「食べチョク」創業者が公開! クラブハウスを120%活用する極意【秋元里奈】

自粛生活とも相まって、急速に利用者が増えた音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」。著名人の生の声に触れたり、仕事のヒントを得たり、あるいは同好の士で集うなど、様々な楽しみ方があります。「食べチョク」の創業者であり、報道番組のコメンテーターとしても活躍する秋元里奈さんは、1日1時間と決めて、毎日(週7日)活用しているそうです。始める前は予期していなかった、嬉しい副産物も生まれたとのこと。いったいどんなことなのでしょうか。

意外にも、クラブハウスは”作業”と相性がいい

—「食べチョク」というサイトを立ち上げ、2020年『Forbes』の「アジアを代表する30歳未満の人」に選出された秋元さんですが、「食べチョク」とはどんなサイトなのですか?

簡単にいうと、中小規模の農家や漁師などの「生産者」と、一般の「消費者」がオンラインで直接つながり、食材を購入したりメッセージを送ったりすることができるサイトです。

野菜や果物を中心に、米・肉・魚・飲料といった食材全般を取り扱っていて、食材の総合マーケットプレイスとして運営しています。最近では、生花も扱うようになりました。

—近年、盛り上がりを見せている「D2C」(消費者直接取引)のECサイトですね。

はい。サイト開設までの道のりは決して平坦ではなかったのですが、おかげさまで、ユーザーは右肩上がりで増加していて。個人の消費者はもちろん、飲食店の方にも使っていただいています。生産者の登録は、今では4300軒を超えました。

食べチョク

「食べチョク」サイト

—クラブハウスでルームを開設するようになったのは、仕事に活かせると考えたためですか?

ちょっと壮大な話になりますが、そもそもこのサイトを立ち上げた根底には、「一次産業に貢献したい」という思いがありました。

農家の人たちがどんなに味や育て方にこだわりを持って作っていても、スーパーで売られる生産物は、色や大きさで一律に評価されます。生産者は、自分たちで価格を決めることができないんです。

そうではなく、「生産者のこだわり」が正当に評価される社会になることを、私は強く願っています。

クラブハウスも、そうした願いを実現するツールの一つと考えているんです。

「食べチョクハウス」(ルーム名:農家漁師の井戸端会議 #食べチョクハウス)をほぼ毎日開いているのですが、そこでは全国の生産者さんにスピーカーとして上がっていただき、生産現場や食材のお話を聞いています。

2021年1月28日に、第1回の「食べチョクハウス」の原型となる生産者さんとのトークをしたところ、数百人ほどの方に参加していただいて。大きな反響がありました。

一般の消費者からすると、これまで農家さんや漁師さんの声を生で聞く機会がなかなかありませんでした。その点、クラブハウスは生産者の話を気軽に聞くことができるので、参加しやすいのだと思います。

一方で、生産者さんも農作業をしながらクラブハウスで話ができるので、相性がすごくよかった。そこで、「食べチョクハウス」を定期的に開くことにしたんです。

—クラブハウスと農業の生産者の相性がいいというのは面白いですね。

農家さんの中には、一日中クラブハウスを繋いでいる方もいます。「農家の雑談」というルームは、24時間、開きっぱなしにすることもあるようです。

一人で作業している方も多いので、作業しているときに“繋がっている”という感覚や、困ったときに誰かにすぐ訊けるのが良いとおっしゃっていました。作業中にラジオや音楽を聴く人も多く、クラブハウスがその代わりになっているのだと思います。

実は農家さんのなかには、IT感度がすごく高い方もいるんです。IT出身で農家になったという方もいます。しかも派生が早くて、誰かが「これいいよ」と言うと、サーッと横に広がってくんです。クラブハウスを聴くためにわざわざiPhoneを買ったという方もいるくらいです。

食べチョクの流通ルート

クラブハウスでの出会いを機に“美味しいコラボ”が実現

—そんな風にハマッてしまうクラブハウスの魅力は、どこにあると思いますか?

カッチリと話したいのであればいろいろなツールがありますが、クラブハウスならではの良さは、気軽さ。ズームや電話と比べると、クラブハウスは「ラフに繋がれる」ところがポイントのひとつです。

例えば、飲み会でとなりのテーブルにサッと行って、聴きたい話だけ聴いて、別のテーブルに移るような、そんな使い方ができるサービスだと思います。その良さを活かして、ゆるく長く繋がっていく活用方法が合いそうです。

ズームなどでオンラインイベントを行う場合は、指定の時間に特定のURLを開く必要がありますよね。そうすると、参加者は熱量の高い人に限られてしまいがちですが、クラブハウスはアプリを開いた時に行われているルームにフラッと参加できます。

ちょっと時間があるから、5分だけ喋って出ていこう、みたいなこともできるので。「偶発的な出会い」が起きやすいと思うんです。

開催する側としても、音声だけで場所や身なりを気にせず気軽に開けるので、頻度高く開催しても負担が少ないです。

開催側も参加側も、ライトにゆるく繋がれて、距離を縮めることができるツールは、これまでになかったと思います。

—気軽に参加できるからこそ、偶発的な出会いも起きるのですね。

「生産者同士の勉強会」をズームで開催すると、基本的には生産者さんしかいないのですが、クラブハウスの場合は、生産者さん以外の一般の方も聴けるところが良いポイントです。

