高齢者にも“ダメ”はNG! 認知症を食い止める声かけの言葉10選

高齢者

前回の記事で、認知機能を上げるには介護をする方の話し方が大切だとお伝えしました。「でも、具体的にどう声かけをすればいいのかわからない…」という方に向けて、より具体的なセンテンスや話し方のヒントをご紹介していきます。患者とその家族に30年以上寄り添ってきた、医学博士の吉田勝明先生に教えていただきました。

もう声かけに困らない、対応に悩まない

うまく会話ができない誰かと一緒にいるのは、どんな人にとってもつらいものです。

ここで紹介する話し方のヒントは、「認知症の症状の進行を抑える」ことを目的にしていますが、話し方のコツをつかんでいただければ、認知症の方と話す歳に介護者の方のストレスも減るはずです。

介護者の方も認知症の方も、もう少しだけラクになれます。ぜひ試してみてください。

1 挨拶をするとき(朝・昼・晩)

対応のヒント
朝昼晩の挨拶は、会話の糸口になり、認知機能の悪化防止にもつながります。毎日欠かさず行いましょう。

声かけの例
「おはよう。いい天気ですよ!」
「こんにちは。顔色がよくてよかった」
「こんばんは。これから夕飯にしますね」

NGな声かけ
(寝ているのに大声で)「おはようっ!」→ビックリしてしまう
(朝昼晩問わず)「元気?」「どうも~」→時間感覚が乏しいのが、少し残念

2 ご飯を食べるとき

対応のヒント
いちばん大切なのは、急せかさないこと。食べさせるのではなく、笑顔で「一緒に食べよう」という明るい雰囲気を出しましょう。

声かけの例
「おいしそう!」「お昼ご飯ですよ。さぁ、一緒に食べましょう」
(箸の使い方がわからずまごついている人に)
「フォークを忘れてごめんなさい! ちょっと待っててね」

NGな声かけ
「早く食べてくださいよ、片付けがあるんだから」→急かすのはやめましょう
「箸があるでしょ? 何をボーッとしてるの」→高圧的&否定的な言い方はNG

3 外へ出かけるとき

対応のヒント
認知症の方を引きこもりにしては、症状を悪化させるだけです。脳に刺激を与えるためにも、外出したくなる声かけを。

声かけの例
「明日はデイサービスですよ、楽しみですね!」
「久しぶりに、〇〇デパートに買い物に行きませんか?」

NGな声かけ
「シネコンに行きませんか?」→新しい言葉&カタカナ語はできるだけ置き換えましょう
「たまには外に出なくちゃダメですよ」→前向きな言い方に変換を

4 トイレに行きたそうなとき

対応のヒント
強制的にトイレに連れて行くのは避けましょう。「一緒に行きましょう」など、やさしい声かけで誘導します。

声かけの例
「そろそろトイレに行きませんか?(+ジェスチャー)」
「おはようございます。トイレに行って、顔を洗ってサッパリしましょうね」

NGな声かけ
「早くトイレに行ってきてください」→急かさない
「すぐに行かないともれちゃいますよ」→脅しはやめましょう

5 同じことを何度も聞いてくるとき

対応のヒント
記憶障害の典型的な症状。やんわり指摘して、同じことを聞いていることを認識してもらうとよいでしょう。

声かけの例
「それは〇〇ですね。さっきも同じことを言っていましたよ」(やんわり、やさしく)
「私が覚えておくから大丈夫! 心配しないで」

NGな声かけ
「さっきも言ったでしょ! 何度も言わせないで!」→叱責すると不安と悲しみが増すばかり
「これで5回目! いい加減にしてください」→非難しても悲しい気持ちが残るだけ

6 「お金を盗られた」と言ってくるとき

対応のヒント
物盗られ妄想への対応ポイントは、共感すること。本気で困っている認知症の方の心に、しっかり寄り添うことが大切です。

声かけの例
「大事なお財布がなくなったんですか? それは心配ですね」
「大変! 一緒に探しましょう」

NGな声かけ
「私が盗ったって言うんですか!」→反論はダメ
「どこかに置き忘れたんじゃないの?」→否定も×
「またなの!」→非難は逆効果

7 間違ったことを思い込み、譲らないとき

対応のヒント
反論しても問題解決にはならず、しこりになるだけ。物理的に距離を取り、上手にクールダウンしましょう。

声かけの例
「すみません、ちょっとトイレに行ってきますね、すぐ戻ります」(と、部屋を出る)
「はい、わかりました。ところで、のどが渇きませんか? お茶を入れてきましょうか」

NGな声かけ
「違いますったら!」→口ゲンカしてもこじれるだけ
「はいはい、そうでしょうとも」→小バカにした態度は伝わる

8 入浴を嫌がるとき

対応のヒント
入浴を嫌う理由ごとに対処法もさまざま。強制すると嫌がられるだけなので、入浴に前向きになるよう工夫をしましょう。

声かけの例
「今日はユズ湯ですよ。ゆったり湯船につかりませんか?」
「脱衣所で待ってますから、何かあったら呼んでくださいね」
「足湯だけでもいかがですか?」

NGな声かけ
「不潔だからお風呂に入って」→「不潔」は否定と辱めに
「お風呂に入らないとダメ!」→強制は反発を生む

9 徘徊するとき

対応のヒント
ともかく一人にしないことが大事です。一緒に歩き、ある程度満足したら帰宅を促してみましょう。

声かけの例
「一緒に行ってもいいですか?」
「かなり歩いたから、のどが渇いたでしょう。うちに帰ってお茶でも飲みませんか?」

NGな声かけ
「どこに行く気? 戻ってください」→命令には従わない
「勝手にうろうろしないで!」→叱責は意味なし

10 車の運転をやめてくれないとき

対応のヒント
運転免許証の返納を納得してくれるのがいちばんですが、事故を未然に防ぐためにも、運転できないよう知恵を絞りましょう。

声かけの例
「買い物なら、私が連れて行くから安心して」
「今まで家族のためにたくさん運転してくれてありがとう」

NGな声かけ
「もう運転するのは無理。免許を返すしかないんだよ!」→怒鳴っても話がこじれるだけ
「誰かにぶつかったらどうするの!」→運転には自信があると反論される

 

 

PROFILE
吉田勝明

1956年福岡県生まれ。医学博士。日本老年精神医学会専門医、精神科専門医。金沢医科大学医学部、東京医科大学大学院卒業。上尾総合中央病院などで勤務後、横浜相原病院を開設し、院長を務める。2021年横浜鶴見リハビリテーション病院院長に就任。30年間、認知症患者とその家族に寄り添い、介護する側・される側、両者の人生の質向上のため、それぞれの家族にとって最もよい治療法を模索し続けている。著書に『認知症は接し方で100%変わる!』などがある。