たった一言で「自分で考え、動く部下」に変わる!“すごい質問”とは

厳しめに話すと「パワハラだ」と言われ、ソフトな言い回しでは何も伝わらず…。部下との関わり方が難しい時代になっています。しかし、元リクルートのビジネスコンサルタント・大塚寿氏によると、「質問スタイルで部下は伸びる」のだそうです。では具体的に、どのような質問がよいのでしょうか? 部下の問題行動別に教えていただきました。

いい質問をされると、思考回路が回り始める

パワハラが厳しく問われる時代でも、部下が叱られ慣れていなくても、下に慕われている人がいます。「あの人、なんか、言い方うまいよね」と、評される人です。

逆に、いわゆる「プレーヤーとしては優秀だったけど、マネジャーとしては成果を出せなかった人(部下を育てられなかった人)」と評される人もいます。

同じ時代、環境の中にいるのに、両者の違いはいったい何なのでしょう?

「誰からも慕われる人柄の持ち主だ」とか、「キツいことを言っていても、なぜか憎めないキャラクターだ」といったことではありません。

「言い方」を知っているか否かです。具体的には、言葉のかけ方を「質問」にするのがポイントです。

私たちは、いい質問をされると脊髄せきずい反射のように思考回路が回り始めます。「考えるな」と言われても考えたくなり、動き出したくなります。

この特性を、部下育成に利用しない手はありません。

令和の部下育成、マネジメントで成果を上げている人が多用しているのは、〝質問スタイルの言葉がけ〟だったのです。

単なる「言い方」の問題なので、知っていれば誰でもできるスキルです。

そこで、ビジネスシーンでの育成場面別に、「できる人ほどつい出ちゃう残念な言い方と、その理由」「『自分で考え、動く』を引き出す言い方(『すごい質問』を使った言葉のかけ方)」を、紹介していきます。

必要に応じてアレンジしていただければ、これまで物足りなかった新人や部下が、自分で主体的に考えて動くようになるのを、そう日を置かずに目にすることができると思います。

もちろん、既に優秀な部下も、よりモチベーションを高めて上司を支えてくれるようになるでしょう。

あなた自身が「部下への言い方がうまい人」と噂されるようになれば嬉しいです。

「話しかけないでオーラ」を漂わせていませんか?

できる人ほどつい出ちゃう残念な言い方

 

「〇〇さん、ホウレンソウしてくれないと、〇〇さんが何やってるか全く分からないよ。なんかあったとき責任とれんの?」

 

ココがアブない!】苦言にしか聞こえない。責任を取るのは上司なので……。

「報・連・相」は「報告・連絡・相談」の略称で、仕事の基本中の基本として広く知られていますが、部下や後輩からの報告、連絡を前提としているという欠点があります。

というのは、上司や先輩が忙殺されている時、「私に話しかけないでオーラ」が漂っていて、とても「ちょっといいですか〜」とは話しかけられないという事情もあるのです。

気の小さい部下、心配性の後輩などは、報告や連絡のタイミングを逸してしまったり、報告や連絡をするのを躊躇ちゅうちょしたりして、ついには能動的な報告すらしなくなってしまいます。

問題は、そういう雰囲気をつくりだしてしまった上司や先輩の側にあります。

一方、そういった背景があるわけではないのに、報告、連絡に消極的な人もいます。

その理由も、上司から根ほり葉ほり聞かれたくない、ネガティブな報告をして叱られたくないといったことから、「報告をするのが単に面倒」というものまであります。

そうした双方の場面で効果があるのは、

「何かある?」

と、上司、先輩の方から報告や連絡を促す方法です。

報告を促したうえで、その報告に対し「それで〇〇さんは、どう思う?」と問えば、自然な流れで部下の発言まで促されるわけです。

この方法は特に上司、メンバー全員が仕事に忙殺されていて、皆の気持ちに余裕がない時に威力を発揮します

忙しい時ほど「報・連・相」や情報共有が疎かになってミスやトラブルが多くなりますから、特にテンパっていそうに見える人、しんどそうな人には上司の方から「何かある?」と部下の発言を求めるコミュニケーションを促すべきなのです。

