その遊びは本当に危ない? 先回りしすぎる親が子どもから奪う能力

子どもの才能や意欲を伸ばすにはどうすればいいのでしょうか。教育ジャーナリストの中曽根陽子さんは、子どもを決めつけないで、好きなことややりたいことを見つけられるようにするのが親のすべきことだと言います。例えそれが多少の危険を伴うことであっても、です。

子どもに目を向けすぎることの弊害

私たち親って、子どもの可能性を広げたい! と思っている割には、子どもの行動を制限したり、枠にはめようとしたり、自分の中にある「こうあってほしい」という理想の子ども像に近づけようとしがちではないでしょうか?

私もかつてそうなりがちだったので、その気持ちがよくわかります。その裏にあるのは、心配だったり、失敗する姿を見たくないという思いだったり……、それも愛情ではあるのですが、行き過ぎたら、伸びようとする芽を摘んでしまいかねません。

また、世の中がこれほど早く変化している時代に、古い価値観や自分の思い込みで子どもの行く末を決めつけたら、それこそ子どもの将来を潰す結果になりかねませんし、子どもの「やりたい気持ち」や自主性は育ちません。

そこで、本稿では、子ども自身のやりたい! という気持ちを育てるために何をすればいいのか、あるいはしないほうがいいのかを紹介していきます。

“自由”に遊べない今の子どもたち

まずは、遊びについてです。

子どもは遊びの天才といわれます。わざわざおもちゃを与えなくても、何でも遊びにしてしまう才能を持っています。

赤ちゃんがティッシュの箱からティッシュを全部出してしまったり、小さい子が、砂場でひたすら穴掘りをしたり、何度も失敗しながら砂山にトンネルをつくったり。皆さんも幼い頃にそんな遊びに興じた記憶があるのではないでしょうか。

大人から見たらくだらないことだったり、ちょっと迷惑なことだったりしても、それが子どもの探究力を育てる大事な機会になっているのです。

私も小さい頃、折り紙を水に浸して色水をつくってジュースの空き瓶に詰めてお店屋さんごっこをして遊んでいたとき、赤と青を混ぜると紫色になる発見をしたことを鮮明に覚えています。遊びの中で発見をしていたのですね。

しかし、最近は、自由に遊んでいいよと言われても何をすればいいのかわからず、戸惑ってしまう子どもが増えているといいます。

その理由は、子どもが自由に遊べる場所がなくなっていることや、いろいろなものを与えられ過ぎて、子どもが工夫して遊ぶ余地がなくなっているから。

また、「危ないから」とか「服が汚れるのが嫌」などの理由から、親が「これで遊びなさい」などと細かく指示してしまい、子どもを自由に遊ばせない家庭が増えたためだともいわれています。また、習いごとで忙しく、自由に遊ぶ時間がないという子どもも多いでしょう。

しかし、子どもの成長にとって自由に遊ぶことはとっても大事な時間です。自由に遊ぶ中で、子どもは想像力を働かせて遊びを変化させていきます。それを親の都合や心配で妨げてしまったら、成長や探究の機会を奪ってしまうことにもなりかねません。

危ないことを避け続けるのは逆に危険

ただ、「子どもには自由に遊ばせてあげたい……」そう思っているはずなのに、日常生活の中で、無意識に子どもの行動を制限してしまうこともあります。皆さんにも、心当たりがあるのではないでしょうか。

たとえばこんな例があります。3人の子どもを持つあるお母さんは、長男が幼稚園の頃、「長い棒は危ない」と言い聞かせて、一切持たせなかったそうです。周りのお母さんがそう言っているのを聞いて、自分もそう言わないといけないと思っていたところもあったといいます。男の子は、棒を見つければ剣や鉄砲に見立てて振り回したがりますからね。

しかし、歳が離れて生まれた次男は、禁止しなくても、危なさはわかっていて、じょうずに棒を使って友達と遊んでいるのを見て、心配や周りの目を気にし過ぎて、子どもの楽しみを奪っていたのかもしれないと反省したと話してくれました。

