ネット記事やSNSなどの「時間泥棒」から自分を守る方法【佐藤優】

佐藤優

自分の仕事もこなさなければいけないし、部下の面倒も見なければならない。家族との時間も必要……。ビジネスパーソンはいつも忙しいですが、スマホやPCは常に私たちの時間を奪おうとしてきます。自覚のないままこれらの機器に身を委ねていると、いつの間にか無駄なインプットが増え、有益なアウトプットのできない存在になってしまいます。そうした状況を回避するためには、長年に渡り膨大な読書を続け、著書を刊行している作家の佐藤優さんの方法論が参考になります。

1日、1週間の時間配分を決める

上手な時間の使い方のポイントは、「ペース配分」です。私自身、1日のなかで時間の配分をしています。まず朝5時に起床すると、6時までの間に新聞やネットによる情報収集をして、6時〜11時までは原稿の執筆。この時間は頭が一番さえているのに加えて、電話など外部からの邪魔が入りません。1日のなかで最も仕事に集中できる時間帯です。この4〜5時間で原稿はかなりはかどります。

午前11時から午後2時までは人と会食。それがない場合は学習。午後2時以降は打ち合わせや取材などがあればこの時間帯にこなし、それがなければインプット、学習です。夜も会食がない場合は深夜にかけてはインプットの時間。ですからインプットの時間がかなり長い。本を読んだり調べ物をしたり、映画などのコンテンツをネットで見たりします。

ビジネスパーソンの方には必ずしも私の時間配分と仕事の仕方は参考にならないでしょうが、1日1時間から2時間、必ずインプットの時間、勉強したり知識や教養を身につけたりするための時間を持つことがおすすめです。

あまりに予定をつめ込みすぎるのも、時間の使い方としてあまりおすすめしません。たまに手帳にびっしり予定が書き込まれている人がいますが、余裕のないスケジュールを組むと疲れ切ってしまいます。また、何か不測の事態が起きたときに対応できません。

できれば週に1日の「バッファー時間」を設ける。予定通り進まなかった仕事や、こなすことができなかった案件、突然の予定の変更などをこのバッファー時間で調整するのです。私の場合、毎週水曜日は原則として予定を入れず、ここをバッファー時間にしています。

時間泥棒から自分を守る

今の時代、しっかり意識しないと、どんどん自分の時間を他者にとられてしまいます。ミヒャエル・エンデの有名な『モモ』という作品があります。主人公が「時間泥棒」と戦う話ですが、現代社会は「時間泥棒」であふれている。

その最たるものがSNSです。勝手に送っておいて、返事をしないと失礼だというのは、もはやストーカーの論理。時間泥棒と一緒です。

ところがメールですら、最近はぶしつけな内容が多い。企画書を一方的に送っておいて返事がほしいと要求する。しばらく返事をしないと、なぜ返事がないのかと怒っている。おかげで、メールの文章でその人物の性格や能力がわかるようになりました。

長々とあいさつ文や関係のないことがたくさん書かれていて、自分アピールの文章が続く。読み進めても何を望んでいるのか、結論がどこにあるのかはっきりしない。そういう人は自分の都合ばかりを主張するなど、仕事をしてもトラブルになる可能性が高いです。

仕事ができる人ほど、簡潔に必要最小限のことだけを書いてきます。自分も忙しいから、時間をとられることがいかに苦痛かをわかっている。メールは短いが添付されている企画書はしっかりしている。となると、論理的に仕事ができてバランス感覚のいい人だなと推測できます。SNSやメールなどを使うときは、自分が「相手の時間を奪っている」という感覚を持つことが大事です。

ネットニュースなど、多くのサービスがあなたの時間をいかに占有するかにしのぎを削っており、自分の時間を確保するのが難しい時代です。

デジタル機器から遮断された時間を持つ

自分の時間を確保するにはどうしたらいいか。最近の若者の働き方が参考になると考えています。若者は自分の時間を優先して考える。「海外旅行に行くので、来月は1週間休ませていただきます」などと最初に宣言してしまう。

