介護のやり方はそれぞれ別! 認知症「4つのタイプ」の見分け方

介護者

前回の記事で、認知症を介護をする方への具体的な話し方のヒントをご紹介しましたが、そもそも認知症には大きく分けて4つのタイプがあり、それぞれ対処法が少し異なります。患者とその家族に30年以上寄り添ってきた、医学博士の吉田勝明先生に教えていただきました。

認知症の型で介護の「コツ」が違った!

「認知症といえば、アルツハイマー」と思われている方も少なくありませんが、認知症は「認知機能に変化が生じたもの」と広義の意味があります。

ちなみに、認知機能とは、記憶・言語・計算・判断などの知的な能力のこと。そのため認知症は細かく分けると、100種にもなるのです。アルツハイマー型認知症は、その一種であり代表的なもので、認知症と診断された方の、実に70%近くが含まれます。

次に多いのが、「脳血管性認知症」で20%ほど。「レビー小体型認知症」が約4%、「前頭側頭型認知症」は約1%。そのほかの認知症が、全体の5%ほどを占めています。

この4つの認知症の特徴と、典型的な症例、介護のコツをご紹介します。知ることで「これは認知症がさせていること」と、何か起きても冷静になれ、介護中の気持ちが少しラクになるはずです。

1 アルツハイマー型認知症

認知症の方のうち、約7割を占める。 糖尿病・高血圧の方がなりやすいというデータもある。典型的な症状である「記憶障害(出来事などの記憶が抜け落ちてしまう障害)」は、初期から見られる。加齢による物忘れとは異なるので、早めの見極めが必要。

アルツハイマー型

【原因】脳にたんぱく質・アミロイドβ(ベータ)がたまり、神経細胞を阻害。広範囲で脳が萎縮して認知機能に障害が現れます。
【特に影響を受ける部位】記憶を司どる「海馬」、空間の把握や物の位置を判断する「頭頂葉」など。
【進行】いつの間にか始まり、ゆっくりですが、確実に進行します。
【典型的な症状】記憶障害、徘徊、嗅覚の低下、作話など。

最初は単なる物忘れやうっかりミスと思われますが、じわじわと進行。嗅覚の衰えで異臭に気づかず腐ったものや、便など食べてはいけないものを食べてしまい(異食)、下痢や嘔吐をすることもあるので注意が必要です。

家族の悪口を言いふらすときの対処法

叱責は百害あって一利なし。しっかり話を聞き、タイミングを見計らって気をそらすのがコツです。

【声かけの例】
「なるほど、そうなんですね(否定せずに話を聞き、うなずく)。
あら、もうすぐ12時ですね。
暑いからお昼ご飯は素麺にしましょうか」

【NGな声かけ】
「なんで嘘をつくの!」……責めない
「ご近所にあることないこと言って、みっともない!」……叱らない
「あなたの言うことは信用できません」……突き放さない

2 脳血管性認知症

脳血管の詰まりが原因。脳血管障害に気づき、早期に治療できれば進行を抑えることもできる。感情のコントロールがしにくくなり、悲しみや怒りに支配されやすくなることも。うつうつとする方も多い。

脳血管性認知症

【原因】脳梗塞のうこうそくや脳出血など、脳血管が詰まって血液が行き届かなくなり、脳の一部が壊死。認知機能が侵されます。
【特に影響を受ける部位】血管が詰まって血流が悪くなった部位(梗塞巣)によってさまざま。
【進行】いつ発症したか明確で進行が止まる段階があり、階段状に進行します。
【典型的な症状】感情失禁、遂行機能障害、注意障害など。

脳血管性認知症の場合、詰まっている血流によって症状が変わりますが、多くの場合、感情失禁が見られます。うつうつとしたり、逆に急に怒りだすことも。

また、記憶力は低下したものの読解力は問題なしなど、症状がまちまちな「まだら認知症」も。できることまで取り上げないよう、できないことのみサポートを。さらにメタボリック症候群(高血圧・高脂血症など)を併発しているケースもあり、食事の改善や適度な運動など体調管理も重要です。

