歌舞伎町のイメージを一新! 東急が巨大エンタメ施設を建設中

TOKYU MILANO

新宿歌舞伎町で進められている巨大再開発プロジェクトをご存じだろうか? 場所は、新宿区歌舞伎町一丁目29番。かつて東急レクリエーションが運営していた新宿TOKYU MILANO(旧・新宿東急文化会館)と新宿ミラノ新館の跡地だ。映画館やライブホール、ホテルを含むこの複合エンターテインメント施設、竣工は2022年度を予定している。これが歌舞伎町にどのようなインパクトをもたらすのか、都市計画の専門家である市川宏雄氏が解説する。

ナイトライフを求める外国人の拠点になる

2021年7月現在、この「新宿TOKYU MILANO再開発計画」は着々と進行中で、すでに取り壊しや基礎工事を終え、骨格が組み上がってその姿を現しつつある。

この地に建設されるのが、高さ225m、地上48階、地下5階、塔屋1階の複合エンターテインメント施設となる超高層ビルだ。延べ床面積は約8万8000㎡。設計は久米設計・東急設計コンサルタントJV、施工は清水建設・東急建設JVだ。

建物は中層階までの幅の広いビルに、高層階までの細長いビルが上に載るという構造になっている。地下にライブホールと駐車場、低層階(地上〜25m)に商業店舗とリムジンバス乗降場(1階)、中層階(25〜110m)に劇場と映画館、高層階(110〜225m)にホテルが入る予定だ。これまでの複合大型開発とは異なり、オフィスや住宅は入らず、ホテルを含むエンターテインメントに特化しているのが大きな特徴だ。

かつての新宿ミラノ座を継承する形の映画館は12〜15階に入り、総面積は約5800㎡。そこに8つのスクリーンが設けられる。

8階〜11階はコマ劇場などの伝統を引き継ぐ劇場だ。面積は約3300㎡。舞台は6階、客席は6階(700席)、8階(2階席150席)に配置され、劇場としてはサンシャイン劇場(816席)やシアターコクーン(747席)と同等の中規模になる。

地下1〜4階(B1〜B4)はライブホールだ。地下4階がステージとライブホール、地下3階がステージとライブホールの吹き抜けで、パーティースペースとラウンジが設けられる。最大収容人数は約1500人(B3:160人、B4:1340人)で、着席仕様なら約580人。

なお、高層階(17〜47階)のホテルは地上100mを超えるルーフトップを備え、アートや音楽など街の文化を織り込んだ客室を整備するという。運営は東急ホテルズが担当する。建物の低層階にはリムジンバスが直接乗り入れられる発着場があり、海外や遠方からの観光客にとっても使い勝手のいいつくりになっている。

オープン後は、ナイトライフで外国人にお金を使ってもらう「ナイトタイムエコノミー」のモデル地区として、歌舞伎町は大いに賑わうだろう。

歌舞伎町の地図

「複合エンタメビル」は歌舞伎町をどう変えるか

歌舞伎町に新宿三井ビルと同じ高さの225mの超高層ビルが屹立すれば、雰囲気も風景も一変する。位置的には西武新宿駅のすぐ真横なので、西武線利用者が増える可能性もある。2022年夏、新宿の街は歌舞伎町から何かが変わっていくかもしれない。

新型コロナのパンデミックが発生するまで、新宿は外国人観光客にとってそこそこ人気の街だった。秋葉原ほどではないにしても、多くの家電量販店が軒を並べていて、そのすぐ近くには安売り系ドラッグストアも集中している。東京都庁の展望室ではタダで絶景が望めるし、繁華街から少し歩いただけで緑豊かな自然を感じられる新宿御苑も隠れた人気スポットだという。

意外にも外国人観光客に好評だったのが新宿三丁目から歌舞伎町の飲み屋街だ。筆者は数年前、新宿ゴールデン街が外国人観光客(主に欧米系)であふれ返っている光景を見て、驚いたことがある。

また、新宿駅から歌舞伎町のラブホテル街を抜けてしばらく行くと、通称〝イケメン通り〟に入る。そこはもう、日本最大といわれるコリアンタウンの一角だ。韓国料理や韓国雑貨の店がところ狭しと並び、2000年代後半、韓流ブーム華やかなりしころは多くの女性ファンで街は賑わった。

