「排水溝の水は必ず反時計回りに流れる」これってホント?ウソ?

物理というと学生時代の難解な数式を思い出して「難しいもの」と敬遠してしまいがちですが、実は私たちの生活は物理法則であふれています。今まで当たり前に考えていたけど、よく考えると不思議な生活上の二つの疑問について、図解でわかりやすく説明します。

コリオリの力はいつでも作用している

次のような話を聞いたことありませんか?

「お風呂のお湯を抜くときの水の排出をよく見てください。渦を巻いていることがわかると思います。しかも、反時計回りに……」話は続きます。

「……この渦巻の方向は、地球の北半球では必ず反時計回り、南半球では時計回りになるのです」と。地球規模の「ある力」が、身近なところに作用しているという話です。

物理的に正しいか考えていきましょう。

原因として、多くは、次のような説明がなされます。地球上で働いている力に「コリオリの力」があります。これは地球の「自転」によって生じる力です。

コリオリの力は、北半球では北から、南に行くときは右向きに働き、南から北へ行くときも右側に働きます。

こり折り

コリオリの力がもっともわかりやすいのは、「台風」です。台風は、北半球では反時計回りに、南半球では時計回りになっています。

台風の回転に影響を与えるというと、コリオリの力がよほど大きいような感じがしますが、実際は、その力は小さく、台風くらいの大きさにならないとはっきり見えないのです。

実は、私たちが歩いているときも、自転車に乗っているときも、車に乗っているときも、コリオリの力は作用しています。しかし、あまりに小さい力なので、日常の生活にはほとんど影響を与えません。

影響があるのは、飛行機で南北方向に飛んでいるときなどです。北半球では、南から北に向かうときも、北から南に向かうときも進路は右方向にずれます。

こり折り

冒頭の風呂の排水に対しては小さな影響しかないので、回転は右回りにも左回りにもなります。それは風呂や排水口の形状などの影響によるものでしょう。

コリオリの力の説明は正しいのですが、それを身近で見られるほど大きな力ではありません。つまり、「排水溝の水は必ず反時計回りに流れる」は俗説だったのです。

猛暑を引き起こす「フェーン現象」の仕組み

近年、夏の暑さが、どんどんひどくなってきているような気がします。

2007年8月16日には、埼玉県の熊谷市と岐阜県の多治見市で気温が40.9℃に達し、国内の観測史上、最高気温となりました。それまで国内の最高気温は70年以上も破られたことはありませんでした。

さらに最近では、2020年8月17日に静岡県浜松市で41.1℃と、最高気温を次々に塗り替えています。

このような猛暑の原因の1つに、「フェーン現象」が考えられています。天気予報などで、一度は聞いたことがあると思いますが、実際に、どんな現象なのでしょうか。

結論からいいますと、フェーン現象とは、湿り気のある空気が山を通り越して、乾いた高温の空気になる現象をいいます。

なぜ、フェーン現象が起こるのかについては諸説ありますが、代表的な説を紹介します。

たとえば、日本海側から、海の水分をたっぷり含んだ風が上陸します。すると間もなく、山岳地帯に突き当たります。そこで風は山に沿って上昇気流となります。

高度が高くなるにつれ、空気の温度は低くなっていきます。すると、空気中の水分で雲をつくり、雨になります。

その結果、空気が山頂に達するころにはほとんどの水分を失っています。こうして乾いた空気は山を越えて反対側の斜面を下りてきます。

下りでは高度が低くなると温度が上がってきます。結果、山のふもとには、乾燥した温かい風がもたらされることになるのです。これがフェーン現象による猛暑の原因です。

フェーン現象



 

PROFILE
久我勝利

1955年神奈川県生まれ。出版社の編集者を経て独立。主に科学系の分野で執筆活動を展開。やさしくサイエンスの面白さを伝える。またテレビの企画・リサーチも手がけている。『絶対、人に話したくなる「時間」の雑学』(PHP研究所)、『死を考える100冊の本』(致知出版社)など、著書多数。