忙しいからこそ最初に自分時間を確保するというのは、スケジュール管理の鉄則。時間の天引きをしないと、いつまでも自分の時間がつくれません。

私は情報をあえて遮断する時間をつくっています。携帯を切り、パソコンのメールも見ない。みなさんも1日1時間でも2時間でもいい、外部の騒音を一切遮断してみてください。

よく「自分を空っぽにする時間を持て」などと言いますが、本当に空っぽにできる人はいません。座禅を組んだって、どうしても離れられない執着がある。その存在を知ることが大事なんです。すると、自分のなかで必要なものと不要なものがはっきりしてくる。

本当に大事な情報は、自分の内側から出てくるもの。フロイトやユングは無意識の世界の重要性を指摘しましたが、実際、作家や芸術家、科学者などの創造的な仕事をする人たちは、みんな自分の内面の声を大事にしています。これは一部の創造的天才たちだけの話ではありません。

もっと日常的な問題に対して、やるべきことかそうでないか、つき合うべき人なのかそうではないのかなど、誰もが無意識では答えを出しているのかもしれません。内側からのメッセージに耳を傾け、聞き分けられるかどうかにかかってきます。

そのためにも、外界の騒音をシャットアウトして、自分の内側の声にそっと耳をすませること。そんな時間が、雑音にあふれた今の時代には特に必要なのです。

将来的に役に立つ勉強とは?

私の一日の多くはインプットの時間。少ないときで一日4時間、多いときで10時間をインプットにあてています。原稿執筆などアウトプットの作業が生命線である職業柄、それは必要不可欠です。

会社の仕事を抱えるビジネスパーソンの場合はそこまで時間をとれないにしても、やはりインプットは重要です。情報収集や勉強だけでなく、芸術作品に触れたり自然と戯れたりすることも大切なインプットの一つでしょう。

「生涯学習」という言葉をよく耳にしますが、あらためて言うまでもなく、人生は学びの連続です。特に40代は目先の忙しさに追われて、勉強する時間がなくなってしまいがち。何をどう勉強するか、意識的に取り組む必要があります。

ただし、社会人の学習は趣味で何かを学ぶというのとは別もの。たとえば写真撮影や星の観察などとは別に考えます。ここでの勉強、学習とは、身につけることで仕事の役に立つもの、収入アップにつながるものです。

もちろん、英会話などの語学は仕事の内容と職種によっては役に立つでしょう。資格をとったり、英会話を身につけたりするために本格的な勉強をするのであれば、1日2時間から3時間、土日はそれぞれ5時間ずつ必要です。

英会話や資格など仕事に直結したもの以外にも、将来役に立つ勉強はいろいろあります。手軽で効果があるのはなんと言っても読書でしょう。特に中間管理職になったとき、読んでおきたい書籍がいくつかあります。

日本の組織の特性や不条理を学ぶ定番としては、やはり『失敗の本質』(戸部良一他/ダイヤモンド社)です。ピーター・ドラッカーの各著作や、スティーブン・コヴィーの『7つの習慣』(キングベアー出版)など、定番の古典も読んでおくとどこかで必ず役に立ちます。

ベストセラーなど、流行っている本や映画などは学習とは少し切り離して考えます。すぐに役立つものは、すぐ廃れるものでもあるからです。もちろんそれらを押さえておくことは必要ですが、ビジネス関連書でも古典と呼ばれるくらいになっている本には、普遍的な価値が備わっています。私は1年後に扱うテーマの仕込みを、今から意識して行うようにしています。

 

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PROFILE
佐藤優

1960年東京都生まれ。85年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在ロシア日本国大使館勤務を経て、95年、同省国際情報局分析第一課主任分析官。2002年、背任及び偽計業務妨害容疑で逮捕。09年、背任及び偽計業務妨害の有罪確定で外務省を失職。13年、執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失う。捜査の内幕を描いた『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)が05年に出版されると大反響を呼ぶ。『自壊する帝国』(新潮社)で第38回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