50歳を過ぎたら定期的に検診を受けたい部位は?「がん」対策の真実

がんのリスクは、年齢が上がるにつれて高まる一方で、性別・年代によって罹患しやすい部位が異なるという側面もあります。定年が気になり始める50歳前後は、がん対策を考えるひとつのポイントになりそうです。がん検診の専門家である中山富雄先生に、お話を伺いました。

がん検診へのモチベーションは、がんを知ることから

自治体のがん検診には補助があり、自己負担の額は自治体や検査によって異なります。厚生労働省の「市区町村におけるがん検診の実施状況等調査結果」(2008年)の調査によると、肺がん、大腸がんは1000円以下、子宮がん、乳がんは500~2000円の自治体が多かったようです。ただ、胃がんは2500円以上の自己負担という自治体も結構ありました。

自治体ごとのがん検診の受診率を調べていたとき、ずば抜けて高い自治体を見つけました。東の横綱は東京・港区。西の横綱は大阪・箕面市。私は大阪の出身ですから「箕面市」が「お金持ちがぎょうさん住んではる」セレブの街なのはよく知っています。港区も高級住宅地として全国的に有名なので、2つが並んでいるのを見て「さては」と検診受診料を調べてみると、案の定「無料」。

受診率が高いのは「お金持ちは健康意識が高い」という側面もあるでしょうが、検診の自己負担額が「0円」であることが大きいでしょう。その他の地域を調べてみても、無料だと受診率が高いことがわかりました。

OECD加盟国でがん検診を実施している国のうち、検診にお金をとるのは日本ぐらいなものです。よその国のがん検診受診率が高いのは、金額的なことも無関係ではありません。金額はがん検診の受診率に反映されます。タダであれば受ける人も増えるでしょう。

とはいえ、新型コロナウイルスで財政的に苦しくなる自治体は増える一方で、検診をタダにする体力はもはやないと思えます。

そこで、がん検診へのモチベーションを上げるには、がん検診の意義を知ること。実は、性別や年齢によっても、かかりやすいがんのリスクは異なります

性別・年齢によってかかりやすい「がん」は変わる

自治体のがん検診は対象年齢や部位が決まっています。こつこつ積み上げたデータを詳細に分析し、「検診で見つけられる可能性があるがんはコレ、これらのがんになりやすい年齢はコレ!」と決め打ちしているからです。

仕事をしている年齢では、男性に比べて圧倒的に女性のほうが、がんが問題になります。男性のがんが増えるのは、そろそろ定年後のことを考え始める50代以降。50歳を過ぎたら、胃・肺・大腸の検診は定期的に受けてください。

大事なことは、それまでにタバコをやめ、過度な飲酒やストレスを避け、身体の免疫力を落とすような生活習慣を改善しておくこと。がん細胞は発生してから発見されるほどに大きくなるまで10年以上かかります。がんになる人が増える50歳になってからの対応では遅いのです。

女性の場合はがんとの関係は年代ごとに変わっていきます。20代では子宮頸がんが増えます。若い女性には抵抗があるかもしれませんが、将来の妊娠出産に大きく関わってくるので、ぜひ検診を受けるようにしてください。若いと検査の重要性がピンとこないかもしれませんから、親御さんは20代の娘さんへの積極的な後押しが必要かと思われます。

さて、女性は子宮頸がんのリスクが落ち着いたら、40代になると乳がん、50代以降は男性同様に胃・肺・大腸がんが気になってきます。

ぜひ、意識していただきたいので、わかりやすく一覧にしてみましょう。

[男性]の場合
・ 20~40代……がんのリスクは小。将来のがんリスクを小さくするため、タバコは吸わず、お酒はたしなむ程度、ストレスをためず適度な運動を習慣に
・ 50代以降……がんのリスクが上昇し始めるので、胃・肺・大腸がん検診を適切な間隔で受ける。定年退職後に健診や検診から遠ざかることがないように

[女性]の場合
・20~30代……子宮頸がん検診
・40代……乳がん検診
・50代以降……男性同様、胃・肺・大腸がんのリスクが上がるので検診を忘れずに

親から子へ、ぜひ検診のすすめを

一家のお母さんがとにかく忙しいのは、重々承知しています。専業主婦が時間があるなんて勘違いもいいところで、子ども、夫、親の介護、地域と、異なる性質の案件を一気に回している敏腕営業ウーマンです。以前出演した番組で「検診の時間がない」とおっしゃる主婦のスケジュール帳が、本当に隙間なく土日も関係なくビッシリ埋まっているのを見て仰天しました。

ご自分のことを後回しにしているのもわかります。それでも、お母さんご自身も含めて、家族のがん検診の指揮官になってもらいたいと願わずにはいられません。どら息子を「酒、タバコやりすぎや!」と、どやせるのはお母さんだけ。20代の娘さんに「お母さんからのお願いや。子宮頸がんの検診、受けて」と強くすすめられるのはお母さんだけ。海外で若い女性の子宮頸がんの受診率が高いのは、お母さんからの習慣もあります。

お母さんと一緒であれば娘さんも安心です。ただ、海外では性教育の延長線上に子宮頸がんの検診がありますが、日本ではまだオープンに性を語る雰囲気ではありません。性感染症である子宮頸がんと、我が子を結びつけたくない親はたくさんいます。

でも、かわいそうなのは両親の思い込みで検診を受ける機会を失い、がんの早期発見・早期治療のチャンスを失う子どもです。将来的な結婚や妊娠出産に、確実に暗い影を落とします。

娘さんが子宮頸がんの検診を何度か受けるようになる頃には、親御さんのほうはそろそろ50代に入るのではないでしょうか。そうしたら、ご夫婦で手をつないでがん検診に行きましょう。

がん検診は「うまく利用する」ことがポイントです。ただし、残念ながら検診によってすべてのがんを見つけられるわけではありません。だからこそ、「検診を受けているから大丈夫」と思わずに、身体の不調のサインを見逃さないようにしていただきたいと思います

 

PROFILE
中山富雄

1964年生まれ。大阪大学医学部卒。大阪府立成人病センター調査部疫学課課長、大阪国際がんセンター疫学統計部部長を経て、2018年から国立がん研究センター検診研究部部長。NHK「クローズアップ現代」「きょうの健康」、CBCテレビ「ゲンキの時間」などのテレビ番組や雑誌などを通じて、がん予防、検診に関する情報をわかりやすく伝える活動を行っている。