開成の元校長が「ゲームをやったことのない親は不勉強」と言う理由

ゲームをする親子

特に男の子のお母さんにとって、夢中になって長時間ゲームをするわが子は理解を超えた存在かもしれません。「この集中力が勉強に向かえば……」と考えるのも無理のないことです。でもゲームを無理に子どもから遠ざけるのは、実は逆効果かもしれません。開成中高の校長を11年務め、現在は北鎌倉女子学園学園長である柳沢幸雄先生に、ゲームとのつき合い方についてうかがいました。

ゲームとどうつき合うか

前回は、「子どもが夢中になること、好奇心が向かうこと、本気で好きなことに出会うことが大事」とお話ししました。

そうすると、必ず親御さんから出てくるのが「夢中になることが、ゲームしかないんです…」「ゲームばかりやっていて、ほかに興味がないようです」というご相談です。

あえて言いますが、ゲームはとことんやらせてみてください。そのうえで「それだけゲームが面白いなら、今度は自分でつくってみなさい」と伝えるのです。つまり、それだけ消費できる能力があるということは、ゲームをつくる資質があるということです。

そこから、ゲームクリエイターという生み出す側になる可能性もあります。「それだけ魅力があるなら、それを超えるものをつくってみたら?」

これに乗ってくる子は、プロ並みに腕を上げるかもしれません。あるいは、eスポーツの選手になる可能性だってあります。

ただゲームを消費するだけでなく、そこからパソコンでゲームをつくったり、プログラミングにつなげたりしていく。むやみに制限するだけでなく、ゲーム好きという子どもの資質を生かすことも考えるべきでしょう。

これからの時代、身近にコンピュータのない生活はもうありえないので、ゲームとうまくつき合うのは非常に重要なことです。学校でもプログラミングの授業があり、授業でiPadを使うのも珍しくありません。それを禁止しても何の意味もありません。それよりも「どうやってつき合っていくか」を考えましょう。

ただし、時間を管理する必要はあります。

開成の校長時代のこと。2月に中学受験が終わった子は4月の入学まですることがないため、昼夜が逆転するほどゲームに夢中になる子が出てきます。合格発表の後の説明会でお子さんには次のように話していました。

「朝、誰かに起こされなければ起きられないうちは、21時以降はスマホやゲームをやらないこと。ただし、自分で朝起きられるのであれば、自分の裁量でやってもいい」と。

朝きちんと起きるのは責任ある大人への第一歩。つまり、責任を果たせるのなら自由があるということを伝えたのです。これで、昼夜逆転する子は激減しました。

ゲームをやったことのない親は不勉強

子どもがゲームをやることにいらだちを覚えている親御さんがいたら、ぜひお子さんと一緒にゲームをやってみることをおすすめします。私は、親はゲームをできなくてはいけないとさえ考えているのです。

子どもが興味をもっているものを、親が一生懸命身につけようとする。この姿勢があると親子の会話が始まります。一緒にゲームをやってみると、「◯◯って面白いね」「今どのレベルまで行った?」など、話のきっかけができます。また、「これはどうやってやるの?」と、子どもに教わるのもいいでしょう。

お子さんの年齢にもよりますが、きっと得意げに教えてくれるはずです。

さらに、親がゲームをやることで、子どもがハマっているゲームの背後にある危険性に気づけるというメリットもあります。次から次へと課金が必要になるゲーム、過激な内容を含むゲームをやっていないかどうかもわかります。

子どもが夢中になってゲームばかりをしているのは、その子にとって今まさにゲームの機が熟しているということであり、それが行動として表れているのです。

子どもの「好きなこと」は変わるもの

充実感、幸福感のある人生を送るには、好きなことをどれだけ自分の仕事に食い込ませることができるかが重要です。仕事は人生の重要事項ですから、そこでの好きなことの割合が高くなればなるほど、人生が心地よくなります。これが大前提。

それをふまえたうえで、稼ぐための具体的な職業は時代とともに変わることも心得ておいてください。つまり、その時代に合った職業を見つける必要があるのです。好きなことは野球かもしれないし、水泳かもしれないし、ゲームかもしれない。

いずれにしても、好きなこと、ハマっていることに対する努力は苦にならないはずです。

子どもの好きなものは実によく変わります。「小さいころは電車が好きだったのに、今は見向きもしないでゲームばかり」「小学校ではサッカーを頑張っていたのに、今はバスケ漬けの毎日」。このようなことはよくあります。

そんなとき、親はつい固執してしまい、「あれだけ好きだったのに、あんなに頑張ったのにもったいない」「ずっとやり続けることが大事なのに、もうやめちゃうの?」などと思いがちです。でも、「新しい好みが見つかったんだな」と暖かく見守ってあげてください。

子どもは知識量、経験量が乏しいので、今まで知らなかった新しいものに日々出会います。その知らなかった新しいものが魅力的であれば、今まで好きだったものが色あせて見えるのです。好みがコロコロ移り変わるように見えても、よく観察すると、どんな分野に興味や関心があるのかという傾向が見えてきます。

“私はこれができます”という武器をもつ

これから10年後、20年後を生きていく子どもたちに何が必要かといえば、それはたったひとつ、「私はこれができます」というものをつくること。それを見つける手助けをするのが親の仕事です。

前述した通り、「子どもが好奇心や興味を示した事柄をうまく吸い上げること」が重要になります。

もっとわかりやすく言えば、子どもがハマるものに出会ったら、迷わずとことんやらせるようにしましょう。それには、まず子どもの「好き」を見つける手伝いをすることです。

子どもが何かに好奇心や興味をもっていたら、何をしているのかをよく見てください。たとえば車や電車のおもちゃで遊んでいたとしても、乗り物が好きなのではなく、車の構造を観察するのが好きなのかもしれませんし、ものを組み立てたり、分解したりするのが好きなのかもしれません。あるいは頭のなかで、車や電車を運転していて、それが楽しいのかもしれません。

そのとき「◯◯をしているときは、楽しそうだね」「◯◯が好きなんだね」と声をかけてみるといいでしょう。子どもは「ああそうか、自分は◯◯が好きなんだ」と意識するようになり、将来の仕事に結びつくかもしれません。

 

PROFILE
柳沢幸雄

1947年生まれ。東京大学名誉教授。北鎌倉女子学園学園長、前・開成中学校・高等学校校長。開成高等学校、東京大学工学部化学工学科卒業。1971年システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。1974年退社後、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修士・博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、併任教授(在任中ベストティーチャーに数回選ばれる)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年から開成中学校・高等学校校長を9年間務めた後、2020年4月より現職。シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者。