うつうつとしているときの対処法

生きる意欲が回復するように、「あなたがいてくれてよかった」「いないと困る」と伝えてください。

【声かけの例】
「私は悲しいですよ、あなたが死んでしまったら」
「迷惑かけてもいいんですよ、おばあちゃんがここにいるだけでうれしいの」

【NGな声かけ】
「そんなこと言っても仕方ないでしょう?」……共感してもらえないと絶望する
「薬もらいますか?」……安易に投薬をすすめない

3 レビー小体型認知症

認知症の方が恐怖を感じるほどのリアルな幻視があるのが特徴。手足の筋肉も硬直しやすくなり、転倒も増える。幻視で見えるものは人によって異なるが、特徴的なのは「虫や小動物がいる」というもの。

レビー小体型

【原因】レビー小体というたんぱく質が、脳に蓄積されることが原因です。
【特に影響を受ける部位】記憶を司る「海馬」、視覚情報を処理する「後頭葉」など。
【進行】ほかの認知症より進行が早いのが特徴です。
【典型的な症状】幻視、運動機能の低下(パーキンソン症状)、うつなど。

幻視とは、存在しないものが見える症状で、家の中に知らない人がいる、足に虫が這っているなどと恐怖を訴えます。レビー小体型認知症の方にとっては「実際に見えて存在しているもの」なので、否定したり笑ったりするのはやめましょう。

パーキンソン症状では、パーキンソン病と同じように、動きが遅くなる、小刻みに歩く、前かがみになる、震えるなど異変が現れます。転倒しやすくなるので、歩行の介助が必要になることも多いでしょう。

同時に、落ち着かなくてソワソワする、集中できない、うつうつとするなど、精神的に不安定な状態が目立ちます。

幻覚におびえているときの対処法

ご本人には「実際に見えていて、聞こえています」。本当に怖くつらいのだから、決して否定しないでください。

【声かけの例】
「それは怖いですね」
「大丈夫です。私がいます」
「私が追っ払いますよ」

【NGな声かけ】
「何もないじゃない」……否定はダメ
「変なの(笑)」……嘲笑などもってのほか
「いい加減にして!」……叱責しても解決しない

4 前頭側頭型認知症

認知症全体の1%程度。一見「年をとって性格が変わった」ようにも見えるため、発見が難しいという一面も。性格の変化はさまざまだが、おだやかな性格だった人が、突然怒りっぽくなるなどは特徴的。

前頭側頭型

【原因】ピック球と呼ばれる脳の神経細胞の塊が蓄積し、「前頭葉」や「側頭葉」が萎縮することで発症します。
【特に影響を受ける部位】社会性や言語をコントロールする前頭葉、記憶・聴覚・言語・嗅覚を司る側頭葉など。
【進行】ほかの認知症よりも、進行が遅いのが特徴です。
【典型的な症状】反社会的行動、オウム返し、音への反応が過敏になることも。

高齢者だけでなく、50~60代にも発症者が見られる認知症。難病指定されています。おとなしい性格だった人が突然粗暴になったり、万引きやあおり運転など反社会的な行動を始めるようになったり……。「まるで人が変わったよう」とよく言われるのがこのタイプ。

同じ言葉や行為を繰り返す「常同行動」といった症状も見られます。甘いものなど、同じ食べ物を毎日食べることから、生活習慣病になることも。「よく食べるから」と買いだめすることなく、「食べてよい量以外は隠す」など、介護する側の工夫が必要です。

万引きをしようとしたときの対処法

悪いことと理解して、万引きするわけではありません。善悪の判断がついていないのだから、責めずに未然に防ぐための声かけを。

【声かけの例】
「これが気に入りました? ではお支払いしましょうね」
「お買い物なら一緒に行きましょう」

【NGな声かけ】
「何やってんの! ダメでしょ」……責めても直らない
「それは万引きですよ」……判断能力の低下で、意味がわからない

 

PROFILE
吉田勝明

1956年福岡県生まれ。医学博士。日本老年精神医学会専門医、精神科専門医。金沢医科大学医学部、東京医科大学大学院卒業。上尾総合中央病院などで勤務後、横浜相原病院を開設し、院長を務める。2021年横浜鶴見リハビリテーション病院院長に就任。30年間、認知症患者とその家族に寄り添い、介護する側・される側、両者の人生の質向上のため、それぞれの家族にとって最もよい治療法を模索し続けている。著書に『認知症は接し方で100%変わる!』などがある。