「パンが落ちるときバター面が下になる」は物理で考えれば当たり前

物理というと学生時代の難解な数式を思い出して「難しいもの」と敬遠してしまいがちですが、実は私たちの生活は物理法則であふれています。よく起こるけど、なんとなくそのままにしていた二つの疑問について、図解でわかりやすく説明します。

「パンが落ちると、バターの面は下になる」の法則

「世の中、なんで不幸なことばかり」そう、思うことは少なくないはず。たとえば、バターを塗ったパンを誤って落としてしまうと、たいていバター面が下になって落ち、床を汚してしまいます。

なんと、これに法則名がついていました! 「マーフィーの法則」といい、クスっとほほ笑んでしまう世界的に有名な法則の1つです。この現象を科学的に研究した人がいます。イギリスのアストン大学ロバート・マシューズがその人。

どんな結果になったのでしょう。

ふつうに考えると、パンが落ちたとき、バターを塗った面が上になるか下になるかは、ほぼ半分、50%ずつの確率だと思うもの。

しかし、マシューズ氏は、実際に何度も食卓からパンを落として調べました。その結果、この確率がそのまま当てはまるわけではないことを証明しました。

まず、パンが落ちる前は、バターを塗った面が上になっています。その状態から食卓の上をすべらして落とすと、パンは、重力と空気抵抗を受けて、回転しながら落ちます。

このとき、もしパンが90度回転する前に床に落ちたら、バターの面が上になって落ちる確率が高い。パンがさらに90度(180度)回転するまでに落ちたら、バターの面が下になって落ちるでしょう。さらに90度(270度)回転するまでに落ちたら、これもバターの面が下になって落ちることになります。

図解

つまり、90度から270までの回転では、バター面が下になって落ちるのです。そして、通常の高さの食卓から落とすと、90度から270度までの回転で落ちる可能性が高いというわけです。

図解

床に落としたパンは食べられなくなります。くれぐれも実験をしないように。

スピードガンで球速を測れるのは「ドップラー効果」のおかげ

テレビで野球を観戦していると、ピッチャーの投げたボールの速度(球速)が、一瞬で出てきます。この球速っていったいどのようにしてはかっているのでしょうか。

「カメラで撮影して一瞬で計測している?」「ボールに速度をはかる装置がある、とか?」など、いろいろと推測して、謎のままにしていませんか?

たとえば、自動車に乗っているときの速度は、走った距離を時間で割れば出てきます。60㎞を走るのに1時間かかったら時速60㎞ということになります。車の場合は、車輪の回転数から走行距離がわかるので、スピードメーターに表示され、運転手はすぐに速度を知ることができます。

空を飛ぶ飛行機はどうでしょう。飛行機の場合は「ピトー管」という空気の圧力をはかる装置があって速度がわかるようになっています。

野球ボールは、このような装置はないので、外から速度をはかる必要があります。冒頭の答えは、球速をはかるのに「ドップラー効果」を利用していたのです。

ドップラー効果? どこかで聞いたことがありますよね。

救急車やパトカーがこちらに近づいてくると、サイレンの音が高くなり、通り過ぎていくと、サイレンの音が低くなります。これ、ドップラー効果のしわざです。

そもそもドップラー効果がどのように起こるのか、おさらいしておきましょう。

音は、空気が振動して「波」として伝わります。静止している救急車から出るサイレンの音は、水たまりに石を落としたときにできる波紋のように、前も後ろも左も右も同じ波長で伝わっていきます。

ところが、救急車が前進すると、前方に伝わっていく音波の波長は短くなります。波長と周波数は反比例するので、前方へ伝わる音波の周波数(1秒間の波の数)が高くなります。周波数が高いと音は高く聞こえるため、こちらに近づいてくる救急車のサイレンの音は高くなります。

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逆に遠ざかっていくと低い音として聞こえてきます。後ろに伝わっていく音波の波長が長くなり、波長と周波数は反比例するので、周波数が低くなるためです。

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PROFILE
久我勝利

1955年神奈川県生まれ。出版社の編集者を経て独立。主に科学系の分野で執筆活動を展開。やさしくサイエンスの面白さを伝える。またテレビの企画・リサーチも手がけている。『絶対、人に話したくなる「時間」の雑学』(PHP研究所)、『死を考える100冊の本』(致知出版社)など、著書多数。