「探究力のある子」に育てた親に共通する、3つの優れた姿勢とは

デジタル化が進み、社会が目まぐるしく勢いで変わるなか、「どれだけ知っているか」の暗記型知識は通用しなくなっています。これからを生き抜く子どもたちに必要なのは、「何がやりたいか、何ができるか」を考え、自分で道を切り開いていく力。その力の源となる「探究力」を育てる方法を、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんにうかがいました。

“探究力”のある子に育てた親には“3つの共通点”があった

私が取材をしていく中でわかったのですが、「やりたいことを見つけて活躍する子」を育てた多くのご家庭には、実はいくつかの共通点があります。

さっそくその共通点を紹介していきたいのですが、その前に皆さんに質問です。子どもが何かに夢中になっているとして、それが、親からしたら、何がおもしろいのかわからない、何の役にも立ちそうにないこと、親としては受け入れがたいものだったら、どうしますか?

A そのまま見守る
B 「いつまでも、そんなことやってないで、勉強(親がやってほしいこと)しなさい!」などと言ってしまう

私が取材したやりたいことを見つけた子の親は、共通してA(見守る)の人が多かったのです。

【共通点1】やりたいことは、とことんやらせる

たとえば、ロボットコミュニケーターの吉藤健太朗さん、通称オリィさんは、小中学校での3年半の不登校経験を経て、高校時代に世界最大の科学大会で栄冠に輝き、ロボット研究者の道を歩み始めました。

自身も体験した「人間の孤独」を解消するというミッションの下、分身ロボット「オリヒメ」を開発し、難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)などで身体的な自由を奪われている人たちの社会参加を可能にしました。その功績が認められ、青年の国民栄誉賞【人間力大賞】を受賞。アジアを代表する30歳未満の30名にも選出されたのです。

そんなオリィさんの子ども時代を支えていたのが、「やりたいこと・好きなこと」である“折り紙”。オリィさんは、小学生のとき折り紙にハマって、ときには16時間も没頭して折り紙を折っていたこともあったそうです。

しかし、本の通りにきちんとつくる折り紙は不得手で、一生懸命つくったものはシワくちゃ。ゴミと間違えられて先生に捨てられたこともあったとか。それでも好きで続けていたら、そのうち机も使わず折り目もつけずに、感覚だけで大人も驚くような立体的な折り紙が折れるように。しかもその立体成型が、後のロボットづくりに生かされていくのです。

それだけでなく、3年半不登校だったときに、その孤独を救ってくれたのも折り紙でした。オリィさんという通称は、折り紙からきています。人とのコミュニケーションが苦手だったオリィさんが、初めて科学のオリンピックといわれる大会に日本代表として出場したときに、そのウエルカムパーティで、外国人との会話の糸口をつくってくれたのも折り紙。そしてなんと、そのときの会話が自分の生涯の使命に気づくきっかけになって、今の仕事につながっていったのです。好きなことが、思いがけない方向に人を運んでいくことがあるエピソードです。

折り紙に16時間没頭は、かなり特殊な例ですが、オリィさんの親御さんは、それを妨げずに見守っていたそうです。きっと、折り紙が学校が楽しくない息子にとって大切なものだということを理解していたのではないでしょうか。まさに、「やりたいことをやらせて、見守る」代表例だといえるでしょう。

子どもって、本来好奇心のおもむくまま行動し、大人からみたら何がおもしろいのかわからないことに夢中になったりしますよね。何かに没頭しているとき、いわゆるフローの状態になったとき、脳の中では、「ドーパミン」という神経伝達物質が放出されます。ドーパミンは記憶を司る海馬や情動に関連する扁桃体など、脳のさまざまなところに作用しています。

ドーパミンによって好奇心が生まれ、「やりたい!」という心理状態になることができます。好奇心は探究力を育む最初の一歩です。直接何につながるかわからなくても、子どもが何かに夢中になっていたら、それを途中で遮るのはやめましょう。

【共通点2】多くの習い事をやらせない

2つ目は、“余白”を大事にしていて、幼少期にたくさんの習いごとをさせていないということです。

私はこれまで有名人から一般の親子まで、多くの方々を取材してきましたが、大きくなって自分の好きなことを見つけて、意欲的に活動している人の子どもの頃の習いごとの数はせいぜい一つか二つ。幼少期は遊びが中心で、「詰め込まれていない人」が多いのです。

昆虫食を開発して注目を集めている篠原祐太さんも、その一人です。小さい頃から、自宅近くの野山を駆け回り、虫捕りをして遊び、幼稚園では昆虫博士と呼ばれるほど、虫が大好きな子どもでした。昆虫を食べてみたこともありましたが、それは言ってはいけないと子どもながらに思い、誰にも言えなかったそうです。

大学生になったある日、FAO(国連食糧農業機関)が「昆虫食は食糧難を解決する一つの切り札になる」というレポートを出したことを知って、「自分の好きなものが地球を救う可能性がある」と勇気づけられ、小さい頃に昆虫を食べていたことを告白。

その後は小さい頃の経験が花開き、昆虫食を開発するに至ります。今では、昆虫食を産業として成り立たせたいと起業し、期待のワカモノとして、マスコミにも何度も取り上げられるほど活躍をしていますが、その原点は、幼少期に野山を駆け回っていたことなのです。

