仕事はイマイチ…なのに「みんなに好かれる同僚」が使っている心理テク

人気の同僚

私たちは日常の行動を主体的に選択し、管理していると思いがちですが、実は多くの事柄はあらかじめそうなるように仕組まれたものだとしたら? 特に消費や人間関係においては、数々の心理テクニックがあなたの周囲に自然に溶け込んでいるのです。では、私たちは普段どんな心理的テクニックにさらされ、どのように誘導されているのか。人の心を読み、操る技術“メンタリズム”を駆使するメンタリストDaigoさんが、とある人物のエピソードから、その巧妙なテクニックを解剖していきます。

エピソード なぜかみんなに好かれる同僚


「今日の飲みも楽しかったね。ありがとう。またやろう!」

課長主催の飲み会を終え、終電間際の電車に乗り込んだ途端、あなたのスマホにLINEのメッセージが届きました。送ってきたのは、同期のD。飲み屋の前で別れてから10分もたっていません。

同期のDは、あなたから見てそれほど仕事ができるわけでも、営業成績が優秀なわけでもない同僚です。こんなところばっかりマメなヤツだなと呆れつつも、悪い気はしません。

ところが、彼は社内でも、社外でも一目置かれ、若手の異動を左右する人事部長もDのファンだというウワサ。しかも、同期のほとんどがそんなDに嫉妬するわけでもなく、認めています。いったい何が自分と違うのか。同期入社の仲間のなかで、何かと気になる存在です。

翌朝、「上司と飲んだ次の朝こそ、早く出社しろ」というビジネス書の教えに従い、いつもより早めに出社したあなた。少し遅れて出社してきた課長からも「お、早いな」と言われ、小さなポイントを重ねたと気をよくしていました。

一方、Dは定時ギリギリのタイミングで出社。遅刻をなんとか回避した高校生のように、「いやー危なかった」を連呼しつつ、自席につくと、隣の先輩になにやら話しかけています。

「おはようございます。昨日、課長から聞いた喫茶店のモーニングあったじゃないですか」
「うまいっていうあの店?」
「そう。うまいっていうあの店、です。課長の絶賛ぶりが気になっちゃって仕方なかったので今朝行ってきたんですよ」

Dと先輩の会話が聞こえたのか、課長も自席を離れて加わります。

「D、もう行ってきたのか。早いな」
「あ、課長、おはようございます。あの店、味も量もたしかに絶品ですね。また、店内の雰囲気もよくて、ついのんびりしていたら、遅刻ギリギリになっちゃいました。以後、気をつけます」
「まあ、間に合ったからいいだろ。早く準備して、仕事しろよ」

その日の午後、あなたが営業先から帰社すると、エレベーターホールでDが社長に話しかけているのを目撃しました。二言三言、言葉を交わしただけのようですが、親しげな雰囲気だったのは確か。驚いたあなたは、Dを呼び止めました。

「ちょっと、おまえ、社長と直で話しているの?」
「話しているって言っても、挨拶程度だよ。前に社内報で社長がオフに甘味処めぐりをしているって話を書いてたから、いつだったかおすすめの店を聞いてみたんだ」
「勇気あるな」
「あんまり若手に話しかけられることがないみたいで、喜んでくれたよ」
「今は?」
「今日の営業先の近くに、総務のEさんが絶賛していた豆大福屋さんがあったから、おみやげに1個ずつ買ってきたのを渡しただけ。社長、喜んでいたよ。けっこうかわいいよね」
「かわいいって……。で、総務のEさんって、あの怖そうなお局つぼねの?」
「これまた和菓子好きなんだよ」

あなたから見ると、時間の無駄のように思えるものの、こんな調子でちょこちょこと他部署に顔を出しているD。彼は若手ながら社内で知られた存在になっています。

あなたは、「もしかするとDは大物なのかもしれない……」と認識を新たにしたのでした。

相手の脳に好印象をすり込む仕掛け

このエピソードに登場する同期のDさん。かなりのメンタリズムの使い手です。主人公からすると、「どうしてそこまでやるんだろう?」と感じる言動の1つ1つにしっかりと意味があります。

だからこそ、仕事の成果は平均的でも、周囲からは同期のなかでもっとも高い評価を得ているのです。そのメカニズムがわからない同期からすると、まさにダマされているようなもの。では、その手法を順番に追っていきましょう。

まずは冒頭の、あなたのスマホにLINEのメッセージが届いたシーン。気になる相手がいたとき、ありがとうのメッセージを送る人はよくいますが、大半の人が知らないまま損しているポイントがあります。それは、時間です。

ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、人間の記憶が20分間で58%まで失われると指摘。時間の経過と記憶が失われていく関係性をエビングハウスの忘却曲線に表しました。

それによれば人の記憶は、聞いた直後を100%として、20分後には一気に58%へ。じつに42%を忘れてしまうのです。そして、その後も時間の経過とともに緩やかなカーブを描きながら失われていきます。

だからと言って、私たちは何もかも忘れてしまうわけではありません。私たちの脳は、繰り返し見聞きしたり、体験したことは長く記憶に残すようにできています。つまり、一定のタイミングで改めて印象付けていくことが大切。そして、その繰り返しのタイミングについて研究したのが、教育心理学者のP・ラッセルです。

ラッセルによると、20分に近い段階で復習することで記憶が再び新鮮なものとなり、忘却曲線の落ち込み方が緩やかになります。次に1日後、1週間後、1カ月後というタイミングで繰り返し印象付けを行うと、最終的に記憶の落ち込みはほとんどなくなるというのです。

