「いま世界中でくしゃみをした人数」はフェルミ推定でサクッと判明

Googleの入社試験などでは、「ピアノ調律師は世界中に何人いる? 」「スクールバスにゴルフボールは何個入るか?」などの、一見わかりそうにもない問題が出されることがあります。こうした問題には「フェルミ推定」という方法を用いる必要があります。子どもから大人まで大人気の「数学お兄さん」が、就活にもビジネスにも応用できる、そのやり方やその意義などを紹介してくれます。

測定できないことは「概算」すればいい

小学校で習う算数は、目に見えるものや答えがはっきりわかるものを計算したと思います。でもコツさえつかめば、実は目に見えないモノだって計算できます。たとえば今、まさにこの瞬間、世界中でくしゃみをした人数を計算しましょう。

「そんなのわかるわけない」と思うかもしれません。でも、それを概算で予想して導き出していく数学的手法があるのです。くしゃみはあくまで例ですが、これを理解すると世界の市場規模などを概算できるようになります。

このように、一見予想もつかないような答えや数字を、論理的にひも解きながら概算していく手法を「フェルミ推定」といいます。確実な数ではないけど、推測して遠からずな答えを出していくため、コンサルティングやマーケティングにもよく活用される手法です。

今くしゃみした人をザックリ計算

では、この瞬間に世界中でくしゃみをした人数を計算していきましょう。

まず、人は1日に何回くしゃみをするかを推定していきます。しない人はまったくしないですし、する人はかなりしますから、ザックリ平均して1日で2〜5回と推定します。

ここでは仮に2回としましょう。次に、くしゃみは1回あたりどのくらいかかるかを推定します。「ヘックション!」……で0.5秒くらい。

くしゃみ2回で1秒。よって、人は1日に1秒くしゃみをしているという計算になります。

24時間(=8万6400秒)のうち、くしゃみの1秒は、8万6400秒分の1秒。世界の人口は約78億人。これらから、世界中で1秒あたりにくしゃみする人を計算して求めましょう。

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つまり、今この瞬間にくしゃみをしている人は地球上で約9万人いると推測できました。余談ですが、今のご時世で約9万人が1か所に集まってくしゃみしたら、飛沫でそれは大変なことになりそうですね。

YouTubeの視聴時間を概算で推測

フェルミ推定は、いかに答えにたどり着くまでの数字の精度を上げるか、どのように式を構成するかがポイントになります。そのときどきの流行や方向性、世の中の移り変わりを観察し、数字や概算を読み解く力も大切です。

ではもうひとつ、推定の複雑さを上げて考えてみましょう。日本の15~80歳で、1日のYouTubeの総再生時間は合計どのくらいでしょうか。

まず、YouTubeの視聴人数を割り出します。

15~80歳の人口は9847万人(2021年8月総務省統計局)で、YouTubeの認知率は96.9%、利用率65.8%(対象:15〜79歳の8837名、NTTドコモモバイル社会研究所調べ、2021年6月)です。計算してみましょう。

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YouTubeを見る人は日本で約6500万人いることがわかりました。次に、YouTubeを見る人の視聴時間を分けていきます(対象:20歳〜59歳の400名、ストラテ調べ、2021年4月)。

1日当たりの平均YouTube視聴時間

2つの調査結果の調査年齢が少し異なることや、利用時間のアンケートのとり方が正確な時間が読み取れないため、ザックリとした計算になります。

30分未満の人の平均を15分、30分~1時間の人の平均を45分などとし、15歳から79歳までの人口が約1億人、そのなかの利用者が約6500万人として計算します。

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この結果、日本での1日のYouTubeの総再生時間は約6000万時間と推定されます。

このようにフェルミ推定を応用することで、「日本ではYouTubeの再生時間が長いから、わが社もYouTube市場に乗り出そうか」などと、予測や方針を考える一端になります。

他にも「新商品はどれくらい売り上げが見込めるか」「発売時期はいつごろがベストか」が計算できるため、フェルミ推定によって概算予測が立てやすくなり、ビジネス戦略やマーケティングに大いに役立ちます。

また、答えが出たとき「新しい説を見つけてしまった」という快感めいたものも感じられます。ぜひ試してみてください。

 

PROFILE
横山明日希

math channel代表、日本お笑い数学協会副会長。2012年、早稲田大学大学院修士課程単位取得(理学修士)。数学応用数理専攻。大学在学中から、数学の楽しさを世の中に伝えるために「数学のお兄さん」として活動を開始し、これまでに全国約200か所以上で講演やイベントを実施。2017年、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)主催のサイエンスアゴラにおいてサイエンスアゴラ賞を受賞。著書に『笑う数学』(KADOKAWA)、『算数脳をつくる かずそろえ計算カードパズル』(幻冬舎)などがある。