元開成校長が断言! 子どもは「つけあがる」ほどグングン伸びる

自信のある子ども

「子どもはほめて育てる」。これまで何度も聞かされていることでしょうから、「そんなの子どもが小さいうちだけでしょ」と思われているかもしれません。でも、あなたが子どものしつけに今も悩んでいるなら、何歳からでも遅くはないそうです。あらためて今、ほめて育てることの大切さ、ほめ方の方法論を、開成中高の校長を長年勤めていた柳沢幸雄先生にうかがいました。

“つけあがる”と子どもはチャレンジする

ほめることで、子どもはどこまでも自信をつけていきます。言葉は悪いですが、「豚もおだてりゃ木に登る」で、どんな子でも、ほめられれば自分に適した道を自分で選んで進んでいくようになるのです。

最近、よく親御さんから受けるのが、「ほめられたいから“いい子”でいるだけじゃないんですか?」「ほめるとつけあがるのでは?」という質問です。

その答えは非常にシンプルで、「そうなったら考えましょう」です。

子どもが親に媚びていると感じたら、そのときに対応を変えればいい。まだほめてもいない段階で、「こうなったらどうしよう」などと心配しても仕方がないのです。

親御さん自身が自信をもって堂々とほめること。「子どものために、いいと思うことをやっているのだ」と思えるなら、まずやってみることです。

子どもをほめて、つけあがっていると感じたとしても、それでいいのです。「つけあがる」を別の言葉でいえば、「その部分に自信をもつ」ということでもあります。どんどんその分野に向かって走らせてあげてください。実はつけあがるのは非常にいいことで、つけあがることがチャレンジする力につながるのです。

子どもは基本的に好奇心や向上心のかたまりです。ほめられて安心してしまって、挑戦しない、ということは子どもにはありえません。

ほめるとは親の価値観を伝えること

実は、親の価値観を効果的に伝える方法が「ほめること」なのです。ほめることで、けっして押しつけがましくなく、「子どもにこうあってほしい」という思いを伝えることができます。

たとえば子どもがお手伝いをしてくれたら、「よくできたね。助かったわ、ありがとう」とほめれば、子どもは「お手伝いをすると喜ばれるのだ」とわかります。また、試合に負けて落ち込んでいたときも、「結果は負けてしまったけど、あなたがあきらめずに頑張ってきたのは知ってるよ。その努力がすごいと思うよ」と伝えれば、「結果よりも、頑張ってきた過程が大事なんだな」とわかります。

こうあってほしいという親の願いと、子どもの行動が一致したとき、親はほめます。だからこそ、親の価値観や願いが伝わるともいえます。

ただし、注意が必要なのは、結果だけをほめないこと。「試験に合格した」「100点をとった」といった結果に対してだけほめてしまうと、試験に受からない自分はダメ、90点の自分では親に認められない、と思ってしまいます。結果ではなく努力した過程や、その行動そのものをほめるようにすれば、子どもの自信につながります。

親御さん自身がほめられて育っていないから、ほめ方がわからないという人もいます。たしかに日本人はほめることが苦手です。「あれもダメ、これもダメ」と否定し、足りないことを指摘して叱る文化だからです。肯定するより否定したほうが、なんとなく親の権威がありそうに見える、つまり偉そうに見えるからではないでしょうか。

もっといえば、教えないことが本当の教え方だ、という向きもあります。でもこれは、ただ親が楽をしているだけ。「背中を見て覚える」などともいわれますが、これも大人にとって非常に都合のいい言葉です。「俺の背中を見て覚えろ。俺は30年これでやってきたんだ」などと言われても、30 年見ていないと身につかないことなんて、誰もやりません。人類3000年の知恵や知識を身につけるのに、3000年の時間をかけるわけにはいかないのです。

教育とは、経験値をいかに短い期間で次の世代に伝えるかという技術なのです。

子どもの過去との「垂直比較」でほめる

親は誰でも子どもをほめる才能があります。子どもを否定しないための親の心構えとして重要なのは、子どもの「過去」と「現在」を比較すること。私はこれを「垂直比較」と呼んでいます。

私たちがよくやってしまうのは、子どもと友だちを比べたり、きょうだいを比べたりする「水平比較」。これはやってはいけないうえに、最も意味のないことです。

お子さんと友だちは別の人間ですし、同じ親に育てられたきょうだいであっても、もちろん別の人間です。成長のスピードや度合いは人それぞれ。「あの子はあんなにできるのに、なんであなたはできないの?」と責めるのは、カメに対して「なんでうさぎのように速く走れないの?」と言っているようなものです。

それに対して、垂直比較をすればわが子は確実に成長しているとわかります。子どもの半年前、それどころか一週間前と比較してみてください。子どもは、どこかの部分で必ず成長しています。成長している点を具体的に言葉に出してほめてあげると、子どもは心地よく感じるものなのです。

実はこの垂直比較、親御さんなら誰でも自然にやっていたはずです。それは、お子さんが赤ちゃんのときのことを思い出せばわかります。

首もすわらず寝返りも打てなかった赤ちゃんが、やがてハイハイをして自分で動くようになった。このとき親は、「うまい、うまい」「ハイハイできたね!」「すごいね」といってほめまくったはずです。

「這えば立て、立てば歩めの親心」ということわざがありますが、子どもの成長はただただうれしく、待ち遠しいものなのです。

やがてつかまり立ちをして、一人歩きもできるようになる。昨日より今日、できることが増えて、素直にうれしかったはずです。そんなお子さんに、「もっとまっすぐ歩けないの?」「もっと上手に動いて!」などと要求するでしょうか。

求めることが多くなると、叱ることも増えてきます。乳児期までは無意識にできていた垂直比較。ところが親はいつしか他の子と比べて叱るようになり、子育てがしんどくなってきます。それがいつの間にかエスカレートして、別の人と比べずにはいられなくなってしまうのです。

子ども一人ひとりの人格を尊重して、垂直比較のまま成長を喜ぶことができるかどうか。これがとても重要です。垂直比較は、子どもが生まれたときから現在までの成長をずっと見てきた親御さんだけができること。

「前はできなかったけど、こんなことができるようになった」。こんなほめ方ができるのは、学校の先生でも、近所のおばさんでもなく、親御さんだけであり、親である特権でもあります。

 

PROFILE
柳沢幸雄

1947年生まれ。東京大学名誉教授。北鎌倉女子学園学園長、前・開成中学校・高等学校校長。開成高等学校、東京大学工学部化学工学科卒業。1971年システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。1974年退社後、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修士・博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、併任教授(在任中ベストティーチャーに数回選ばれる)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年から開成中学校・高等学校校長を9年間務めた後、2020年4月より現職。シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者。