「自分で考えようとしない問題部下」はたったひと言で変えられる

困った部下

説明したはずなのに、その後何度も同じことを質問してくる部下……。このような、「常に上司の判断をあおぐロボット社員」には困ってしまいますが、どのように対応すべきなのでしょうか? ビジネスコンサルタントの大塚寿氏に、“たった一言”で変わる対処法を教えてもらいました。

質問するのは理解していないからではない

部下・後輩が、「なんでも聞いてくる」のは歓迎すべきことですし、会社によっては育成期間の新人に「1日5つの質問」を義務づけている例すらあります。義務づけしてしまえば、「忙しくしている先輩に聞きづらい」という状況を、ある程度防ぐことができるからです。

しかし、ここで問題にしたいのは「自分で考えず」の部分です。特に、物心ついた時代からスマホが手元にあって、検索するだけで知りたい情報が簡単に手に入る時代に育った部下や若手社員には、「自分の頭で考える」ことに慣れていない人も散見されます。

これは今に始まったことではありませんし、30代、40代になっても「自分の頭で考えない」人もいますが、未来のある部下には「自分の頭で考える」ことを常識として持っておいて欲しいわけです。

もっというと、昨今の現象として、自分で調べれば分かること、自分で考えて欲しいことを、繰り返し何度も聞いてくる部下や後輩が増えていると指摘されています。問題は同じようなこと、前にしっかり指導したり説明したことを、再び、初めてのことのように聞いてくるということです。

例えば、IT業界に勤務する7年目のAさんは、指導している部下のBさんに、議事録の書き方や単体テストの手順を繰り返し見本を示しながら説明し、やらせてみせてフォローを繰り返しました。

ある日、一人でできるようになったかと思い、任せようとしたら「これってどうすればいいですか?」と聞かれて困惑してしまいました。

前に同じことを説明したり、見本を示して解説していて、しかもBさんはそのメモを取っていたはずです。

メモを読み返すなり前にやったものを見返すなり、振り返れば分かるはずなのに、自分で考えたり調べたりする前に、「まずは聞いてくる」Bさんにどう対処すればいいのか、Aさんは迷ってしまいました。

昭和の時代であれば、「同じことを何度も聞いてくるなよ」とストレートに指摘する先輩も少なくありませんでしたが、現在、そんな言い方をしたら部下は萎縮してしまいますし、効果も限定的です。

では、どうすればいいのでしょうか?

「で、〇〇さんは、どういうやり方でやってみたい?」という「質問」というコミュニケーションの様式を用いるのがベストです。この質問の意図は、まずは自分で考えさせること。こう質問すれば、相手は反射的に自分の頭で考えて回答するようになります。短い言葉で「(相手が)まずは自分で考えてから相談する」ように促せることが、このフレーズが選ばれる理由です。

次は、その部下との緊密さによりますが、信頼関係がしっかりしている場面では、「で、〇〇さんは、どうしたいわけ?」というセリフが多頻度で用いられてきました。

しかし、「わけ?」で終わると相手が「詰められている」という感触を持ってしまうリスクがあるので、相手との関係性を勘案して使用してください。

部下や後輩が受け身なのには理由がある

指示したこと、アサインしたタスクはすべて及第点以上の成果物になっているし、スキルもモチベーションも平均以上であることは間違いないのですが、指示をしないと何もしないし、それがまずいとも思わない部下・後輩、若手が急増しています。

「指示待ち族」とはよく言ったものですが、「〇〇さんはちょっと受け身なところが目につくから、もう少し能動的、自主的に仕事に取り組んでね」と、できていないところを指摘しただけで、本人の行動変容が引き出せるなら、こんなに楽なことはありません。

昭和の時代、私も2年目だった時、「ブラザーシスター制」というOJTの仕組みの中で新人の指導員を1年やりましたが、私自身がそんな先輩だったという記憶が残っています。部下育成、新人の育成の場面でよくやりがちなのが、「逆の言葉」を使ってすませることです。

