「強弁」「比肩」「密林」…漢字の意味をめぐる”大いなる誤解”とは

漢字は”多義的な表意文字”。ひとつひとつの文字が意味を持っていますが、その意味は一つとは限りません。たとえば「独白」という言葉が表すように、「白」には「しろ」のほかに「ものを言う」という意味もあります。そうした見慣れた漢字のなかでも、誤解されがちなものをご紹介します。

誤解されがちな漢字の意味

◉強弁〔きょうべん〕

……この「強」は「強い」という意味ではない

無理な理屈をつけて、言い張ること。この「強」は「つよい」ではなく、「しいる」(無理に押しつける)という意味。「強弁に過ぎる政府答弁」など。

◉意表〔いひょう〕

……この「表」は「おもて」ではなく、「そと」という意味

考えに入れていないこと。この「表」は「そと」という意味で、予想外であること。「意表を突く」や「意表に出る」は、相手が思いもしないことをすること。

◉妙齢〔みょうれい〕

……この「妙」は「妙な」ではなく、「若い」という意味

若い年代。とくに、若い女性に対して使う言葉。「妙い」で「わかい」と読み、「妙年」も同様の意味。「妙齢の婦人を同伴して現れる」など。

◉卑近〔ひきん〕

……この「卑」は「いやしい」という意味ではない

手近なこと。身の回りにありふれていること。「卑」は身分が高くないという意味で、そこから、身近という意味が生じた。「卑近な例を挙げる」など。

◉謝絶〔しゃぜつ〕

……この「謝」は「あやまる」ではなく、「ことわる」という意味

相手の申し入れを断ること。「謝る」は「あやまる」の他、「ことわる」とも読む。「面会謝絶」「理不尽な要求を謝絶する」などと使う。

◉努力〔どりょく〕

……この「力」は「ちから」という意味ではない

目的のため、力を尽くして励むこと。「力める」で「つとめる」と読む。「努力家」「努力にまさる才能はない」など。

◉拘泥〔こうでい〕

……この「泥」は「どろ」のことではない

こだわること。必要以上に気にすること。この「泥」は「どろ」ではなく、「泥む」で「なずむ」と読み、動きにくくなるという意味。一方、「拘」には、つかまるという意味がある。「前例に拘泥する」「勝敗に拘泥する」などと使う。

間違って覚えていそうな言葉〈人間関係〉

◉比肩〔ひけん〕

……この「比」は「くらべる」ではなく、「ならべる」という意味

肩を並べること。同等であること。「比ぶ」で「ならぶ」とも読む。「○○に比肩する存在」などと使う。

◉遊離〔ゆうり〕

……この「遊」は「あそぶ」という意味ではない

他と離れて、存在しているさま。この「遊」は、ただよう、さまようという意味。「浮遊」「遊星」「遊軍」などの「遊」も、この意味。

◉奇特〔きとく〕

……この「奇」は「奇妙」という意味ではない

心がけや行いが、他と違って、感心なこと。「奇妙で珍しいこと」という意味ではない。「今どき、奇特な人だ」など。「奇しい」で「あやしい」の他、「めずらしい」とも読む。 

◉精密〔せいみつ〕

……この「精」は、精神の「精」と同じ意味ではない

細かいところまで、注意が行き届いていること。あるいは、きわめて正確につくられていること。「精しい」で「くわしい」と読む。「精密測定」「精密機械のようなコントロール」など。一方、「精」には「こころ」という訓読みがあり、「精神」の「精」はこちらの意味。

◉席巻〔せっけん〕

……この「席」は「せき」ではなく「むしろ」という意味

圧倒的な勢いで広がること。「席」には「むしろ」という訓読みがあり、「席巻」はむしろを巻き上げるように、敵の領地を片端から攻め取ること。「学会を席巻した新説」などと使う。

◉計略〔けいりゃく〕

……この「略」は「りゃくする」という意味ではない

相手をだまそうとするたくらみ。「略る」で「はかる」、「略」一字で「はかりごと」と読む。「相手を陥れるため、計略をめぐらす」など。

間違って覚えていそうな言葉〈歴史の言葉〉

◉素封家〔そほうか〕

……この「素」は「素朴」という意味ではない

金持ちのこと。この「素」は「ない」という意味で、「封」は封土のこと。そこから、「素封家」は、領地(邦土)は持たないが、財産は持っている人のこと。

◉下知〔げち〕

……この「知」は「知る」という意味ではない

上の者が下の者へ指図すること。命令。「知」本来の意味は「知る」ことだが、治める、つかさどる、取り締まるという意味で使われることもある。「大将の下知に従う」など。

◉出師〔すいし〕

……この「師」は「先生」ではなく、「いくさ」という意味

出兵すること。「師」には「先生」という意味の他、「いくさ」という訓読みがある。「出師の表」は、三国時代の蜀の諸葛孔明が憂国の思いを秘めて書いた忠誠心あふれる名文。

◉鎖国〔さこく〕

……この「鎖」は「くさり」という意味ではない

外国との外交関係や通商を極端に制限する政策。「鎖す」で「とざす」と読み、「鎖国」は国を鎖すという意。なお、江戸時代のわが国も、オランダ、中国、朝鮮とは通商していたので、今は「いわゆる鎖国状態」という言い方をすることが多い。

◉遊行〔ゆぎょう〕

……この「遊」は「あそぶ」という意味ではない

僧侶が修行などのため、諸国をめぐり歩くこと。「遊」には「あそぶ」の他、「いろいろなところをめぐる」「見物してまわる」という意味がある。そのうち、「遊行の旅に出る」は前者、「物見遊山」は後者の意味。

 

PROFILE
話題の達人倶楽部

カジュアルな話題から高尚なジャンルまで、あらゆる分野の情報を網羅し、常に話題の中心を追いかける柔軟思考型プロ集団。彼らの提供する話題のクオリティの高さは、業界内外で注目のマトである。