運の悪い人とはつき合わない…50代から「人脈を断捨離」するコツ

年齢を重ねるほどに“もらった名刺”の数は増えていくものです。政治・教育ジャーナリストの清水克彦氏は、人生も後半になったら、「無駄な人づき合い」から降りたほうがいいと言います。どんな基準で人脈を整理すればいいのか、ポイントを教えていただきました。

「大切にしたい人脈」「捨てていい人脈」とは?

私は在京ラジオ局で30年あまりにわたり報道畑を歩んできましたが、57歳のとき、報道ワイド番組のチーフプロデューサーなど職場での肩書をすべて自ら手放し、第一線から退きました。

要職をすべて降りたとき、真っ先に踏み切ったのが名刺の整理です。

第一線でバリバリ働いている頃は、顔が広いことや各方面に知り合いがいることが、仕事ができる証明のようなところがありました。

SNSを活用している方であれば、Facebookで100人単位の「友だち」を持つことがプラスに働くこともあったかと思います。

しかし、勝った、負けたの世界から降り、新しい人生を構築していくうえでは、知り合いの数を増やすことが必ずしもプラスになるとは限りません。

クールに聞こえるかもしれませんが、それをメンテナンスする時間と労力が無駄です。

私が腹を割って話せる友人知己も、出世レースから降りてすぐ、私と同じように名刺の整理をしたと言います。言わば「人脈の断捨離」です。

参考までに、私たちが取った方法の共通項をまとめておきます。

人脈の整理法

捨てていい人脈

一度しか会ったことがない人
ここ数年、連絡を取っていない人
相性がよくない人
学ぶべき点がない人、尊敬できない人
運が悪い人
役職から離れた途端、近寄ってこなくなった人

大切にしたい人脈

困っているとき助けてくれた人
あなたの能力を求め高く評価してくれている人
あなたが進もうとしている分野に詳しい人
心から友人と呼べる人
運が強い人
役職から離れたあとも慕ってくれる人

「人脈の断捨離」は、もう着ない服を整理するのと似ています。

クローゼットやタンスを開けて処分する服を決めるように、名刺ホルダーやパソコンを開いて、膨大な数の名刺やメールアドレスを、思い切って半分以下、いや、三分の一以下にスリム化してみませんか。

苦手な相手とは戦わない

私たちの年齢になると、苦手な相手、ウザいと感じる相手、ソリが合わない相手からは逃げた方がいいです。

それによって、誰かに迷惑をかけるというならともかく、そうでない場合、戦おうとしたり、何とか合意点を見出そうとしたり、あるいは相手の欠点を直してあげようなどと考えるよりは、やり過ごした方が楽です。

なぜ、苦手な相手はやり過ごした方がいいのか

・戦って勝ったとしても、しこりが残る。
・合意点を見出せたとしても、そこまでにかなりの時間と労力を奪われる。
・欠点を直してあげようと思っても、相手もいい歳であれば、簡単には直らない。

私が長年、身を置いてきたマスメディアの世界は、特に、「自分が一番センスが良く、デキる人間」と思い込んでいる人間が大勢集まっている場所です。

全員の意見を吸い上げようとすれば、「優柔不断」「リーダーシップがない」と言われ、根回しもせず瞬時に決断を下せば、「自分勝手」「スタンドプレー」などと批判されます。

同じような職場は他業種にもあると思いますが、第一線から降りたのなら、もうそういう煩わしさからは自分を解放してあげていいと思います。

歓迎会の会場をイタリアンレストランに決めると、「中華料理が良かった」などと思っている人から陰口をたたかれます。

自治体が、子どもを持つ家庭向けに手厚い支援策を実行すれば、子どもを持たない家庭からは「なぜそこに税金を?」という反発の声が上がります。

「何をやっても批判する人はいる。最大公約数の人の理解が得られればいい」

このように大雑把に考えて、周りの雑音には鈍感になることを目指しましょう。

私は、苦手な相手とは「つかず離れず」の距離を心がけています。

まだまだ上を目指している年代であれば、戦国武将がしばしば試みたように、苦手な敵をどうにか調略をもって味方に引き入れるという手もあるかもしれません。

対戦成績で分が悪い選手をトレードで味方にするという手段は、プロ野球界でもやっていることです。

しかし、もうそういうことにエネルギーを費やしたくない年代であれば、「つかず離れず」がベストな選択です。

一緒に組んでの仕事は避けるという点では「つかず」ですが、わざと遠ざけたりはしないという点で「離れず」です。

苦手な相手が、私とは真逆の意見をぶつけてきた場合などは、

「なるほど。そういう見方もあるんだね」

と無難な受け答えで逃げるようにしています。

「なるほど」は、「意見は承りましたが、まだ肯定はしていませんよ」を表す便利な言葉。「そういう見方もありますね」は、「私はそう思っていません」を婉曲に伝える表現です。