この場面では受け身、受動的の逆の「能動的」、「積極的」という言葉を用いて、相手に要望することです。

しかし、残念ながら、言葉を逆にしただけで、相手の行動が変わるはずはありません。では、どうすればいいのでしょうか。部下や後輩が受け身なのには理由があります。能動的、積極的な動きへの行動変容を促すには、本人による自己決定、つまり、「能動的な行動をする」と自分に約束させる強いエネルギーが必要になります。

それには「なぜ、能動的、積極的な動きをしなければならないのか」について自分自身が納得する動機が必要です。

もっとも強い動機というのは「それが自分のやりたいことだから」に違いありません。私たちが趣味に没頭するのは、それが自分の好きなこと、やりたいことだからです。

部下の「働く動機」に着火する

人は「やりたいこと」をやる時がもっともモチベーションが高まります。この特性を部下や新人の育成に利用しない手はありません。

ある通信会社でMA(マーケティング・オートメーション)の部門の業績を急伸させたCさんも、新人時代は、配属された技術部門の上司から「言われたことしかしないロボット社員」と目されていました。

上司の目には、Cさんは地頭はいいけれど、自らは動こうとしない受け身な部下に映っていたので、半期の評価面談の際に「Cさん、ホントは何がやりたくてこの会社に入ったの?」と聞いてみたのです。

正直、きっと「特にありません」と返答するんだろうな、と思いつつ聞いたのですが、予想もしない言葉が返ってきました。「MA(マーケティング・オートメーション)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)がやりたくてこの会社に入りました」と言うではありませんか。

正直、驚きました。そんな最先端の分野に興味を持っていたとは。ちょうど、Cさんの会社の営業部門にも顧客からMAやDXに関する相談が増えてきており、対応する技術部門でも専門部隊を設立する動きがありました。

そのことをCさんに話すと、表情がパッと明るくなり、その専門部隊でぜひ仕事がしたいと言うのです。

上司にとっては同じ部門ですし、今後成長する分野でしたので「渡りに船」ということで、Cさんをその部隊に入れてみたのです。すると、どうでしょう。以前とは全くの別人で、すでに情報を収集し勉強していた各国の先進事例を紹介する勉強会を主催し始めたのです。

各社のセミナーに片っ端から参加し知見を蓄積していたため、顧客のお困りごとや課題のヒントになる話ができる技術者ということで、営業から重宝されるようになっていきました。

そもそもがマニアですから、やたらと詳しく、お客様が知りたいことに的確に回答できるのです。

Cさんにとっては、お客様の前で自分の知っていることを話し、役に立ちそうな提案をするだけで、「ありがとう」と感謝され、自社の営業からも「ありがとう」という言葉をかけてもらえるため、自己効力感が満たされ、充実した日々が送れるようになりました。

さて、ここでは「働く動機」に着火させた事例を紹介しましたが、これは「頑張る動機」に置き換えてもかまいません。

私たち人間は、働く動機や理由、頑張る動機や理由が自分の中で明確になったとき、まるでスイッチが入ったように能動的にもなれるし、頑張れるようにできています。

ぜひ、この特性を部下や後輩の育成にも活かして欲しいと思います。

 

PROFILE
大塚寿

1962年群馬県生まれ。株式会社リクルートを経て、サンダーバード国際経営大学院でMBA取得。現在、オーダーメイド型企業研修、営業研修を展開するエマメイコーポレーション代表取締役。リクルート社の伝説の営業パーソンが講師陣に名を連ねるオンライン営業研修「営業サプリ」において「売れる営業養成講座」の執筆・総合監修を務める。著書に『リクルート流』(PHP研究所)、『“惜しい部下”を動かす方法ベスト30』(KADOKAWA)、ベストセラー『40代を後悔しない50のリスト』(ダイヤモンド社)、『50代 後悔しない働き方』(青春新書インテリジェンス)などがある。

 

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