この繰り返しのタイミングをラッセルは復習曲線として、まとめています。そして、記憶に関するこの2つの曲線は、相手に与える印象に応用可能です。

このエピソードでDさんは店を出て10分ほどで、メッセージを送っています。仮にこの日が初対面の人が同じことをされたら、Dさんから感じていた好印象がここで強化されるわけです。実際、このシーンでは同期である主人公が、Dさんに対して持っていた「マメなヤツ」という印象を深めています。

彼らが意識しているかどうかはともかく、結果的に忘却曲線と復習曲線のタイミングを見計らって連絡をとっている。好印象が新鮮なうちにメッセージを送ることで、相手の記憶に強く印象付けることに成功しているのです。

親近感はシンプルな話術でつくり出せる

続く、翌朝の「モーニング」についての雑談にもDさんを人気者にさせているヒントが隠されています。それがバックトラッキングというテクニックです。

このバックトラッキングは言葉を同調させ、相手の潜在意識のなかに「ラポール」と呼ばれる親密な感覚をつくり出すテクニックです。やり方は非常にシンプル。オウム返しのように相手が言ったことをそのまま言葉で言い返すだけ。心掛ければ誰でもすぐに使えるようになります。

このシーンで言えば、先輩の「うまいっていうあの店?」に対して、「そう。うまいっていうあの店、です」と返すやりとりがバックトラッキングです。

(例)
「この間の休み、初めてヨガ教室に行ってみたんだけど」
「そうなんだ。この間の休みにヨガ教室へ行ったんだ」

こんな感じで、「ヨガ教室どうだった?」といった質問の前に、相手の会話を繰り返すことで親近感をつくり出せるだけでなく、「あなたの言ったことをちゃんと聞いています」「受け止めました」と伝える効果も得られます。

人は誰しも自分の話をきちんと聞いてくれる相手に好感を覚えるもの。バックトラッキングを使いこなせるようになると、その手軽さからは想像がつかないほど、相手へのあなたの印象を高めてくれます。

続いて、Dと先輩の会話を聞きつけた課長が登場。相手が「これはいい」と言ったことをすぐに実行すると、それはお互いにとっての強い共通点に変わります。そして、共通点はラポール(親密な信頼関係)を深め、相手との関係性はビジネス上の付き合い以上のものへと変化していくのです。

当然、このシーンでも課長はDが遅刻ギリギリだったことをたしなめることもなく、機嫌よく自席に戻っていきました。

相手が自分のオススメに従って行動してくれることは、本人の承認欲求を満たします。しかも、その体験を第三者に対して、楽しそうに語っているのを耳にすれば、その効果はさらに増大。直接、課長に報告するのではなく、先輩との会話を聞かせるというDの作戦は、見事なものです。

プレゼントは安くて些細なモノのほうがいい

エピソードの後半に入ると、Dが会社のボスである社長ともつながりをつくっていることが見えてきます。そこで使われているのは、「会えば会うほど親しみが増していく」という単純接触効果と、「親切にされるとお返しをしたくなる」という返報性の法則

私自身、企業での研修やコンサルティングを通じて、経営者の方々と交流していますが、意外なほど彼らは忙しそうに見えません。本当は分刻みのスケジュールをこなしている日でも、リラックスしている。それは人を束ね上に立つ人たちは、社員の数倍から数十倍の処理能力を持っているからです。

総じて能力が高いから忙しいスケジュールを難なくこなすことができ、スキマ時間をつくっては自由に動いています。

ですから、社長とコンタクトをとり、単純接触回数を増やしていくのはさほど難しいことではありません。

ただし、頼み方にはコツがあります。基本的には忙しい人たちですから、時間を短く区切ること。たとえば、「社長、2分だけ時間をいただけませんか?」と時間を区切った状態で、立ち話をする。それこそ、エレベーターに乗り合わせたときに自己紹介をする。予あらかじめ社長のスケジュールを調べておけば、そういう短時間の接触回数を増やすことができます。

そうやって親密度を上げつつ、このケースのように社長の趣味の話などで関係を深めていき、返報性の法則も絡めていく。重要なのはギブにギブを重ねることです。

プレゼントは意外なものや高価なものである必要はありません。理由付けが大切で、このケースで言えば、社長自らが社内報で明かした和菓子好きという趣味に関連した情報や和菓子そのものが最適。理由がはっきりしているので、受けとる側ももらいやすく、また素直に好意を受け止めることができます。

高級なものやめずらしいものは贈るものとしての意味が重く、素直に受けとりにくいもの。大阪のおばちゃんが「飴ちゃん」を持ち歩き、ちょっとした親切に対して配り歩くように、さっと受けとれるものを渡すほうが効果的。

小さな好意が上積みされることで、まるでドラマや映画の登場人物のように、トップとコネクションを持った平社員といったポジションを築くことも可能になります。

 

PROFILE
メンタリストDaiGo

人の心を読み、操る技術“メンタリズム”を駆使する日本唯一のメンタリスト。テレビ番組への出演多数。外資系企業の研修やコンサル、教育誌への連載なども手掛けている。主な著書に『メンタリズム 恋愛の絶対法則』(小社)、『人を操る禁断の文章術』(かんき出版)、『一瞬でYESを引き出す 心理戦略。』『男女脳戦略』(ともにダイヤモンド社)など。ベストセラー多数、著書は累計で80万部を超える。