上流から流れてくる水を、自分の田んぼの隣に水路を作って、そこに誘導するイメージで接すれば、苦手な相手と正面からぶつかることなくスルーできます。

スルーしたことで相手の意見が通ったとしても、次回、通せばいいのです。今や毎回必ず勝つ必要はありませんし、むやみに敵を作る必要もありません。

“ついてない人”とはつき合わない

「運が悪い人」もまた、断捨離していい人脈です。

私は毎年、就職活動を控えた大学3年生や真っ只中にいる4年生のES(エントリーシート)の書き方や面接対策の指導をしています。

その中で、「あなたは運が良い方ですか。悪い方ですか」と聞かれる学生がいます。

「就活中の学生に、運が強い? 弱い?」といぶかる方もいると思います。

しかし、特に伸び盛りの新興企業の採用担当者に聞けば、コミュニケーション能力の有無やリーダーシップの有無に匹敵するくらい、隠れた重要な要素だと言います。

この話を聞くと、パナソニック創始者の松下幸之助さんの著書『人事万華鏡』(PHP研究所刊)のこのフレーズを思い出します。

─私はやはりそうした運といったものがあるという見方に立った方が、ものごとがより好ましい姿で進んでいくのではないかと思っている。だから人を採用するにしても、登用するにしてもそういうことを加味して考えることが大切だと思う─

もちろん、運が強い、弱いというのは非科学的な見方です。

とはいえ、自分のことを「運が強い」と答える学生は、物事のとらえ方がポジティブで、逆に「運が悪い」と答える学生は、ネガティブなイメージはあります。企業の採用担当者はそこを見ているのだと推察します。

私は、職場の中では出世レースで成功した人たちとのつき合いから降りてしまいましたが、社外では、成功した人とのつき合いが多い方です。

誰しもそうですが、成功するまでには「本人の努力+運やツキ」が必要です。

成功している人とつき合うことは、その人がその道でどのような努力を重ねてきたのか見ることにつながりますし、その生き方や視座を学ぶことにもなります。

「ラジオでは長くニュース解説をしてきたので、テレビにも進出したい」

仮に、こんな目標を立てたとしたら、参考例は周りにいくらでもいますから、彼(彼女)らを見ながら、どの程度のことをやればそうなれるのか指標ができるわけです。

また、成功している人は概してポジティブですから、彼(彼女)らが醸し出す「気」に接していると、こちらまで力が湧いてくるように感じます。

反対に、成功していない人は、運不運はさておき、ネガティブで性格がひねくれた人もいて、話していても愚痴や後悔ばかりが先に立ち、得るものが少ないのです。

「みんなと仲良く」は、建前としてはそのとおりですが、成功していない者同士でつるんでいてもいいことはない、というのが私の持論です。

社外にメンターを作る

つき合う人を絞り込む一方で、社外にメンターを作ることをおすすめします。

メンターとは、仕事や人生における助言者のことで、あなたを引っ張ってくれる先達、もしくは指導者のような人を指します。

ビジネスパーソンなどへの研修で行われるコーチングのコーチが、仕事上の問題解決や個人としての目標達成を支援してくれる存在だとすれば、メンターは、コーチよりもう少しカバーしてくれる範囲が広く、精神的なサポートまでしてくれる、頼れる存在と言えるかもしれません。

あなたの職場には、ベテランのあなたが後輩社員のメンターとなっているケースもあると思います。

それと同様に、あなたはあなたで、これからの人生を切り拓いていくためのメンターを探せばいいわけです。

もちろん、そういう存在が社内にいればそれでも構いませんが、「そういう人はいない」という方は社外でメンターを作りましょう。

メンターの探し方

・社内で尊敬できる人、あなたを評価してくれている人、自身の行動で生き方を教えてくれるような人を見つける。

・社外で、取引先の幹部、お世話になった専門家などの中から、あなたのことを気にかけてくれている人、ときに厳しいことを言ってくれる人を見つける。

・該当者がいない場合は、直接、会ったことがない人(テレビや雑誌、インターネットなどで知った人など)で構わないので、お手本(ロールモデル)になりそうな人、生き方に感銘を受けた人を見つける。

ほとんどの場合、これらのいずれかで、メンターは見つかるはずです。

 

PROFILE
清水克彦

政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師。1962年愛媛県生まれ。京都大学大学院法学研究科博士課程単位取得満期退学。
文化放送入社後、政治・外信記者を経て米国留学。帰国後、ニュースキャスター、大学講師、南海放送コメンテーター、報道ワイド番組チーフプロデューサーなどを歴任。現在は、文化放送報道デスク、京都大学現代政治研究会研究員、学びの未来研究所研究員。政治、生き方、子育てをテーマに執筆や講演活動も続けている。
著書は、ベストセラー『人生、勝負は40歳から!』(SB新書)、『40代あなたが今やるべきこと』(中経の文庫)、『頭のいい子が育つパパの習慣』(PHP文庫)のほか、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)、『安倍政権の罠』(平凡社新書)、『すごい! 家計の自衛策』(小学館)ほか多数。
公式ホームページ http://k-shimizu.org/

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  • 作者:清水 克彦
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