「つい買ってしまった…」をなくす“冷却期間”の重要性【佐藤優】

佐藤優

ネットとの接触時間が増えるにつれ、物欲を刺激する広告にさらされる時間も長くなります。ワンクリックで購入できる気軽さから、つい実際には必要のなかったものまで買ってしまいがちですが、作家の佐藤優さんは無駄遣いを防ぐ簡単な方法があると言います。どうすればお金に振り回されず、お金を管理することができるのでしょうか。

財布にいくらお金を入れておくか

外務省に勤務していたころ、1年の交際費、工作費は約3000万円。引き出しにはその10%の300万円を常時入れていました。要人との会食などの際、持ち出すお金はその2割から1割くらいだったでしょうか。この習慣は外務省を離れた今も続いており、一定額の現金を財布に入れておくようにしています。

外交機密文書を持ち歩くときに先輩から言われたのは、必ずカバンにお金も入れて持ち歩けということ。私の場合、モスクワで勤務していたときは秘密書類と一緒に5000ドルの現金を入れておきました。

頭では重要書類が入っているとわかっていても、酒が入ったりすると、その感覚がつい鈍くなりがち。ところがお金は違います。お金は人間に強い印象を与えるものなので、カバンに50万円、100万円が入っているとなれば、まず酔いません。

同じことが財布にも言えます。あると使ってしまうからという理由で、財布に1万円くらいしか入れていない人がいます。でも結局は少しずつ引き出すので、全体でどれくらい使ったかわからなくなり、結局無駄遣いをしてしまうのです。また、財布に無頓着な人やよく財布を落としたりする人も、あまり財布にお金を入れていないようです。

可能であれば、ある程度まとまった金額を財布に入れておきましょう。10万円、15万円などの、自分の中で結構な金額だと思えるくらいです。「落としたら大変」「盗まれたらどうする」と心配になるかもしれませんが、前述したように、常にお金の存在を意識するので、むしろ紛失したり盗まれる危険は減るはずです。

独身者の場合、自分のお金の使い方を知るためにも、一度毎月の手取りの半分をまず引き出し、財布に入れて使っていくことをおすすめします。手取り30万円なら15万円、20万円なら10万円です。

まとまったお金を持つことで緊張感が出ますし、それが何日間でなくなるかもわかります。急に気が大きくなって散財してしまうようであれば、自分には危険な浪費癖があることを認識して細心の注意を払わなければなりません。

できるだけそのお金を減らさないように頑張って生活してみる。たとえば手取りの半分で20日間生活できるなら、月に何万円かの貯蓄が可能だということです。気をつけているつもりでも10日くらいで使い切ってしまうようなら、一度自分のお金の使い方を振り返る必要があります。

私の財布とカードの使い方

よく、お金持ちになるには長財布を使うといいと言われます。私自身はポケットに携帯しやすいよう、あえてふたつ折りの財布を使っていますが、長財布ならお金をきれいに入れておけます。

部屋や机の上が雑然としている人は仕事ができない場合が多いようです。頭の中が整理されておらず、混沌としている人が多いからかもしれません。

財布も同じで、お札がクシャクシャになって入っていたり、カードがあふれるように入っていたり、領収書やメモ、キャバクラなどの名刺が一緒になっていたり……。余計なもので財布がパンパンになってはいないでしょうか?

そういう人は、どれくらいの期間にどれだけのお金を使ったか、今財布にいくら入っているかを把握していない人がほとんどです。そんなに使ったつもりはないのに、いつの間にか財布からお金がなくなっている、という人に多いパターンです。

私は結構マメなほうで、毎日一度は財布をチェックして領収書やメモなどを別の場所に移します。お札の向きも揃えて入れ直しながら、今財布にいくら残っているのか確認するのです。すると「思ったより減っているけど、そういえばあれに使った」とか、「昨晩はちょっと出費が多かった」などの反省ができます。つまりお金の在庫管理ができる。

在庫管理ができなければ商売にならないのと同じように、在庫管理ができなければお金を増やすことはできません。

よくトイレがきれいな家はお金持ちだと言われますが、これもけっして迷信ではないのです。トイレがきれいならまず部屋もきれいだし、財布もきれいに使っているはず。すべてつながっていて、トイレだけがきれいな家なんてないのです。財布がきれいな人はお金の使い方も整理されていて、無駄がないことがわかります。

結局お金が貯まる秘訣は、お金に対してどれだけ意識を向けているか、注意と関心を払っているかということに尽きます。財布にいくら残っているのかもわからないほど無頓着ではお金は貯まらないし、寄ってこない。毎日財布をチェックする人は、常にお金に注意を向けている人なのです。

物欲には〝冷却期間〟をとる

そして、お金を管理するうえで大事なのは、自分が使うお金に対して自分なりの説明ができるかどうか。これこれこういう理由で、自分はこれを買う。しっかり説明できるならいいですが、それがないまま欲望や情報に流されて何かを買うのは避けるべきです。

とはいえ、衝動的に何かが欲しくなることは避けられません。そうしたときにおすすめなのが、それが1万円以上する場合は小さなホワイトボードなどにその商品を書き出し、目につくところに置いておくこと。それでしばらく様子を見るのです。1カ月たっても欲しいというものなら購入する。面白いもので、ほとんどの場合は熱が冷めています。

購買意欲というのは、その場限りの感情の高まりにすぎないことが多いのです。冷静になって振り返るとそれほど必要なものではなかった、なんてことが結構ある。書き出して冷却期間を置くことで、無駄遣いを防ぐことができます。

目的を持ってお金を貯めることができる人は、自分を管理してコントロールできる人だとも言えます。

お金と主体的につき合う

マルクスの『資本論』や貨幣経済の限界についてよく話をするので誤解されがちですが、私自身はお金が悪いものだとか、不要なものだとは思っていません。むしろ社会や経済を円滑にするのに不可欠だし、上手につき合うことで人生を豊かにすることができます。

大事なのは、お金とどんな関係を築くかということ。その関係性によって、人は幸せにも不幸にもなる。お金はあくまで社会、経済、そして人生の道具であり、手段です。

まず、自分自身が何をしたいのか、どんな生活を送りたいのかという具体的な目標とイメージを描く。すると、そのために必要なお金がどれくらいなのかがわかるので、仕事に対する向き合い方も変わってきます。

お金とどうつき合うかは、結局自分とどう向き合うかということそのものです。資本主義の原理にしたがってひたすらお金を追求するのか、自分と生活をコントロールして今あるお金を有意義に使うことに注力するのか。

ささやかで小市民的に見えても、自己と自分の生活を制御する生き方、無駄を省いた分相応な生き方のほうが、はるかに価値のあるものに感じます。自分を律するという点で、誰の奴隷にもなっていない、真に主体的な自己がそこにあるからです。

 

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PROFILE
佐藤優

1960年東京都生まれ。85年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在ロシア日本国大使館勤務を経て、95年、同省国際情報局分析第一課主任分析官。2002年、背任及び偽計業務妨害容疑で逮捕。09年、背任及び偽計業務妨害の有罪確定で外務省を失職。13年、執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失う。捜査の内幕を描いた『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)が05年に出版されると大反響を呼ぶ。『自壊する帝国』(新潮社)で第38回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞

お金に強くなる生き方 (青春新書インテリジェンス)

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  • 作者:佐藤 優
  • 発売日: 2015/10/02
  • メディア: 新書