「できたこと」に注目するだけ! 子どもの自己肯定感を上げる秘訣

親子

日本の受験方法では、学力に大きな「穴」があると不利になってしまいます。それを知っている親は、なるべくまんべんなくいい点が取れるよう「できていないところ」を指摘してしまいがちです。でも、それが実は子どものやる気を削いでいるだけだとしたら……。お笑いタレントで3児の母でもあるくわばたりえさんも実践している「親子できたことノート」。これを開発した行動科学専門家の永谷研一さんに、子どもの勉強へのやる気を引き出すヒントを紹介してもらいます。

親も書くことがなぜ重要なのか

「親子できたことノート」はその名の通り、“親と子”で「できたこと」を書いていくものです。子どもに「できたこと」を書かせて親がほめようという、一方通行のものではありません。子どもと一緒に親自身も日々の「できたこと」を書き記していくものです。

私の主宰する“親子セミナー”で、こんな質問をするお母さんがいました。

「なぜ、私もやらなくてはいけないのですか?」
「私のことはもういいんです。子どもを何とかしたいのです」

私はズバリ答えました。

「まさにそうなんです。子どもの自己肯定感を育みたいからこそ、お母さんの“できたこと”が大事なんです」

親子できたことノートは、毎日子どもと一緒に親も“できたこと”を書いていきます。その“できたこと”にお互いにシールを貼ったりコメントしたりして承認するのです。

1日たった10分のとてもシンプルな活動ですが、承認し合うことによって、自己肯定感が向上することはもちろん、次第に親との信頼関係が深まっていきます。それが、学校や社会において他者との人間関係を作る基盤となっていくのです。

ノートの例

親の書く“できたこと”は素朴なほどいい

親子できたことノートを開発するときに、モニター20人に集まってもらって使い方をレクチャーしたあと、3カ月のトライアルをしました。1カ月ごとにノートを持ってきてもらい、成果や課題を話し合っていきました。

そこに来ていた、小学校1年生(6歳)の女の子のあるお母さんは悩んだ様子で、こう話されました。

「私のできたことを書こうとするのですが、“こんなレベルでいいの?”と考えてしまって、どうしても書けないのです」

お話を伺うと、その方は大手の流通関係の会社にお勤めで、マネージャーをされているとのこと。会社ではいつも部下の行動を指導されている立場だそうです。

いつもレベルの高い行動を促しているので、いざ、自分の“できたこと”と言われても、“こんなレベルのことができたことと言えるだろうか?”と疑問を持ってしまい、筆が進まないと言うのです。

そう考えてしまう状況はわかります。だって、高い成果を求めて部下にはかなりのレベルの行動を求めていると思われるからです。場合によっては、「その程度で成果が出ると思っているの? 目標達成のために、もっとしっかりPDCAを回すように」と叱咤激励する毎日かもしれません。

でも、ひとつ考えてください。ここは会社ではないのです。子どもにとって、“人間の基盤を作る最初の場所”。それが家庭です。ここはひとつ力を抜いて自然体になってもらい、普段の何気ない“できたこと”に着目してほしいのです。親の書く“できたこと”は素朴なほどいいのです。

ところで、なぜ、親が“できたこと”を書くことによって子どもの自己肯定感が上がっていくのでしょうか。脳科学の理論によって説明していきましょう。

親との関係が人と信頼関係を築く基盤となる

親ができたことを書くと、子どもの自己肯定感が上がる理由。その答えは、できたことに子どもからシールやコメントもらうと、親がとてもうれしい表情を見せるからです。親が幸せの表情をする。だから、子どもも幸せを感じるのです。

これはミラーニューロンという脳科学でも説明できます。人間の脳には、“ミラーニューロン”という機能があります。ミラーは鏡のことですね。脳と脳が向き合ったとき、互いの脳は同じような活動をするというものです。

たとえば、目の前の人が手を回したとします。するとそれを見ている人の脳は、実際に手を回したときと同じ脳の部位が反応して働き出すというものです。親の喜んでいる姿を見て子どももうれしくなってしまうという現象はこのような脳の働きでも説明できます。

しかも、自分の“できたこと”を子どもに認められるのですから、自然に微笑んでしまうことでしょう。これで、なぜ子どもたちの自己肯定感が上がるかと言うと、「親が喜んでくれた」ということに幸せを感じ、「自分が親の役に立てた」という実感を得ているからです。

本質的な自己肯定感とは、「ありのままの自分で人の役に立てること」「社会の中で存在価値があると思えること」。親子でコミュニケーションをとりながら楽しむことによって愛着形成につながり、それによって信頼関係が深まります。これは親子双方の精神安定にも効果があります。

そして子どもにとって、親との関係が基盤となって、人と信頼関係を築く基本となる「承認する力」が育ちます。社会に出たあと、他者との関係性を作る際にも、よい影響を与えていくことでしょう。

親にとっても、自分自身へはもちろん、わが子を「見る目」が変わります。自然にいい部分ばかり目に入るようになるので、おべっかで「ほめる」必要もありません。このような親の変化により、お子さんはさらにうれしくなっていくことでしょう。

次の記事では、勉強嫌いの子どものやる気を引き出すために、親が意識すべきことを解説します。

 

PROFILE
永谷 研一

行動科学専門家。行動科学や認知心理学をベースにこれまで1万人以上の行動実践データを検証・分析し、目標達成のための行動習慣メソッドを確立。自己肯定感をあげることで成果を上げる「できたことノート」は、企業のみならず学校にも取り入れられている。4児の父。