免疫スイッチを刺激!? 最近わかった「にごり酢」のすごいパワーとは

昔から「体にいい」と言われるお酢。料理からではなく、健康飲料として採り入れている人もいます。最近では、”酢酸菌”のパワーがすごいことがわかり、その力を秘める「にごり酢」に注目が集まっているようです。

「酢酸菌」が健康増進に役立つとわかってきた

酢が健康にいいことは広く知られています。記憶に新しいところでは、主に黒酢を利用する「飲む酢」のブームもありました。そして、健康に一層有効であると、近年、大いに注目されているのが「にごり酢」です。

「にごり酢」とはその名の通り、一般的な米酢や穀物酢などとはずいぶん違って、透明感のないにごった酢のことをいいます。瓶の底に沈殿物があるので、混ぜると一層にごってしまいます。

にごっているのはもちろん、あえて透明ではない酢に仕上げているのです。

なぜ、わざわざ、見た目の良くない商品をつくるようになったのか。それは、最近の研究によって、このにごりの正体である「酢酸菌」こそが、健康に素晴らしい影響を与える物質であることがわかってきたからです。

「酢の第二のパワー」として、こんな働きがある

そもそも、酢酸菌がつくり出す酢酸、つまり「酢そのもの」にも大きな健康効果があることはよく知られています。

酢が健康に与える好影響には、血圧を下げる、食後の血糖値の上昇を抑える、内臓脂肪を減らす、疲労を回復させる、カルシウムの吸収を促す、といったことがあげられます。これらを「酢の第一のパワー」と呼びましょう。

こうした健康効果だけでも非常に有効なのに、にごり酢にはさらにうれしい点があります。にごりのもとである酢酸菌そのものが持つ、いわば「酢の第二のパワー」が詰まっていることです。

じつは酢酸菌には免疫機能を整える働きがあります。これは酢酸にはない重要な作用。一例として、花粉症の人が酢酸菌を摂取すると、症状がやわらいだという研究報告があります。

また、ほこりやハウスダストなどからくるアレルギー症状を緩和させる働きがあることもわかっています。

これらは、ごく最近の研究で明らかになったことです。以前は、酢酸菌など何の役にも立たないと思われていましたが、そうではなく、意外なほど強力な作用があり、ぜひ役立てたほうがいいという方向に変わってきたのです。

にごり酢はこの有用な酢酸菌をまるごと摂取できるのですから、健康増進のために利用しない手はありません。

アルコールが手放せない人に朗報! 酢酸菌は悪酔い防止にもおすすめ

酢酸菌の健康効果については、免疫関係以外にも非常に興味深いものがあります。それは「お酒」との関係です。

酢酸菌はアルコールをエサにして酢酸を生み出します。この酢酸菌ならではの特性に注目し、飲酒時に利用できないものかという発想から、キユーピーが研究に取り組んでいます。

実験は飲酒習慣のある40~60代の男性7人を対象に実施。アルコール飲料に加えて、酢酸菌が入ったカプセルを飲んだ場合と、酢酸菌が入っていないプラセボのカプセルを摂取した場合とで、呼気と血中のアルコール濃度を測定しました。

その結果、酢酸菌入りのカプセルを併用することにより、いずれの数値も低下しました。

また、マウスを使った別の実験では、酢酸菌のカプセルを継続的に摂取すると、飲酒時の肝機能悪化や肝臓への脂肪蓄積が軽減されました。

これらの実験から、飲酒中または飲酒後に酢酸菌を摂取すると、胃のなかのアルコールを分解してくれることがわかりました。

アルコールを酢酸に変える働きがある酵素は、酢酸菌の表面の膜に含まれています。ということは、酢酸菌をまるごと摂取すれば、お酒を分解する作用が期待できるわけです。

胃のなかは酵素が働きやすい環境ではないので、酢酸菌を同時に摂取しても、どれだけ効果的にアルコールを分解してくれるのかはわかりません。

いろいろな要因に影響されそうですが、飲み過ぎたときの悪酔い、あるいは脂肪肝などの改善につながる可能性があるのは確かといえるでしょう。

こうしたアルコールが原因のトラブルを避けるためにも、酢酸菌が豊富なにごり酢の摂取をおすすめします。

「黒酢」にも、酢酸菌が溶け込んでいる

酢酸菌がそのまま残っているにごり酢には、免疫機能を強化する作用があります。

実は、伝統的な製法でつくられた黒酢にも、酢酸菌が溶け込んでいることがわかっているのです。

そのため黒酢にも、にごり酢と同じように免疫機能に働きかけ、花粉症や食物アレルギー、アレルギー性鼻炎といった、過剰な抗原抗体反応が原因で起こるアレルギーを抑える作用を期待できます。

アレルギー症状を起こしやすくしたラットの細胞を使って行った実験があります。

この特殊な細胞に、酢酸を取り除いて10倍濃縮した黒酢を加えて培養したところ、鼻炎やくしゃみなどを起こす化学物質の放出が抑えられました。

同じような作用が、動物実験でも確かめられています。スギ花粉症などのアレルギー症状を起こすマウスに、黒酢の濃縮液を摂取させると、すべての症状がやわらいだのです。

こうした免疫調節機能は、黒酢にたっぷり含まれている酢酸菌の働き。もっといえば、菌の細胞壁にある成分「LPS」の作用であることがわかっています。

LPSの健康効果を得られるのは、黒酢が複雑な発酵を経たのち、もろみの状態で長期間熟成されるからです。長く貯蔵されている間に死菌が分解し、そのときにLPSなどの菌体成分が溶け出すと考えられています。

 黒酢の免疫活性化成分を調べた研究では、菌の成分が黒酢に溶けていることをはっきり確認。この成分に、重要な免疫細胞であるマクロファージを活性化する作用が認められました。

疫機能を刺激する成分のLPSは、コレラ菌やサルモネラ菌などの「グラム陰性菌」なら、どの菌の細胞壁にも含まれています。そういったなかでも、酢酸菌のLPSは構造に特徴があり、酸性の環境下での安定性が良く、長い間、構造が維持されることがわかっています。

この特徴から、黒酢のなかには酢酸菌のLPSが溶けて存在しているので、ろ過した商品でも効果を十分期待できるというわけです。

黒酢にはさまざまな健康効果があることが経験的に知られていますし、それらのいくつかは、研究によって仕組みが明らかにされてきました。

黒酢に確認されている抗酸化作用、抗がん作用、抗アレルギー作用、免疫を活発にする作用などには、酢酸菌の成分がかかわっている可能性があります。

健康のために、にごり酢や黒酢を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

PROFILE
前橋健二

東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授。日本の調味料研究の第一人者。1998年、東京農業大学大学院農学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(農芸化学)。同大学応用生物科学部醸造科学科助手、講師、准教授を経て、2016年より現職2003年には米国モネル化学感覚研究所にて味覚遺伝子の研究に従事。発酵における微生物と成分変化、発酵調味料、味の解析や味覚のしくみなど、「発酵」と「味」について、多方面から科学的アプローチを続けている。