「あの制服を着たい」も立派な志望動機! 女子のための中学受験対策

お父さんが知らない女子校の実態

親御さんのなかには、「女子校=清楚」というイメージを持っている方も少なくないでしょう。特にお父さんに多いようです。

しかし、実際は異性の目がないのをいいことに、夏はスカートをまくり上げて下敷きでパタパタと風を送ったり、体操服を教室内に干したり、「今日は生理なんだよな〜、かったる〜い」などと普通に話したりしています。

もちろん、なかには本当に清楚な女子もいますが、それは家庭教育の賜。女子校に行けば全員がそうなるというわけではないので、お父さんはぜひ幻想を捨ててください(笑)。

また、女子校にはどこかしらに自分と似たタイプの子がいて、自分の居場所(グループ)を見つけやすいと言われています。

以前指導したミナちゃんは本格的な歴女で、自宅ではマイ湯呑みやTシャツに戦国武将の家紋が入っているという徹底ぶり。でも、小学校のクラスメイトは小学生向けのファッション雑誌や少女マンガの話しかしないためまったく話の輪に入れず、唯一大河ドラマの話で盛り上がれるのは、隣のクラスの男子。

しかし、女子校に入ってみると意外に歴女が多いことに大感激! 「なぜこの戦国武将が好きか」「どの合戦が好きか」という話は、小学校ではできなかったと振り返ります。

よく「女子校はいじめが陰湿なのでは?」と言われますが、いじめに関しては男子校、女子校、共学校のどこでもありますし、大人の社会でも存在します。むしろ、公立中学では「異端」とつまはじきにされ、いじめられるタイプの子も、女子校ではそのような目で見られることはそれほどありません。

一方で、居心地のいい女子校の人間関係にどっぷり浸かると、社会に出てさまざまなタイプの人にもまれて辛いことがあったとき、何かにつけて中高時代の友だちでつるむ傾向があるようです。

共学校の「スクールカースト」は厳格

志望校選びでは、女子校に行くか共学校に行くかは大きなポイントです。共学校を選ぶ子というのは、男子に幻滅をしていません。クラスで男女間の仲がよかった、友だちに男女の区別がない、男子と遊ぶほうが楽しい、異性に興味がある、のいずれかです。

「ウチの子、好きな子がいるなんて聞いたこともないけど……」というお母さんもいますが、単に親に話していないだけかもしれません。また、小学生は当然、学園ドラマや少女マンガでの恋愛ワールドに憧れも持っています。

しかし、共学校へ行けば誰もがドラマの主人公のようにキラキラと輝けるわけではありません。そこには厳しい現実も待っています。

スクールカーストは、女子校より共学校のほうがより鮮烈です。

クラス内の立ち位置をピラミッド型の序列で表し、一番上にいる一軍と呼ばれる層は流行に敏感でおしゃれなグループ。部活動でいえば、スポーツ系やダンス系でレギュラーになっているような子がそこに該当します。その次に二軍と呼ばれるグループがあり、ここは可もなく不可もなく的なタイプの子が集まります。そして、三軍はオタク、ガリ勉と呼ばれる子が集まる層です。

私の時代には「スクールカースト」という言葉はありませんでしたが、こうした序列がまったくなかったとは言い切れません。

教え子だったカオリちゃんは共学校に憧れていて、4年前に中学受験をして都内の中堅校に進学しました。カオリちゃんとは卒業後もときどき会っているのですが、入学当初は楽しそうだったカオリちゃんが、年々「学校がつまらない」とグチをこぼすようになりました。話を聞くと、カオリちゃんはこのスクールカーストで悩んでいるようです。

カオリちゃんは、「三軍とは認めたくないけど、二軍の下のほうかな……いや、やっぱ三軍かも」と自分の立ち位置を説明します。

カオリちゃんはとても優しくて明るい子ですが、韓流アイドルにハマっており、同じくファンの子たちといつもクラス内で盛り上がっていました。一軍の子たちはアイドルなどに入れ込むのではなく、〝自分が男子にどう見られるか〟で生きており、休み時間も男子とじゃれ合います。そうしたことから、特定のアイドルにぞっこんのカオリちゃんは三軍と見なされているようです。

そんなカオリちゃんもやはり10代の女の子、好きな人がいます。ところが、その男の子はスポーツも勉強もできる、イケメンの一軍の子。まわりはいつも一軍のキラキラ女子が囲んでいます。実はこのクラス内のカースト、単に序列がなされているだけでなく、一軍の男女は一軍内で恋愛が成立するという暗黙のルールができあがっているのです。ですから、カオリちゃんにはアプローチをするチャンスすらありません。

「それは辛いね〜。でもさぁ、これって絶対に下克上はありえないの?」と聞くと、一つだけチャンスがあるとか。

それは、一軍の男の子から告白されたとき。自分からアプローチすることはできないけど、相手からアプローチされた場合に限り、一気にピラミッドの頂点にはい上がることができるのだそうです。

他にも、「一人でトイレに行くと、男子から『あいつ、ボッチ(友だちがいない人)なんだ』と見られそうで怖い」「本当は寝ぐせなんて気にしないけど、男子の視線が気になるから……」などと、共学校ではやはり異性の目を気にしながらの行動になります。

