なぜ節税のやりすぎはNG? 社会人が知っておきたい企業会計の基礎

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コロナ禍で世の中は一変し、先行きの読めない時代になりました。勤め先や関連会社がいつどうなるかもわかりません。そもそも会計的には、儲かっている会社であっても、資金繰りに失敗すると「倒産」の憂き目に遭ってしまいます。そのしくみについて、経営コンサルタントの藤原勝法さんに教えていただきました。

「儲かっているのにお金がない」状態が起きてしまう理由

利益がちゃんと上がって儲かっているのに、お金がない。こういう状態を「勘定合って銭足らず」と言います。損益計算上は利益が黒字なのに、手元の資金が不足してしまうという、理論と実際が一致しない状態です。

なぜそういったことが起こるのでしょうか。実は、この理屈を理解しないまま起業してしまうと大変なことになってしまいます。

このような状態が起こるのは、「損益」以外のことが大きく影響しているからです。次の例でご説明します。

4月に売上10万円、費用7万円、利益3万円が計上されたとします。

次の図の「事例A」は、翌月に入金(売掛金)と支払(買掛金・未払金)があった場合です。この場合は何も問題がありません。

問題は「事例B」のように、支払が回収より先行する場合です。このような状態では資金手当が必要になりますが、その資金調達ができず、支払不能に陥っています。「勘定合って銭足らず」です。

回収より支払が先行する取引条件は避けなければならず、もしあれば見直しが必要です。取引条件が正常だったとしても、資金が不足する場面が現れます。

家賃などの固定費は決まって毎月支出がありますが、これらの支払に回収代金が不足する場合です。

そうした資金不足が生じないように、「株主からの出資」や「銀行からの借入」などで予め資金を用意しておく必要があります。資金手当がうまくできず、支払不能となって企業が経済的に行き詰まる状態が「倒産」です。

倒産を避けるためには、利益だけにとらわれず、貸借対照表勘定の「入金時期」や「支払時期」をうまくコントロールしなければなりません。それがしっかり行われていると、上手な資金繰りができていることになります。

「黒字倒産」を避けるためには何が大事か

資金不足になるのを防ぐ手当として、一般的に行われるのが「銀行からの借入」です。創業したばかりで実績がなくても、各種の起業支援制度で借入できる場合があります。

事業の実績があって決算を経ていれば、赤字でない限り、借入はそんなに難しいことではありません。赤字の場合も、イノベーティブなビジネスで目利きのお墨付きを得られれば、融資が実行されることも珍しくはないでしょう。

しかし、ここで申し上げたいのは「どうか借入に頼らないでください」ということです。借入金はあくまでも「負債」だからです。借金はないに越したことはありません。

昨今の銀行はお金が余っていて融資先を探すのが大変という傾向にあり、支店長決裁で済む金額であれば、スンナリと融資が実行されることもあるでしょう。

そういうことから、ついつい借入に甘えても仕方のない環境ではあります。

融資を初めて受けるときはハードルが高く感じるものですが、「いざ実行してみると意外と簡単だった」という経験をお持ちの方もいらっしゃるはずです。しかし、経験済みの方はご存じの通り、借りるのは簡単でも、「借りた後」が大変なのです。

黒字倒産の多くは、事業規模に合わない借入をしてしまったことが原因で起こります。企業はまず自助努力することを心がけ、借入は慎重に行わなくてはなりません。

なぜ節税のやりすぎはNGなのか

私の知人の社長には、「創業以来、黒字決算を長く続けて、多額の税金を納めている」ことを誇りにしている方がいます。税務当局としては、まさに経営者のお手本といえる存在でしょう。

しばしば税理士さんの良し悪しは“節税ノウハウ”で測られることが多いですが、そればかりに気を取られるのも考えものです。

節税をせず、せっせと税金を納めましょうというつもりはないのですが、節税のやりすぎには注意が必要です。納税について、勘違いしている社長さんも少なくありません。実際に、こんなことを言う方がいます。

「今期は業績がすこぶる良かった。利益もたくさん出そうだ。このままだと、税金の額もスゴいことになる。税で持っていかれるくらいならお金を使っちゃおう」

こうした話は皆さんもよく聞くかもしれません。税金に取られるくらいなら、費用支出を多くして利益を減らし、課税額を低くするというのは、もっともらしく聞こえるかもしれません。

しかし「支出」が多くなるということは、税金として出るお金が他のものに変わったというだけです。少し考えればわかることですが、それは節税額以上の支出となります。

例えば、課税率を40%とします。利益が100万円のとき、税金は40万円です。

その税金を半分にするために、50万円の費用を支出することにしました。そうすると、利益は50万円となり、税金は20万円に減らすことができます。

それぞれ、残るお金はいくらでしょうか? 2つを比べてみます。

先の例:利益100万円-税金40万円=残金60万円
後の例:利益100万円-費用50万円-税金20万円=残金30万円

節税して得したつもりが、残るお金(=内部留保:利益の計上が積み重なり内部に貯まっていった資金)はむしろ減っているわけです。

当然ですが、「内部留保」が多いに越したことはありません。内部留保の金額が大きければ大きいほど、会社の安定性を示し、長く会社を存続させることができるのです。

 

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PROFILE
藤原勝法

経営コンサルタント。日本CFO協会会員。
株式会社nori-management代表。
愛媛県四国中央市出身。紙パルプ業界大手の大王製紙に入社し、管理部門にてM&A、企業買収先再建等の経験を積む。IT業界へ転身するもバブル崩壊に見舞われ、IPO直前だった会社が倒産の危機に。総額30億円の借入返済を3年間ストップする銀行交渉に携わり、のちに会社はIPOを達成する。
事業会社数社での取締役経験を持つほか、管理本部長、財務本部長、総務部長、財務部長、法務部長など管理部門の多様な役職を歴任。そうした経験とノウハウを中小企業の発展に広く役立てるべく独立。現在、中小企業の管理体制構築や銀行取引支援などを中心に、総合的経営コンサルティングを行っている。