山歩きは準備が9割! 登山計画の立て方や装備、持ち物をチェック

山歩き

登山では、遭難や体調不良、ケガなどのトラブルがつきもので、正しい山歩きをするには登山前の準備がとても大切です。しかし、初めて登山を決行する場合、何を準備すればよいのか、迷ってしまうでしょう。今回は、日本山岳文化学会常務理事の野村仁氏から、登山の準備について、登山計画の立て方や装備、持ち物などを解説してもらいました。

登山計画は“経験不足のメンバー”を基準に

登山前に立てる「登山計画」は、非常に大切なものです。そこで、登山計画を立てるときの流れを解説していきます。

ステップ1.ルートの検討

正しい山歩きの準備とは何でしょうか?大げさかもしれませんが、遭難防止を考えた計画を作ることです。

登山計画を立てるときに重要なのは、メンバー全員が安全にこなせるルートにすることです。そのためには、ルートの難易度と、行動時間の長さ(日程)の両面から、登山を計画しなければなりません。

メンバーのうち一人でも初心者がいれば、入門に相当する難易度を検討しましょう。中級者が複数人いてカバーできるのなら、初級に相当する難易度で検討することもあります。

1日の行動時間の長さは、初心者なら3~4時間、初級者なら5~6時間、中級者なら7時間以上~が目安です。

いちばん経験不足のメンバーが、少しだけ頑張れば歩けるルートを検討しましょう。

ステップ2.1日の登山スケジュールを決定

ルートが決まったら、おもな地点の通過予想時刻を確認して、1日のスケジュールとして決めておきます。全体として行程が遅れているかどうかを判断しなければならないからです。

遅れていることがわかれば、休憩時間を減らしたり、食事時間を分割したりするなど、対策を講じられます。

スケジュールを決めるときは、歩き始める時刻を決めます。そこからコースタイムを加算していくだけの作業です。日没やトラブルを考慮して、15時までに下山できるように計画してください。

ステップ3.ルート中の難所を予想しておく

ルートのアウトラインとスケジュールが決まったら、ルート中の難所や注意箇所を確認しておきます。

具体的な難所は下記の通りです。

【自然地形で危険なもの】

  • 岩場
  • ガレ場
  • 崩壊地
  • 急斜面
  • 草付くさつき
  • 雪渓

【設置物で危険なもの】

  • 鎖場
  • ハシゴ
  • 固定ロープ
  • 桟道
  • 吊り橋

ルート上にこれらの難所が出てくる箇所を注意しておきましょう。地図のコピーに赤丸印などを書き入れ、それを持って歩くとわかりやすいかもしれません。

また、ルートの分岐点は道迷いの危険があるので、難所とは別に分岐点も注意しておきましょう。

ステップ4.エスケープルートの設定

最後に、天候の急変、メンバーの事故や体調不良など、何らかの理由で避難または下山しなくてはならないことを想定して、エスケープルートを設定します。

エスケープルートの条件は、安全に下れることと、短時間で下れることです。日帰りの場合、登山を中止して下山する(引き返す)という形がエスケープになります。

エスケープルートは、計画書に記載して届けられるので、遭難捜索のときにも重要な情報です。

登山計画書は必ず届け出る

登山計画書は、登山計画の内容と関連情報をまとめた文書です。登山計画書を書く大きな目的は、登山を届け出ることにあります。届け出先は、家族や職場、所属団体、警察(自治体)などです。

登山計画書の記載項目は下記の通りです。

  1. 山名、ルート名
  2. 代表者(氏名、生年月日、性別、血液型、現住所+電話、緊急連絡先+電話)
  3. 参加者(氏名、生年月日、性別、血液型、現住所+電話、緊急連絡先+電話)
  4. 日程・行動予定 ※1日ごとに詳細を記載
  5. エスケープルート ※緊急時の避難ルートなどを記載
  6. 装備内容 ※携行品に〇印を記入
  7. 食料内容 ※携行食数を記入
  8. 携帯電話番号、無線機のコールサイン
  9. 所属団体 ※所属している場合に記入

遭難事故が発生したときに重要な情報は、行動予定やエスケープルート、携帯電話または無線機番号、メンバーリストなどです。

細かい情報を記載したくなかったら、個人の生年月日や血液型、現住所を省略しても影響は少ないかもしれません。

文書作成ソフトなどで一度作成すれば、編集して繰り返し使えますので、ぜひ記載してみてください。

「三大登山用具」は高価でもいい物を

登山では、三大登山用具と呼ばれる持ち物があります。レインウェア、トレッキングシューズ、バックパックです。登山の基本装備を紹介するとともに、三大登山用具について解説します。