反対に、よかれと思って小さい頃から習いごとを詰め込んだ結果、大きくなってから問題を抱えることになってしまったという例も多いです。

たとえば、幼少期から利発で、勉強もピアノも運動も得意だったあきこ(仮名)さん。親御さんは、せっかくの才能を伸ばそうと小さい頃から、ピアノと水泳教室、塾を掛け持ちして通わせていました。小学生になると、見込みがあるといわれて、遠くの有名なピアノの先生のレッスンにも通う生活が始まり、家でも練習時間を取るために睡眠時間を削ってピアノの練習を頑張っていました。

しかし、だんだん夜は寝付けず朝は起きられないという状態に。どれも成果を出せなくなり、やる気自体がなくなり、自信も失って、結果的には高校を中退して引きこもることになってしまいました。このように、子どもの才能を伸ばそうとした結果、反対に追い詰めることになってしまったら元も子もありません。

中学受験の世界でも、早く始めないと間に合わないと焦る方がいますが、カリスマ家庭教師の方も、本当に頑張らないといけないときに伸び切ったゴムになって挫折する子をたくさん見てきたと言います。

早期教育の効果を謳う情報が多く、何もしないと手遅れになってしまうのではと焦ってしまう方もいると思いますが、余白がなければ、子どもが自分で何かを「探究しよう」と思う余裕も生まれません。いったん立ち止まってみてください。

【共通点3】子どものやることを否定せず、見守る

3つ目、探究力がある人に共通しているのは、「親に自分がやろうとしていることを否定されなかった」ということです。取材した方々は皆さん、親への感謝を口にします。好きなこと、やりたいことを見つけて形にしていくまでには、どの人も失敗や挫折の経験があり、試行錯誤をしているのですが、親御さんは、子どもの試行錯誤を見守り応援していました。

小学生から一人で開発途上国を何度も訪れ、「困っている人の力になりたい」と、国際的に活躍できる医師を目指してスイスの高校に留学中の飯嶋帆乃花さんの親もそうでした。

帆乃花さんが、初めて一人で海外に行ったのはなんと小学校4年生のとき。たまたまテレビで、ベトナムの枯葉剤の被害者である「ベトちゃんドクちゃん」のことを見て、「どうしても現地に行きたい」と自分で旅行会社を訪れてどうすれば行けるか相談し、事後報告で「ベトちゃんドクちゃんの病院や孤児院を回りたい」と両親を説得しました。これには、さすがのお母さんもびっくりしたそうですが、子どもの真剣な思いを否定できないので、現地の知人に受け入れを頼んで一人で行かせたそうです。

その後、マレーシア・ラオス・カンボジアなど東南アジアの発展途上国を中心に何度となく訪れます。中でもカンボジアは、中学3年間で10回以上訪れました。そのきっかけは、中1で参加した塾主催のサマースクールでした。カンボジアの魅力にハマり、その後、訪れた電気・ガス・水道がない「チョンボック村」が大好きになって、一人で何度も訪れるようになります。

当時を振り返ってお母さんは、「小さい頃から、『失敗はすればいい』と教えてきましたし、サマースクールの記録動画で、嬉しそうな顔をして活動をしている様子を見て、子どもがやりたいという気持ちを大事にして、応援しようと思いました。今はどこにいてもネットでつながりますし、そもそも子どもは親の所有物ではありませんので、子どもの可能性を閉ざしてしまうのはもったいないと思います」と話してくれました。

子どもは親の所有物ではありません。それはわかっていても、親は子どもが迷っていたり、苦しんでいる姿を見るのは辛いし、何より親自身が不安になってしまって、あれこれ口を出したり、手を出したりしがちです。そして、自分が安心できる方向に子どもを導こうとしがちではないでしょうか。

でも、帆乃花さんの両親は、子どもがうまくいかなくて悩んだり、試行錯誤している状態も含めて、ありのままを受け止めたからこそ、帆乃花さんは安心して挑戦ができたのです。

当の本人は、とにかく「行きたい!」という気持ちが強くて、怖い、心配、という気持ちは本当になかったそうです。そして、「周りからよく『諦めないね』と言われますが、そうしようと思ってやっているわけではありません。意識せずにそうできているとしたら、それは両親や塾の先生からの教えの影響があると思います。

これまで親から自分がやっていることを否定された記憶が一度もなく、先生方も、私がどんなに遠回りしていても、何も否定せず見守ってくださったので、諦めずにやり通す力がついたのかもしれません」と言います。

やり抜く力は「GRIT(グリット)」と呼ばれ、テストなどでは測れないけれど、生きていく上で欠かせない「非認知能力」の一つとして、注目されています。アメリカの心理学者、アンジェラ・ダックワース博士も「人生のあらゆる成功を決める究極の能力である」と言っているのです。

「信頼できる人がいて、余計な口出しせず見守ってくれた、やりたいことを応援しくれた」
それが、帆乃花さんの探究力を育て、さらにやり抜く原動力を伸ばしたのでしょう。

子育ては、親が子どもを育てるのではなく、その子自身が育つ手助けをして社会に送り出すことです。だから、親の手元にいる間に、社会に出た後、お子さん、が自分で考え、選んで、しっかり生きていけるような力を育てましょう。

 

PROFILE
中曽根 陽子

お母さんの気持ちがわかる子育て・教育コンサルタント。教育ジャーナリスト。出版社勤務後、女性のネットワークを活かして取材・編集を行う、情報発信ネットワーク「ワイワイネット」を発足、代表に。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探求型の学びへのシフトを提唱している。