そうすることによって、スケジュールの遅延、トラブルの報告、そのことに対する本人の意見を聞けることになります。ミスや障害を未然に防いだり、障害の規模を最小限にとどめたりすることが可能になるのです。

さらに、「何かある? 今なら5分くらい聞けるけど」と、「今なら5分くらい聞けるけど」と付け足すと、5分ですむように端的なコミュニケーションに努めてくれるので、効率的な対話になります。整理されたコミュニケーションにすることを目的に、あえて「5分」と区切っているのです。

《「自分で考え、動く」を引き出す言い方》

 

何かある?
何かある? 今なら5分くらい聞けるけど

「報告、連絡」がないなら上司から促そう

さて、「報・連・相」のうち、相談はともかくとして、報告と連絡は、本来組織の人間としてしなければならない義務といってもいいでしょう。

しかし、頭では義務と分かっていても、30年前も報告や連絡を怠る部下は珍しくはありませんでしたし、自分の意見を言わない部下も大勢いました。

昨今は、その数もウエイトも増加傾向にあるのも事実です。

特にマイナス情報はできるだけ早い報告や連絡を受けたいものですが、その意に反して、時すでに遅しというパターンが後を絶ちません。

そうした環境であればこそ、上司の方から報告と連絡を促す「攻めの報・連・相」をぜひとも試して欲しいと思います。

「〇〇さん、△△△の件、どうなってる?」

と、具体的な報告を上司の側から求め、さらにその報告から得られた情報に基づいて、

「△△△の追加分を予算内に収めるための方法について、〇〇さんの意見は?」

といった感じで。

意見を求める際、意見はあるのに伝えてこない部下に関しては、総論で尋ねると一般論的な返答になってしまう危険性があるので、さらに突っ込んだ各論で訊くのがミソです。

ただしいきなり各論からでは、部下が返答に窮してしまうかもしれないので、いったん総論的な質問を振ってから、各論に落とすという方法が好ましいかもしれません

さらには日常的に、

「△△△の件、〇〇さんはどう思ってる?」
「△△△について、〇〇さんの意見はどんな感じ?」

と、発言を促す「攻めの質問」を習慣づけておくと、チーム内に、意見を出さざるを得ない雰囲気が漂い始めます。「攻めの報・連・相」の亜流といってもよいでしょう。

その返答が「ええ、まあ、特に……(ありません)」的なものにならないように、上司に振られたら必ず自分の明確な意見を言わなければならないというルールを、あらかじめ伝えておくという手もあります。

「3秒ルール」といって、「上司や先輩からの問いかけについては、必ず3秒以内に自分の意見を言わなければならない」というルールを徹底している会社を、私は知っています。

不思議なもので、その会社の社員の頭の回転は速く非常にクレバーですので、やはり効果があるに違いありません。

《「自分で考え、動く」を引き出す言い方》

 

〇〇さん、△△△の件、どうなってる?
△△△の件、〇〇さんはどう思ってる?
△△△について、〇〇さんの意見はどんな感じ?

自分で考えず、なんでも聞いてくる部下への言葉

できる人ほどつい出ちゃう残念な言い方

 

「少しは自分で考えたら?」

 

ココがアブない!】こう言われた相手は、まず「突き放された」と感じてしまう

右も左も分からない部下・後輩が、「なんでも聞いてくる」のは歓迎すべきことですし、会社によっては育成期間の新人に「1日5つの質問」を義務づけている例すらあります。

義務づけしてしまえば、「忙しくしている先輩に聞きづらい」という状況を、ある程度防ぐことができるからです。

しかし、ここで問題にしたいのは「自分で考えず」の部分です。特に、物心ついた時代からスマホが手元にあって、検索するだけで知りたい情報が簡単に手に入る時代に育った部下や若手社員には、「自分の頭で考える」ことに慣れていない人も散見されます。

