基地局ひとつで多数のスマホが通話できる驚きの仕組み[身近な物理]

物理というと学生時代の難解な数式を思い出して「難しいもの」と敬遠してしまいがちですが、実は私たちの生活は物理法則であふれています。今まで当たり前に考えていたけど、よく考えると不思議な生活上の二つの疑問について、図解でわかりやすく説明します。

いくつもの電波を使っているわけではない

いまや私たちの生活に欠かせなくなったスマホ。「高性能カメラ機能」「ネット通話」、さらに「お財布機能」まで、信じられないほど便利な道具になりました。

ところで、これほど多くの人がスマホを使っているにもかかわらず、他の人の通話が聴こえるなど、混線しないのでしょうか。

電話をかけると、まず、いちばん近くの無線基地局に電波が送られます。無線基地局はビルの上などに設置されています。これらの無線基地局でとらえられた電波は、無線基地局同士を結ぶ交換局に伝えられます。

すると、移動通信制御局で、相手のスマホがどこにあるか探し出し、いちばん近い無線基地局から相手のスマホにつながります。

さて、スマホで使える電波は、それぞれの通信事業者に割り当てられています。しかし、これだけ利用者がいるのですから、利用者一人ひとりに違う電波を割り当てることはできません。

そこで考えられたのが、同じ電波を何人かで共有する方法。

たとえば、電波を共有しているのが3人だったら、時間を3分割して、Aさんの次はBさん、Bさんの次はCさんというように時間を細かく刻んで電波を送っているのです。

そんなことをしたら通話が途切れるのでは? と思うかもしれませんが、切り替えの時間が速いので、利用者は音声が途切れず連続的に聞こえる、というわけです。

電波の仕組み

野球中継で球速が一瞬でわかるのはどんな仕組み?

テレビで野球を観戦していると、ピッチャーの投げたボールの速度(球速)が、一瞬で出てきます。この球速っていったいどのようにしてはかっているのでしょうか。

「カメラで撮影して一瞬で計測している?」「ボールに速度をはかる装置がある、とか?」など、いろいろと推測して、謎のままにしていませんか?

たとえば、自動車に乗っているときの速度は、走った距離を時間で割れば出てきます。60㎞を走るのに1時間かかったら時速60㎞ということになります。車の場合は、車輪の回転数から走行距離がわかるので、スピードメーターに表示され、運転手はすぐに速度を知ることができます。空を飛ぶ飛行機はどうでしょう。飛行機の場合は「ピトー管」という空気の圧力をはかる装置があって速度がわかるようになっています。

野球ボールは、このような装置はないので、外から速度をはかる必要があります。冒頭の答えは、球速をはかるのに「ドップラー効果」を利用していたのです。

ドップラー効果? どこかで聞いたことがありますよね。

救急車やパトカーがこちらに近づいてくると、サイレンの音が高くなり、通り過ぎていくと、サイレンの音が低くなります。これ、ドップラー効果のしわざです。

ドップラー効果

そもそもドップラー効果がどのように起こるのか、おさらいしておきましょう。

音は、空気が振動して「波」として伝わります。静止している救急車から出るサイレンの音は、水たまりに石を落としたときにできる波紋のように、前も後ろも左も右も同じ波長で伝わっていきます。

ところが、救急車が前進すると、前方に伝わっていく音波の波長は短くなります。波長と周波数は反比例するので、前方へ伝わる音波の周波数(1秒間の波の数)が高くなります。周波数が高いと音は高く聞こえるため、こちらに近づいてくる救急車のサイレンの音は高くなります。

逆に遠ざかっていくと低い音として聞こえてきます。後ろに伝わっていく音波の波長が長くなり、波長と周波数は反比例するので、周波数が低くなるためです。

スピードガンの仕組み

 

PROFILE
久我勝利

1955年神奈川県生まれ。出版社の編集者を経て独立。主に科学系の分野で執筆活動を展開。やさしくサイエンスの面白さを伝える。またテレビの企画・リサーチも手がけている。『絶対、人に話したくなる「時間」の雑学』(PHP研究所)、『死を考える100冊の本』(致知出版社)など、著書多数。