SNSにハマる人は高級車を買いがち!? つながりへの欲望を煽るワナ

高級車

私たちは日常の行動を主体的に選択し、管理していると思いがちですが、実は多くの事柄はあらかじめそうなるように仕組まれたものだとしたら? 特に消費や人間関係においては、数々の心理テクニックがあなたの周囲に自然に溶け込んでいるのです。では、私たちは普段どんな心理的テクニックにさらされ、どのように誘導されているのか。人の心を読み、操る技術“メンタリズム”を駆使するメンタリストDaigoさんが、とある人物のエピソードから、その巧妙なテクニックを解剖していきます。

エピソード


22時、会社から帰ってきたあなたがいつものオンラインゲームにログインすると、次々と仲間から声がかかります。

「やっぱり力丸さんがいないと始まらないですよね」
「力丸さん! おつかれです! ひと勝負行きましょう!」

「ちょっと難易度の高いクエストに入るんですけど、力丸さん一緒にきてもらえませんか?」

ここは協力プレーが売りのゲーム内課金式アクションゲームの世界。あなたは月の給料の半分近くを注ぎ込み、強力なアイテムを揃えた有力キャラクターを使うプレイヤー・力丸として一目置かれています。

「んじゃ、今夜も行きますか!!」


翌朝、遅刻ギリギリで会社にたどり着いたあなた。寝不足で目はしょぼつき、着古したスーツのズボンは型が崩れ、よれよれ。仕事にも力が入らず、任されるのは業務は単純な入力作業ばかり……。上司からは定時で処理しきれない量の仕事を割り振られ、ここのところ、毎日残業続きです。


心の支えとなっているのは帰宅後にログインするゲームと、ゲームを通じて知り合った仲間とつながるSNS。毎月、使っている額が増えているのを実感するたび、反省はするものの、当面やめることは考えられません。

なぜSNSの“承認される喜び”は強烈なのか

ネットは魅力的な空間です。究極の暇つぶしでもあり、知の集まる場所でもあり、あらゆるエンターテインメントが凝縮された夢のような空間でもあります。私たちはパソコンからはもちろん、歩きながら、エスカレーターに乗りながら、トイレに座りながら、食事をしながら、ベッドに寝っ転がりながら、スマホやタブレットの画面と熱心に向き合うようになりました。

そのマイナス面として、ネット依存症やゲーム中毒と呼ばれる症状に苦しむ人も現れ、専門に治療を行う医療機関も登場しています。そこまで振り切れた状態にならずとも、ネットを介したコミュニケーションに心地よさを感じ、日常生活での人間関係がおざなりになっている人も少なくありません。

これもまた、一種の依存です。このエピソードの主人公は会社でのうまくいかない日々を積み重ねた末、ネットを通じた刺激と楽しみに引き寄せられています。

彼がハマったのはネットでつながったプレイヤー同士が協力しながら、冒険に出るアクションゲーム。チャット機能があり、会話をしながらプレーすることができます。そして、主人公の操るキャラクターは強く、会社での自分と異なり、高い評価を得ています。

主人公にとってネットゲームの世界に入ることは「承認欲求」が満たされるだけでなく、人とつながることのできる安心感を覚える行為になっています。今はまだ大丈夫ですが、ゲームの楽しさよりも現実から逃避したい心理が高まっていくと、それは一種の依存状態だと言えます。

SNSの発達などで、人は対面していなくても自分が承認される喜びを知ってしまいました。フェイスブックの「いいね!」も強力ですが、チャット機能を楽しみながらゲームではより深くつながった印象があり、自分のプレーへの評価がそのまま承認欲求を満たしてくれます。

それはこのエピソードの主人公のように現実の生活でいまひとつ充実感を得られていない人にほど、鮮烈な影響を与えます。

車もキャラも一度手に入れると手放せなくなる

まずこうしたネットゲームの大半は、無料でプレーを開始することができます。

思い返せば、初期費用完全無料という宣伝文句に惹かれ、「暇つぶしに始めてみるか」と遊び始めたのが、1年前のこと。初めての課金を行ったのはプレー開始から2週間ほどたったときでした。クレジットカードを使い、ゲーム内のコインを買う形だったのでとくに抵抗感もなく、むしろ課金によって手に入ったアイテムの力でキャラクターのバロメーターが一気に高まったことが感動的でした。

しばらくプレーして、自ら名前をつけたキャラクターに愛着が湧いたころ、お金を費やすことでプレー時間を短縮することができるなど、課金をすすめるようなイベントが発生します。

その時点ですでに「保有効果」(※1)という心の動きが起きているので、プレイヤーはゲームそのものをやめにくくなっています。そこで、お金を払ってよりスムーズにゲームを進めるか、より多くの時間を費やしてでも無料でプレーを続けるかを選びます。