さらに、女子にとって共学校の入試は男子以上に厳しいものになります。ただでさえ私立共学校は数が少ないことに加えて、中学入試時点では男子より女子のほうが圧倒的に精神的に成熟していて学力も高い。そのため、共学校の一部ではクラスのバランスを保つために、女子の募集定員を男子より少なく設定しているのです。

そのため、慶應中等部や早稲田実業、洛南や西大和などの人気共学校では女子の偏差値のほうが高くなっており、お茶の水女子にいたっては偏差値の開きが10以上もあります。つまり、女の子にとって共学校は狭き門なのです。

その高倍率をくぐり抜けてきた女の子たちが、「自分は三軍だから……」と悩む姿を見るのは、日本だけでなく海外の共学中学・高校でも同じことが起きているとはいえ、やはり辛くなります。

自己肯定感は、いわゆる女らしいと言われる資質(温かく、表情が豊かで素直)より、いわゆる男らしいと言われる資質(強く、自立していて、自信に満ちている)を備えている方が強くなるといわれています。

また、中性的な特徴(勉強ができ、リーダーシップを発揮するなど)を備えている女の子が、控えめで女性らしい資質が求められていると感じる時期になると、自己肯定感が下がり、うつになる危険性が高まります。

家では一日中鏡を見るような中高時代になるかもしれませんが、「人間、外見より中身よ!」「何のために受験したの!」などと責めたりせず、ぜひ気持ちに寄り添い、チャーミングなところをたくさん見つけて伝え、気持ちを前に向けてあげてください。

「あの制服を着たい!」は立派な志望動機

受験へのモチベーションを維持するのに欠かせないのが志望校。しかし、その志望動機は親と子で大きく異なります。小学生にとっては中学入試でさえずっと先の未来のことで、まして大学の進学実績やグローバル教育などと聞いてもまったくピンときません。

「英語をがんばりたいから」という動機を話してくれる子もいます、しかし、よくよく聞いてみると、「これからは英語が大事よ」というお母さんに連れられて文化祭に行ったら、優しくステキなお姉さんがいた。「私、この学校がいいかも」とその場で即決し、志望動機は親の聞きかじり、ということもしばしばです。

もちろん、小学生だってものすごくいろいろなことを考えています。しかし、まだ10年から12年しか人生経験がない小学生に、ずっと先のことをイメージして学校を選択しろなどというのが、そもそも無理な話なのです。

そんな小学生たちが、「校舎がキレイ」「カフェテリアがステキ」「図書館が広い」「チア部に入りたい」といった即物的な志望動機を語るのは当然のこと。

そのなかでも女の子ならではなのが、「この制服が着たい!」という志望動機です。

そうした女の子の気持ちを理解して制服を一新させ、学校改革に成功したのが品川女子学院です。志願者が5人しかいないという時期もあった同校ですが、制服は黒か紺という常識を打ち破り、キャメル色のブレザーを採用しました。

これが非常に大きな反響を呼び、それ以降テレビドラマやCMなどの影響でキャメル色のブレザーが流行すると、「品川女子の制服を着たい!」という志願者が引きも切らず押しよせました。

「たったそれだけの理由で志望校にしてしまっていいの?」と親御さんは思うかもしれません。でも、制服がダサいと言われる難関進学校に合格する力を持ちながら、セーラー服が着たいというだけの理由で中堅校に進学する女の子もいます。

女の子は、大学進学実績やグローバル教育はイメージできなくても、かわいい制服を着ている自分はイメージできます。

かわいい制服を着た自分に、どこかの男子校のイケメン男子が目をとめてくれるかもしれない――。トントン拍子に話が進み、制服同士で学校帰りは映画館に……などと妄想は止まりません。いかに10代を楽しくすごすか、ということが大切なのです。

また、学校の知名度や偏差値を象徴するものとしての制服も存在します。かわいい、ダサいは関係なく、「桜蔭生としてあの制服を着たい!」と思っている子にとって、他の学校の制服はなんの魅力もありません。逆に、「制服なんてイヤ! 絶対に私服がいい」という理由で女子学院を志望する子もいます。

どんな理由であれ、「この学校に行きたい!」という強い思いがあれば、勉強に対するモチベーションは上がります。

そして、制服が重要なのは女子だけというのも面白いところです。「オレ、学ラン着たいから、暁星行く!」という男子は聞いたことがありません。もちろん、「暁星の詰め襟を着た息子と歩きたい」というお母さんはいますけどね。そんな正のスパイラルができ上がっているのでしょう。

 

PROFILE
安浪京子

株式会社アートオブエデュケーション代表取締役、算数教育家、中学受験専門カウンセラー。神戸大学発達科学部にて教育について学ぶ。関西、関東の中学受験専門大手進学塾にて算数講師を担当。生徒アンケートでは100%の支持率を誇る。プロ家庭教師歴約20年。中学受験算数プロ家庭教師として、きめ細かい算数指導とメンタルフォローをモットーに、毎年多数の合格者を輩出している。中学受験、算数、メンタルサポートなどに関するセミナーを多数開催、特に家庭で算数力をつける独自のメソッドは多数の親子から支持を得ている。

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