脱サラはちょっと待った! フリーランスになる前にやっておくべきこと

ネットメディアやスマホの普及により、個人での開業がしやすい時代になりました。コロナ禍で先行きが不安定ななか、何か事業を始めようと考えた人も増えているのではないでしょうか。会社を辞める前にぜひ知っておきたいことについて、弁護士の二森礼央さん、公認会計士の萩口義治さん監修のもと、ご紹介します。

開業資金はいくらぐらい貯めればよいのか

独立を考える人の中には、「開業資金が貯まったら会社を辞めよう」と考えている人も多いはず。では、いったいいくら貯めればいいのでしょうか。

実はひと口に「開業資金」といっても2種類あります。1つは事業を行う上で必要な設備投資のための「設備資金」。もう1つは事業を運営していくにあたり月々の支払いが必要な「運転資金」。

開業資金の計算方法

「運転資金」は、フリーランスになった直後はそれほど売上がないと予想されますので、少なくとも3カ月分、できれば半年分は用意したいもの。つまり、「開業資金=設備資金+(運転資金×6カ月)」になります。

開業資金の額は、職種や目指す規模・スタイルによってかなり異なるでしょう。カウンセラーやコンサルタントなど、オフィスを持たずにクライアント先やカフェ、レンタルスペースなどで仕事が可能な職種ならスマホ1台あればスタートできます。

一方、店舗やオフィスが必須の職種は、大きな設備投資が必要です。「それだと開業資金が貯まるのがだいぶ先になっちゃう!」と焦るかもしれません。

しかし、フリーランスでも日本政策金融公庫などの創業融資制度が利用できるのです。ただし、これには借入額の半分程度の自己資金が必要。

たとえば、設備資金が300万円、運転資金が300万円で合計600万円が必要ならば、自己資金200万円準備した上で、400万円の借入を申し込むというようなイメージです。

まずは設備資金と運転資金、それぞれいくらになるか計算してみましょう。

会社員のうちにクレジットカードはつくっておく!

いよいよフリーランスへの道を踏み出す前に、会社員時代にやっておいたほうがよいことがあります。まずは、クレジットカードの作成。残念なことにフリーランスは社会的信用が低く、クレジットカードがつくりづらいのです……。これは辞めてから気づく人が多いです。

いくら億単位の貯金があっても不動産などの大きな買い物をすればすぐに口座からなくなるもの。それよりも20万円でも毎月きちんと給料が振り込まれる新人サラリーマンのほうが信販会社にとってリスクが少ないわけです。

その点、フリーランスは毎月定期的に振り込まれる定額のお金がないので「信用が低い」と判断されてしまうのです。

しかし、フリーランスでもつくれる、個人事業主を対象にしたビジネス用のクレジットカードもあります。テックビズカード、FreCa(フリカ)、freee MasterCard、freee VISAカード、三井住友ビジネスカード for Owners、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カードなどがそう。

ただ、これらは開業して3年以上、2期連続で黒字であることなどの条件があり、フリーランス1年生には難しいかも。

オススメは会社員のうちにカードをつくっておくこと。プライベートと仕事の支出を分けて管理するには、すでに持っているクレジットカードに加えてもう1枚あると便利です。

下請業者への支払いや経費の立て替えが多い業種でしたら、現金を借りられる「キャッシング機能」をつけておくといいでしょう。

健康保険は戦略的に利用する!

また、会社員からフリーランスに転身して驚くことの1つは「保険料の高さ」。医療保険には会社員や公務員が加入する「社会保険(以下、社保)」と、フリーランスや自営業、無職の人が加入する「国民健康保険(以下、国保)」があります。

国保の場合、前年度の所得をベースに計算されます。そのため、会社を辞めて所得があまりないときにも、退職時の高い所得に基づいた高額の保険料を支払わねばならないのです。

こんな無理な負担を防ぐために、退職後2年間は前職の社保に引き続き加入できる「任意継続」という制度もあります。ただし、一般的には、在職時は保険料の一部(たいていは半分)を会社が負担してくれていたので、元の職場の社保に入っても保険料は会社員時代より高くなります。

国保と社保の任意継続、どちらの保険料が安くなるかは、会社が入っている組合や住んでいる市区町村、その人の所得によっても違います。いずれにしても会社員時代よりも納める保険料が高くなるケースが多いです。

任意継続は退職してから2週間までにその手続きをする必要があります。また、一度国保に入ってしまうと任意継続の権利を失います。「国保が高かったから社保に戻りたい」というわけにはいかないので、事前のリサーチが必須と言えるでしょう。

それと、社保も国保も医療費の自己負担の上限があります。国保の場合、月8万円が上限で、医療費は申請すれば限度額を超えた分は払い戻されます。これが超大手企業だと自己負担の上限が月2万円ということも。

フリーランスになると決めたら、会社員でいるうちに高額になりそうな虫歯の治療をする、持病の薬をちょっと多めにもらうなどをしておくといいかもしれません。

フリーランスとして安心して長く続けられるよう、会社員時代からできる準備はきちんと確認しておきましょう。

 

PROFILE
二森礼央

弁護士法人THP神田人事労務法律事務所・代表弁護士。社会保険労務士。1986年兵庫県生まれ 。第二東京弁護士会所属。 労働問題の解決に定評のある弁護士として活躍している。

萩口義治

はぎぐち公認会計士・税理士事務所長。株式会社HG&カンパニー代表取締役。新日本監査法人(現・新日本有限責任監査法人)・独立系の会計・税務コンサル会社を経て、2012年に事務所を開設。創業・スタートアップ支援に特化した、資金調達に強い会計事務所として、創業融資支援も含めたスムーズな開業と事業継続・拡大のサポートを行っている。