そうなんですよね。特に初めての子育てでは、何をどこまで許していいのか、その兼ね合いがわからず、周囲のお母さんたちの考えに同調してしまいがちです。でも、何事も最初から禁止をしていたら、子どもはその扱いや加減を学ぶこともできません。

本当に危ないときには止める必要はありますが、子どもは、危ないということも含めて、経験しながら学んでいくのです。

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外遊びは子どもの生き抜く意欲を育む

遊びの大切さは、専門家の方々も指摘しています。

たとえば、日本を代表する教育学者である東京大学の汐見稔幸名誉教授は、著書(『汐見先生の素敵な子育て「子どもの身体力の基本は遊びです」』旬報社)の中で「遊びは、たくらむ能力を訓練する」といっています。

実際子どもは、何もない広場でも自在に遊びをつくり出しますよね。それこそ、自分のやりたい! という気持ちをベースに、そこにない新しいことを遊びを通して、つくり出しているのです。

30年以上にわたって子どもの教育に関わってきた花まる学習会代表の高濱正伸さんも、「子どもは、ゾーン(集中状態)に入って、心を奪われたときに一番伸びる。その体験総量がすべての土台になる。遊びの中には想像力、集中力、すべてがある」と言います。

夢中になって遊ぶ中で、さまざまな感情を身体で受け止めながら探究していく。それが、これから特に必要とされている、何かを創り出す力=たくらむ能力の基礎にもなるのです。

特に外遊びは、自分で工夫しながら遊びをつくり出す喜びを体験できる絶好の環境。身体能力だけでなく、子どもの中から出てくる意欲=やりたいという気持ちやたくらむ力を育てるためにも、できるだけ、自然の中で体を動かして遊ぶ機会をつくってあげたいものです。

家族で行動する子ほど社会を生き抜く能力が高い

何か新しいことを探究したり、挑戦するときには、失敗が欠かせません。むしろ、失敗や問題に出合ったときに、どうそれを乗り越えようかと考えることで、思考が深掘されます。

探究することは、失敗すること、そしてそれを乗り越えることとセットといってしまってもいいかもしれません。

しかし、今、失敗を恐れて挑戦をしない子どもや、ちょっとしたことで気持ちが折れてしまう、打たれ弱いワカモノが増えているといわれています。

多少の困難や逆境があってもへこたれず前向きに物事に取り組める力、そして前向きに生きていける力は、どうやったら身に付くのでしょうか。

子どもの頃の体験とへこたれない力の相関を測った研究があります。

国立青少年教育振興機構・青少年教育研究センターが行った「子供の頃の体験と社会を生き抜く資質・能力の関係」という研究では、「へこたれない力」「意欲」「コミュニケーション力」「自己肯定感」を、社会を生き抜くために必要な資質・能力と位置づけて、家族行事やお手伝い、友達との外遊び、学校での委員会活動や部活動などをどのくらいしていたかと、それぞれの力の相関を測っています。

この調査では、「家族行事」(家庭)、「友達との外遊び」(地域)、「委員会活動・部活動」(学校)を多くしていた人ほど、社会を生き抜く資質・能力が高いという結果が出ました。

さらに、家庭、地域(放課後や休日)、学校での体験の質とへこたれない力の関係をより詳しく見ていくと、子どもの頃、家族でスポーツをしたり自然の中で遊んだりした人ほど、失敗してももう一度挑戦する「へこたれない力」が高いこともわかったのです。

家族と一緒に遊んだり、スポーツをしたり、学校での課外活動をする中で、うまくいかないことを乗り越えた体験やそのときに感じる喜び、夢中になって楽しかった記憶が、大人になって、多少の困難なことに出合っても、へこたれず前を向いて生きていける力の源になっているのでしょう。

 

PROFILE
中曽根 陽子

お母さんの気持ちがわかる子育て・教育コンサルタント。教育ジャーナリスト。出版社勤務後、女性のネットワークを活かして取材・編集を行う、情報発信ネットワーク「ワイワイネット」を発足、代表に。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探求型の学びへのシフトを提唱している。