ちなみに、保有効果とは所有することで物の価値が高まるという心理。これをうまく活用してビジネスを展開していたのが、アメリカの自動車会社です。

安いデポジットで「ちょっと乗ってみてください」と新車を渡し、「満足いただけなかったら、車を持ってきていただければ前金を返金します」と1週間ほど試乗させます。そして、約束の1週間後、「いかがでしょうか?」と営業マンが訊ねるわけです。

すると、3万ドルのこの車種は自分にとって高すぎる……と思っていた人も、購入に踏み切ってしまう。なぜなら、1週間という期間でもそれを所有したことで、本人のなかで勝手にクルマの価値が高まってしまうからです。

車種も価格も変動していないのに、保有効果によって自分はいいものを所有していると思い、愛着が湧いてしまうのです。

同じことがネットゲームでも発生します。むしろ、キャラクターは自分の分身となる存在ですから、より強力に働くと言えるでしょう。

そこで、作り手側はゲーム展開上、キャラクターのレベルを上げなければいけないシーンで、確実にレベルアップさせるためには課金をしたほうが簡単なルートをつくるなど、さまざまな仕掛けを用意。また、他のプレイヤーから羨ましがられるアイテムを手に入れるために課金が必要だったりと、要所要所でゲームをより楽しむための手段としてもお金が必要なことが示唆されます。

プレイヤーはゲーム内でたくさんの時間を費やし、多くの人と交流することで、ますます保有効果を高められているので、いつしかお金を払ってしまうのです。

こうした消費を抑えたいときには、たった1つ、自分にこう問いかけることです。

「なぜ、今まで買わなかったか?」

その理由を探すことで、無駄な消費はぐっと減っていきます。これがなくても生活できていたのであれば、必要ない。そんなふうに理由付けがはっきりすると、なんとなく買ってしまうことがほぼなくなります。

しかし、このエピソードの主人公は「ネットゲームがなかったときも充実していた」とは言えない毎日を送っていたようです。となると、「買ってはいけない」という禁止は逆に「カリギュラ効果」(※2)となってしまうかもしれません。

カリギュラ効果とは、禁止されると、かえって余計にその行為をやってみたくなる心理のこと。禁止されることで、それが頭を離れなくなり、より魅力的に感じてしまうのです。

たとえば、ダイエット中、私たちは「甘いもの、脂っこいものは食べないほうがいい」と頭では理解できます。しかし、禁止した途端、食べたい欲求も高まっていくものです。このように「絶対に食べないでね!」「こっちを見ないでね!」「誰にも言わないでね!」と言われると、逆の反応を示したくなるのはカリギュラ効果の働きです。

※1「保有効果」自分が現在所有するものに高い価値を感じ、それを手放すことに強い抵抗を感じてしまう心理。対処法は「本当に必要なのかどうか」と自問自答すること。

※2「カリギュラ効果」自分が現在所有するものに高い価値を感じ、それを手放すことに強い抵抗を感じてしまう心理。対処法は「本当に必要なのかどうか」と自問自答すること。

会ったこともない人間に親近感を覚える理由

じつはネットを介したコミュニケーションは、対面での対話よりも簡単に親近感を高めることができるのです。

会話と違い、メールやメッセージのやりとりは前回の内容がそのまま記録として残っています。そこにはそのときの話題の他、相手の言葉遣いや文体といった情報があります。もし、あなたがメールやメッセージをやりとりしている相手との距離を縮めたいのなら、その情報を生かせばいいのです。

言葉遣いや文体を似せることは、相手を「なんとなく気が合うかも……」という感覚にさせ、前回のやりとりの話題に追加するような情報を書き込めば「この人はこちらの話をよく聞いている」と喜んでもらえます。

面と向かっての会話では難しいことが、メールやメッセージならいとも簡単にできてしまうのです。

その結果、主人公はネットゲームのゲーム以外の部分にも強く依存していきます。

時にはお互いのリアルでの悩みを打ち明け、励まし合うこともあります。

仲間から送られてくるメッセージは、あなたのつらさや苛立ちを的確に捉えていて、会ったことのない相手への信頼感は増すばかり。

日頃、親しくしている人がいないぶん、メッセージのやりとりの重要度が高まるのも当然です。これだけ結び付きが強くなっている以上、強引に第三者が禁止するのは逆効果になるだけ。リアルライフがネット以上に充実したものになるか、本人が何らかの理由でゲームから離れていかないかぎり、現状を変えることは難しいでしょう。

 

PROFILE
メンタリストDaiGo

人の心を読み、操る技術“メンタリズム”を駆使する日本唯一のメンタリスト。テレビ番組への出演多数。外資系企業の研修やコンサル、教育誌への連載なども手掛けている。主な著書に『メンタリズム 恋愛の絶対法則』(小社)、『人を操る禁断の文章術』(かんき出版)、『一瞬でYESを引き出す 心理戦略。』『男女脳戦略』(ともにダイヤモンド社)など。ベストセラー多数、著書は累計で80万部を超える。