たとえロボットでも褒められると人は伸びる!? 理系のニュース4選

コロナ禍をきっかけに、「ウイルスって細菌とどう違う?」「肌に触れない体温計はどんなしくみ?」などの疑問が生じた人も多いかもしれません。そうした私たちの暮らしに大きく関わる理系のニュースをご紹介します。

「細菌」と「ウイルス」の違いをズバリ言うと?

感染症の予防のためとして、「抗菌」や「除菌」というフレーズがすっかり市民権を得ているが、これはあくまでも「細菌」に対する効果で、ウイルスに対するものではないということを認識している人はどれだけいるだろうか。

細菌とウイルスは、まったく違う性質を持つものだ。なによりウイルスは生命体ではない。

生命体と認められるには、

①DNAやRNAなどの核酸を持ち、自己複製ができる。

②代謝、呼吸などによりエネルギーを得ることができる。

③細胞構造を持っている。

といった条件がある。

細菌は、細胞核を持たない原核細胞でできている原核生物で、単細胞の生命体だ。人間などの真核生物の体は真核細胞でできており、細胞内の核酸は核膜の中に収められているが、原核細胞の場合は細胞の中にむき出しで存在している。

夏場に食べ物が腐敗するのは、そこで細菌がエネルギーを得て繁殖しているからで、栄養を代謝することができているのがわかる。

一方、ウイルスが満たしているのは①のみで、自分でエネルギーを得ることもできないし、細胞膜を持っていないために細胞構造もない。

ウイルスの構造は、タンパク質の小さなカプセルの中にDNAやRNAが入っているだけのシンプルなものだ。一部のウイルスはさらにその外側にエンベロープと呼ばれる脂質の膜を持っている。

自分でエネルギーを得られないウイルスは、宿主となる生物を見つけてその細胞の中に寄生する。宿主の細胞の中で自分の核酸をコピーさせて増殖を繰り返していくのだ。

このため、ウイルスは微生物というカテゴリーに入れられているものの、生命体ではないという考え方が一般的だ。

生命体と非生命体では当然対処の方法が違う。細菌に対しては、その細胞構造を壊すことでダメージを与えることができるため、治療薬は比較的簡単につくることができる。

一方、ウイルスの場合はもともとシンプルな構造をしているために弱点が見つけにくく、寄生している生物の細胞を傷つけずに壊すことがむずかしい。もともと命を持たないものを殺すのは一筋縄ではいかないのである。

手指や日用品の消毒に使われる薬品に関しても、抗菌や殺菌と謳っているものが必ずしもウイルスに効果があるわけではない。

たとえば、アルコール系の製品はエンベロープを持つウイルスには効果があるが、ノロウイルスなどに代表されるノンエンベロープウイルスには効果がない。

「抗菌」と見ると、つい手が伸びてしまうかもしれないが、何のために使いたいのかをしっかり見極めないと元も子もない。

体に触れない「非接触型体温計」はどんなしくみ?

また最近では、病院などの医療機関をはじめ、ショッピングモール、映画館、学校や公共施設などでも、入り口に設置された非接触型体温計による体温計測が当たり前の光景になった。

体温計にはいくつかの種類があり、そのしくみもそれぞれ違っている。昔ながらの水銀体温計や電子体温計は、多くの場合、わきの下に挟んで数分経つと体温が測定できる。

ところが、スマートフォン型や人体にかざして測るタイプは、ものの数秒で計測が終わってしまう。じつは、非接触型体温計が計測しているのは、人体から発せられている赤外線量なのである。

体温計で体温を測るといっても、そのタイプによって時間も結果の正確さも異なる。厳密にいえば、実際の温度を測っているのは水銀体温計だけなのだ。

体温計をわきに挟むと、水銀が温められて温度表示が上がっていく。上昇速度は水銀と体温の温度差に反比例するので、温度が上がるほどゆっくり上昇し、同じ温度になると止まる。5分ほど計測にかかるが、体温を実測しているという点ではかなり正確だ。

一方の電子体温計は製品によって測定時間に幅があるが、たとえば20秒で測れるものだとしたら、その時点までの温度変化から体温の上昇を予測して算出しているのだ。

非接触型体温計の場合は、人体から出る赤外線の量を体温に換算して測定している。赤外線は温度が高くなるほど強くなる性質を持っており、これを体温測定に利用しているのだ。ニュース映像などで見るサーモグラフィ画像をイメージするとわかりやすいだろう。

気温や測定環境などの影響を受けやすいために必ずしも正確とはいえないが、大人数を短時間でざっくり計測するためには大いに役に立つ技術なのである。

たった10分の運動で、人間の記憶力がアップするカラクリは?

記憶力をアップできれば、もっと仕事ができるようになり、しかも生活がしやすくなる。多くの人がそう考えているだろう。しかし体を鍛えるのとは違い、記憶力を鍛えてアップさせることなどそう簡単にできるものではない。

ところが近年、ウォーキングなど10分くらいの手軽な運動をすることで人間の記憶力が上昇するという研究結果が発表されて注目を集めている。

人間の記憶のしかたにはいくつか種類がある。おおまかにいって英単語や数字などを記憶するのは「短期記憶」、一方で、体験したことやエピソードなどは「長期記憶」と分類されるが、驚いたことに10分ほどの軽い運動をすることで、そういった記憶力が向上することが実験的に確認されたのだ。

人間の記憶を司っているのは、脳の「海馬」という部分である。軽い運動をすることによってこの海馬周辺の活動が活発になり、情報伝達が盛んになるのだと考えられる。

ここで重要なのは、ストレスがかかるような激しい運動では効果がないということである。あくまでもストレスのない、軽い運動がいいのだという。

何か覚えることの多い仕事をするときは、その10分ほど前に散歩など軽い運動をしておけば、能率よく仕事がはかどるかもしれないのだ

ロボットやCGにほめられても、人は伸びるのか?

ほめられて伸びるタイプを自認している人は多い。そうでなくても「ほめられるのは嫌い」という人はあまりいないだろう。

では、ほめてくれるのが人間ではなく、ロボットやCGキャラだったらどうだろう。

やはり、うれしくなるものだろうか。人間にほめられたときと同じように能力が伸びるものだろうか。

昨年、興味深いニュースが伝えられた。筑波大学などの研究チームが行った実験の結果、たとえロボットやCGキャラであっても、ほめられたほうが人間の運動能力は伸びるということが確認されたのだ。

これはキーボード入力の練習をしている人が、ロボットやCGキャラから「残り4回です」とか「入力が速くなっています。すばらしいですね」といった声をかけられることで、どれだけ能力が伸びるかを比較したものだが、たとえロボットからであっても、ほめる言葉をかけられたほうが明らかに能力がアップしたのだ。

さらに、ロボット1体よりも、ロボット1体とCGキャラとの両方から同時にほめられると、能力はよりアップしたのである。

どうやら人間は、相手が人間でなくても、ほめ言葉さえかけられれば能力を伸ばすことができるようである。

もちろんこの研究はまだ始まったばかりだが、ロボットやCGと人間とのより良い共存の形を期待させてくれるすばらしい研究である。

 

PROFILE
おもしろサイエンス学会

「科学の目」を通して世の中を見ることをモットーに、取材・執筆活動を展開しているライター集団。宇宙・生物・気象・地学から最新テクノロジーまで、「理系分野」の専門的な内容を整理し、わかりやすくナビゲートすることで定評がある。

そこを教えてほしかった理系の雑学 (青春文庫 お- 61)