一見、クローズドの場でするような話がオープンになっていて、関係者以外も聴けるという点が画期的だと思います。

食べチョクハウスに参加した方の中には、「食べチョクって、こんなに農家と距離が近いんだ!」と知って入社の応募をしたという人もいて。スタッフの採用に繋がったんです。

他にも、「食べチョクハウスで生産者さんの話を聴いて、実家に戻って農業やることにしました!」という方がいたのも印象的でした。

完全クローズドの場じゃないからこそ、本当の目的以外の、副次的な効果がいろいろ出ていると感じています。

予期せず、コラボ商品が生まれたりもしました。食べチョクハウスでお話ししている生産者さん同士で、「その商品、素敵ですね。うちの食材とコラボしましょう」と言って、食べチョクハウスが終わった後、すぐに別のルームで打ち合わせをしたようです。

その商品とは「ローストビーフ牡蠣」。ローストビーフの中に牡蠣が入っているメニューを作りたい、という話から、広島の牡蠣漁師さんと佐賀の畜産農家さんのタイアップに繋がったのです。実際に試作品を作られていましたが、とても美味しそうで盛り上がりました。

   

テキストと比べると「声」は炎上しづらい!?

—他のSNSと比べて、どんなことを感じますか?

ツイッター、フェイスブック、インスタグラムなど、さまざまなSNSを利用していますが、そうしたSNSと比較すると、クラブハウスはコミュニケーションの密度が高いと感じます。

声でコミュニケーションをするので、実際に会ったことがなくても、身近な存在に感じやすい。まるで生産者さんに直接お会いしに行っているような気持ちになれます。

物理的距離は遠いはずなのに、気づくと何回も会ったことがあるような…そんな距離感になっていたんです。生産現場の理解を深め、生産者さんと“心の距離”を縮めるツールとして最適だと感じました。

ツイッターでも、コミュニケーションを繰り返していくと、なんとなく人柄が伝わってくるのですが、声だと人柄が一発で伝わります。距離を縮めていくことに関しては、他のSNSツールの中でも圧倒的に長けていると思います。

—ツイッターやインスタグラムでは、たくさんの人と繋がると、絡まれたり炎上したりといったこともありがちですが、クラブハウスを使っていて、そういうイヤなことはありましたか。

他のSNSは文字でのコミュニケーションがメインですが、「声」は炎上しづらいみたいで、今のところそれはないです。

「なんでだろう?」と考えてみたのですが、テキストの場合、「何回も読み返せること」が大きいと思い至りました。

何かちょっと心に引っかかる内容を、テキストでもう1回読んだら、イライラしてきたという経験はありませんか。それを繰り返しているうちに怒りが増幅して、書き込んでしまう人もいるのかもしれません。

でも、声なら1回でサッと流れていきます。「ん?」というようなことも、相当言い続けない限り、そんなに気にならない。クラブハウスはアーカイブ機能がないというのも、またいいのかもしれませんね。

—その意味では、クラブハウスをちゃんと聴いていると、けっこう時間を取られる気もするのですが、効率を上げたいビジネスがある中で、どういう風に時間を使い分けていますか?

もともと私は土日に生産者さんを訪問して、お話を聴いていました。費やしていた時間は、運転時間を含めると、2日で16時間以上になります。それが、コロナ禍でできなくなってしまったんです。

いまはクラブハウスを1日1時間、つまり週に7時間使っているのですが、以前よりも多くの生産者さんと近い距離になったと思います。

生産者さんとのコミュニケーションが楽しくて、つい話し過ぎてしまうのですが、基本的に1日1時間で終わらせるようにしています。制限しなければおそらく3〜4時間くらいあっという間に経ってしまうのです。でも、長く続けていくために、1日1時間と決めています。

もちろん、コロナが落ち着いたら直接会いに行くことも再開したいと思いますが、行動が制限されているなか、より短い時間で深いつながりができるツールとして、クラブハウスはとても重宝しているんです。

 

PROFILE
秋元里奈

1991年神奈川県相模原市出身。住宅街にポツンとある野菜農家で生まれ育つ。慶應義塾大学理工学部卒業後、2013年に株式会社ディー・エヌ・エーに入社。webサービスのディレクター、営業チームリーダーなどを経験する。実家の農地の荒れ果てた姿を目にし、起業を決意。2016年に農業支援ベンチャー「ビビッドガーデン」を創業する。翌年、農家や漁師がオンラインで直売できる「食べチョク」をスタート。各方面で話題となる。2020年、同様のサービスの中で食べチョクの利用率がNo.1に。『Forbes』の「アジアを代表する30歳未満の人」に選出。TBSの報道番組『Nスタ』にレギュラー出演中。著書に『365日#Tシャツ起業家』(KADOKAWA)がある。

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