これは今に始まったことではありませんし、30代、40代になっても「自分の頭で考えない」人もいますが、未来のある部下には「自分の頭で考える」ことを常識として持っておいて欲しいわけです。

もっというと、昨今の現象として、自分で調べれば分かること、自分で考えて欲しいことを、繰り返し何度も聞いてくる部下や後輩が増えていると指摘されています。

問題は同じようなこと、前にしっかり指導したり説明したことを、再び、初めてのことのように聞いてくるということです。

昭和の時代であれば、「同じことを何度も聞いてくるなよ」とストレートに指摘する先輩も少なくありませんでしたが、現在、そんな言い方をしたら部下は萎縮してしまいますし、効果も限定的です。

では、どうすればいいのでしょうか?

「で、〇〇さんは、どういうやり方でやってみたい?」

という「質問」というコミュニケーションの様式を用いるのがベストです。

この質問の意図は、まずは自分で考えさせること。こう質問すれば、相手は反射的に自分の頭で考えて回答するようになります。短い言葉で「(相手が)まずは自分で考えてから相談する」ように促せることが、このフレーズが選ばれる理由です。

次は、その部下との緊密さによりますが、信頼関係がしっかりしている場面では、
「で、〇〇さんは、どうしたいわけ?」というセリフが多頻度で用いられてきました。

しかし、「わけ?」で終わると相手が「詰められている」という感触を持ってしまうリスクがあるので、相手との関係性を勘案して使用してください。

《「自分で考え、動く」を引き出す言い方》

 

で、〇〇さんは、どういうやり方でやってみたい?

場面ごとに「意図」と「言い方」を考えることが大事

効果がなかった場合はぜひ、微修正を繰り返し、成果が出るように改良してみてください。

その際、そのマネジメント場面ごとに「どういう意図」で、「何と言うか」という2点でとらえることです。

そして、後者については指示、命令、説明、激励、期待、共感、指摘、質問、示唆、叱責といった10のコミュニケーションの様式から、ベストな様式を選択してください。

というのも、意図は正しくても「言い方」あるいはこのコミュニケーションの様式がミスマッチなために、成果が出ないとか、逆効果を招く残念な言い方になっているケースがあまりにも多いのです。

たとえば、新人でまだスキルが低い人には、指示、命令、説明を繰り返してまずはレールに乗せるしかありません。

しかし、逆にスキルもモチベーションも高い人に対して指示、命令、説明を繰り返すと、「そんなこと分かっている」と、細かいことにまで口を挟む上司として、やる気が落ちてしまい、逆効果になるのです。

こうした人には、とにかく「任せる」。

その上で、必要に応じ「あの件、今どうなってる?」と示唆したり質問したりするのが、部下への言い方がうまい上司の共通点です。

このように、コミュニケーションの様式や言い方の中でもっとも重要なのが、行動変容を起こすために相手の自己決定を促す「質問の技術」です。

これが習慣化できれば、あなたも「あの人、部下への言い方うまいよね」と言われる存在になれるはずです。

 

PROFILE
大塚寿

1962年群馬県生まれ。株式会社リクルートを経て、サンダーバード国際経営大学院でMBA取得。現在、オーダーメイド型企業研修、営業研修を展開するエマメイコーポレーション代表取締役。リクルート社の伝説の営業パーソンが講師陣に名を連ねるオンライン営業研修「営業サプリ」において「売れる営業養成講座」の執筆・総合監修を務める。著書に『リクルート流』(PHP研究所)、『“惜しい部下”を動かす方法ベスト30』(KADOKAWA)、ベストセラー『40代を後悔しない50のリスト』(ダイヤモンド社)、『50代 後悔しない働き方』(青春新書インテリジェンス)などがある。

 

自分で考えて動く部下が育つすごい質問30

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