば、先生が喜ぶのかも知っていて、上手に反省しているように見せかけることもあります。生徒のほうが一枚も二枚も上手だったということもあります。

では、反省が「後悔や懺悔や罪悪感」ではないとしたら、なんでしょうか?

私は、児童・生徒向けの講演で、次のように伝えています。

本当の反省とは、その経験を学びに変え、自分の未来に生かすためにどうするか? を考えるためのもの

ただ、それをしようとすると、時間がかかるのです。くどくどと一方的に叱責したり、反省文を書かせるほうが楽なのです。

自分の行動を冷静に振り返るための対応をする

では、実際に、どのようにかかわれば、子どもたちは、経験を次に生かすことができるのでしょう?

その方法は、その子の状況に合わせて柔軟に変えていく必要があります。ここでは、基本的な考え方と方法をお伝えします。

スタンスとしては、「自分が悪かったんだと、わからせてやる」という気持ちは、捨ててください

「ぼくが悪うございました」とか、「もう二度としません!」と言わせることが目的ではありません。頭でわかっていても、自分の行動パターンを客観的に認識できないうちは、何度でも同じことをします。

大切なのは、大人は子どもの気持ちに寄り添いつつも、冷静に、「問題をチャンスに変えるためのことばがけ」をしてあげることです。これを地道に繰り返すことで、子どもは、少しずつ自分のマイナスパターンの認識ができるようになります。

問題を起こしたときなど、子どもは感情が高ぶっていたり、頭の中が混乱しています。一つひとつ、丁寧に、彼らの話に耳を傾けることが必要です。だからといって、ただ、話をさせるだけでなく、頭の中で考えていることや感情を、整理してあげることが必要です。

保護者向けの講座では、子どもの話を「事実・感情・感情の理由・反応・行動・選択」の6つに分けて聴いてあげてくださいと、お伝えしています。ぜひ、やってみてください。

事実 実際にあったこと、見たこと、聞いたことは何ですか?

 

感情 そのときにどんな気持ちになったのでしょう

 

感情の理由 どうしてそんな気持ちになったのでしょう

 

反応 その気持ちになり、どんな反応(行動)をしましたか?

 

反応の結果 その結果どうなりましたか?

 

本当の気持ち 本当はこうしたかったのにということは何かありますか?

 

選択 次に同じような状況になったとき、今回とは違う方法をするとしたら、どんなことができますか? またどんなことをやめますか?

子どもの話を聴いてあげるときは、大人の意見は挟まずに、丁寧に聴いてあげてください。大人のほうが反応し、「それは違う」などのジャッジをするのはやめましょう。

大人は、いったん自分の価値観をわきに置いて、子どものことばに耳を傾けましょう。

子どもは、そのときは理解したようでも、また同じパターンを繰り返してしまうことがあります。

それでも、毎回、根気よく話を聴いてあげてください。徐々に、子ども自身も、自分のパターンに気づくことができるようになります(このことばを言われると腹が立つんだ、こういう状況になると悲しくなるんだ、など)。

無意識でやっていたことに気が付くようになると、少しずつそのパターンをコントロールすることができるようになります。意識できて(気づいて)初めてコントロール可能になるのです。

反省文は「書いておきなさい」で、終わりですが、こちらは時間と根気と信頼関係が必要です。腹をくくって子どもと向き合う必要があります。

子どもたちは何を一番承認してほしいのか

一方、子どもへのほめ方ですが、一言で「ほめる」と言っても、評価と承認は違います。私は“保健室コーチング”で、次のようにお伝えしています。

評価 意見や主観、価値判断が入ったフィードバック。「評価する⇔評価される」という上下関係が存在する。物差し(評価基準)がほめる側にある。

 

承認 具体的事実が盛り込まれている。相手への深い観察から出てくる。物差しを手放したフィードバック。相手に表れている違いや変化、成果や成長に気づき、それをことばにして率直に伝える。

 成績を付けるときには、評価基準があります。自分の状態を客観的な指標として用いる場合には、評価も必要となります。本書では「ほめる」を、評価ではなく承認の意味で、お伝えします。

承認は相手をしっかりと観察して、その変化を見極めなければ、ことばにすることができません。自分の物差しで測った場合には、評価となってしまいます。

何がどう違うのかわからないという方のために、例えば、次のような視点で子どもたちを観察してあげてください。

具体的にどこをほめるかですが、日常的には、「能力」や「行動」がほめられることが多いと思います。悪いことではないですが、子どもたちの中には、能力ばかりをほめられると、その能力が自分の価値だと勘違いしてしまい、それが生きづらさにつながることもあります。

「●●が人より勝っている自分がすごいのだ」と考えるようになると、その分野で「自分より、能力が高い人」が現れたり、何らかの事情でその分野での能力発揮が不可能になったとき、自分の価値そのものがなくなったように感じてしまうのです。

自分の価値を失わないために、頑張って頑張ってその能力を維持しようとして、息切れしてしまうこともあります。

また、何かの行動をしたときだけほめられたとしたら、その行動をやり続けられない自分は価値がないと信じ、その行動を必死にやり続ける子もいます。

自分が持っているものや環境が素晴らしいから、自分は価値があるのだと思っていたとしたら、ずっと自分の周りを素晴らしいもので固め続けなければならないのかもしれません。

もしもそれがなくなってしまったら、自分は価値のない人間だと思ってしまうかもしれません。

大人は全くそんなつもりはないのですが、子どもたちには大切なことが伝わっていないなぁと保健室にいて感じていました。

子どもたちは、ここに存在していること自体を承認してもらいたいのです。

自分を認められるようになるには、身近な大人のかかわり方が大事

「おれ、生まれてこなければよかったんだ」と、つぶやいた中学生がいました。

彼らが一番言ってほしかったのは、「ここにいていいよ、存在していいよ」というメッセージだったのだと思います。ここにいてもいい、存在してもいい、自分が存在することで、ほかの人が幸せになっている……もしもそんな承認がされたとしたら、子どもたちは、本当に強く生きることができるのです。

私は子どもたちに、「誰が何と言っても、あなたがあなたとして、今ここに存在していることをもっともっと自分で認めてあげてほしい」と伝えています。

子どもたちがそう思えるためには、身近にいる大人のかかわり方が絶対に必要です。

私の師匠である山崎啓支さんが、いつもおっしゃっていたことばをご紹介します。

あなたが、どんな環境に在ろうが(環境レベル)
どんな行動をしようが(行動レベル)
どんな能力であろうが(能力レベル)
どんな考えを持っていて何を信じていようが(価値観レベル)
あなたがあなたとしてここにいることが素晴らしい。(人格レベル・自己認識)

子どもたちにも、大人にも、送りたいメッセージです。

 

seishun.jp

 

PROFILE
桑原朱美

NLP教育コンサルタント。株式会社ハートマッスルトレーニングジム代表。主体的人生を構築する人材育成トレーナー。島根県生まれ。愛知教育大学卒業。教育困難校等の保健室の先生として25年間勤務。全国1000以上の学校現場で採用されているオリジナル教材や、「保健室コーチング」など独自のメソッドで研修、講演会などで活躍中。「主体的人生を構築する人材育成トレーナー」とも呼ばれる。『保健室コーチングに学ぶ! 養護教諭の「現場力」』(明治図書出版)ほか、新聞、テレビなどへの執筆、出演多数。
本書は、保健室コーチングの事例をベースに教員や親など子どもに関わる全ての大人たちに向けた一冊である。

 

保健室から見える親が知らない子どもたち

保健室から見える親が知らない子どもたち

  • 作者:桑原 朱美
  • 発売日: 2021/02/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)