基本装備
  • 半袖シャツ(アンダーレイヤー)
  • 長袖シャツ(ミドルレイヤー)
  • 防寒着(ミドルレイヤー)
  • パンツ
  • 下着パンツ
  • ソックス
  • 帽子
  • 手袋
  • 水筒
  • ヘッドランプ
  • 地図
  • コンパス
  • 時計

スパッツ(ゲイター)やストック(トレッキングポール)、サングラス、ザックカバー、折りたたみ傘なども状況によって役立ちます。必要に応じて携行するとよいでしょう。

三大登山用具―その1.レインウェア

レインウェアは、登山用ウェアのなかで最も重要な装備です。レインウェア一つで防水・防風・防寒・透湿の機能をもち、ガッチリと登山者の体を雨と風から遮断して、外気によって体温が奪われるのを防ぎます。

風雨のなかで人間はそれほど長い時間は耐えられず、数時間のうちに低体温症となって死んでしまいます。

安全で快適な登山・ハイキングを楽しむには、高価な買い物であっても、しっかりしたレインウェアを入手してください。

三大登山用具―その2.トレッキングシューズ

登山やハイキングで使う靴は、トレッキングシューズが一般的です。登山靴や軽登山靴、ハイキングシューズとはあまり呼ばれなくなりました。

トレッキングシューズは、主にハイカットやミドルカット、ローカットに分けられます。

6時間行程以上の本格的な登山であればハイカット、4~5時間行程ぐらいまでのハイキングであればミドルカット、里山歩きやトレイルランニングが目的ならローカットを選択します。

トレッキングシューズは、足に合っていることがいちばん大切です。山では歩き疲れてくる後半に足が少し大きくなるので、選ぶときは小さすぎるサイズにならないように注意してください。

専門店に足を運んで、店舗のスタッフにわからないことを聞き、納得のゆくトレッキングシューズを選びましょう。

三大登山用具―その3.バックパック(ザック)

ザックは、昔ならリュックサックと呼ばれていましたが、最近ではバックパックと呼ばれることが多くなりました。

主にトップローディング型とデイパック型の2種類があります。トップローディング型は上に雨ぶたがついて2本のストラップで開閉するタイプであり、デイパック型はファスナーで上から横へ開閉するタイプです。

これから登山やハイキングで長く使うバックパックを購入するなら、小屋泊まりにも対応できる30~50ℓの中型を選ぶとよいでしょう。雨ぶたタイプで、多機能過ぎず、シンプル過ぎないものが適しています。

バックパックはレインウェアと靴に比べると、それほど重要な装備ではありません。4~5時間行程ぐらいのハイキングを複数回楽しむだけなら、とりあえずは自宅にあるパックで行ってもかまわないと思います。

非常事態に備えてこれだけは携帯しよう

登山では、いざというときに重要な役目を果たす持ち物があります。エマージェンシー用具と非常食です。それぞれの詳細を確認しておきましょう。

エマージェンシー用具

救急品・薬品セットを用意しておきます。山でケガをしたり、体調をくずしたりしたときに、自分たちで対処するためです。

救急セットの例は下記の通りです。

  • 小型バンソウコウ
  • 滅菌ガーゼ
  • 弾力包帯
  • テーピングテープ
  • 三角巾
  • 消毒薬
  • 外傷用軟膏
  • 虫刺され軟膏
  • 防虫薬
  • 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
  • 綿棒
  • 体温計
  • 解熱鎮痛薬
  • 携帯カイロ
  • レスキューシート
  • 小型ナイフ(ハサミ・トゲ抜きつき)
非常食

疲労してバテきったとき、少しでも回復して歩き続けるために、非常食も必要です。ピンチのとき、これなら食べられるという自分の好物を2~3食用意しておきます。

非常食の例は下記の通りです。

  • ハチミツ
  • コンデンスミルク
  • 甘納豆
  • ドライフルーツ
  • ゼリー飲料

以上、登山の準備について、登山計画の立て方や装備、持ち物などを学びました。無計画で山に行くことは、安全対策に意識を向けないことを意味しています。

無計画を「自由でカッコいい」と考える方もいるかもしれませんが、しっかりと計画を立てたうえで登山を決行してください。

 

PROFILE
野村仁

1954年、秋田県生まれ。1990年ごろより『山と渓谷』などを中心に活動している編集者・ライター。この5年ほどは、山岳遭難関係の記事を中心に執筆している。学生時代に登山を始め、登山歴は約30年。最近数年間はフリークライミングに熱中。里山歩きからテント泊縦走まで、幅広く登山を行なっている。日本山岳文化学会理事(遭難分科会、地名分科会メンバー)、編集室アルム代表。

やってはいけない山歩き (青春新書プレイブックス)

やってはいけない山歩き (青春新書プレイブックス)

  • 作者:野村 仁
  • 発売日: 2016/09/21
  • メディア: 新書