新大久保界隈に形成されたコリアンタウンは、風俗・飲み屋系以外に独自の文化を持たない新宿にとって、取り込みたい異国文化である。大久保、新大久保周辺に日本語学校が多いことから、近年は韓国だけでなくベトナム、ネパール、インドネシアなど、東南アジアや南アジア出身の外国人も数多く見かける。

この「新宿TOKYU MILANO再開発計画」が、このインターナショナルな文化と新宿の街を結びつけるポイントになる可能性がある。歌舞伎町の文化圏を少しずつ北に拡大していけば、やがてインターナショナルタウンと地続きになる。新宿駅東口から大久保通りまでの距離は約1.2㎞。時速4㎞で歩いても約18分。歩けない距離ではない。

歌舞伎町と大久保の間にはラブホテル群が存在するが、かつて渋谷で若者ファッション文化が拡大したとき、道玄坂から円山町のラブホテルが数を減らしたように、歌舞伎町から大久保の通りに今風の新しい店が増えていけば、街並みも自然に変わっていく。歌舞伎町から大久保にアジア系の多国籍文化圏が形成されたとき、新宿はまた新たな魅力を発信するようになるだろう。

新宿が東京における「アジア系多国籍文化のメッカ」となれるかどうか、ポイントはこの「新宿TOKYU MILANO」再開発計画の動向だ。歌舞伎町に地上48階、高さ約225mの超高層エンターテインメント施設が出現すれば、大きな話題になることは確実である。

何しろ歌舞伎町のど真ん中という地の利もあるので、歌舞伎町のナイトライフを楽しみつくしたい人には絶好の宿泊施設だろう。また、新宿駅東口とJR新大久保駅の中間に位置しているので、新宿に出るにも大久保のインターナショナルタウンに出るにも便利だ。

開通が待たれる「羽田空港アクセス線」

新宿が多国籍文化都市になるためには、JR東日本による羽田空港アクセス線の開通もポイントになる。羽田空港から新宿のバス移動にはどうしても40~50分はかかる。首都高が混んでいれば1時間以上かかるかもしれない。

ところが、JR東日本が計画を進めている羽田空港アクセス線が開通すれば、羽田空港と新宿がわずか23分で結ばれることになる。所要時間が読めないバスで移動するより、定時に短時間で移動できる電車のほうを好む旅行者は多いはずだ。

羽田空港アクセス線とはどのようなものか。1998年(平成10年)まで使われていた東海道貨物線(貨物列車用)の一部を旅客用に転用し、羽田空港近くに「羽田空港新駅」を建設。都心部と線路がつながっている東京貨物ターミナル駅(貨物駅)から新駅までアクセス新線を建設し、羽田空港と都心部主要駅を短時間で結ぶ鉄道路線計画のことだ。

羽田空港アクセス線

東京貨物ターミナル駅から田町駅方面を経由して東京駅までを結ぶ「東山手ルート」、大井町駅、大崎駅を経由して新宿駅までを結ぶ「西山手ルート」、東京テレポート駅を経由して新木場駅までを結ぶ「臨海部ルート」の3本を整備する計画で、現時点では2029年までに東山手ルートを開業することが国土交通省により許可されている。開業すれば、羽田空港新駅~東京駅が18分で結ばれるという。

今のところ、西山手ルートの開業時期は未定だが、羽田空港から新宿のアクセスが飛躍的に向上すれば、「新宿に行ってみたい」と考える国内外の旅行者も増えるはずだ。新宿が国際都市になれるかどうかは、空港からのアクセスのよさも大きく関わってくる。

 

PROFILE
市川宏雄

明治大学名誉教授。東京の本郷に1947年に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。ODAのシンクタンク(財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所(現、みずほ情報総研)主席研究員の後、現職。日本と東京のこれからについて語るために国内、海外で幅広く活動する他、東京の研究をライフワークとして30年以上にわたり継続している。『東京一極集中が日本を救う』(ディスカヴァー携書)、『東京2025ポスト五輪の都市戦略』(東洋経済新報社)、『山手線に新駅ができる本当の理由』(KADOKAWAメディアファクトリー新書)など著書多数。NHK「特報・首都圏」、日本テレビ系「スッキリ」、TBSテレビ系「ひるおび」、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」などテレビ出演多数。