“できなかったこと”を責める親“、できたこと”をほめる親の大きな差

親子

日本の受験方法では、学力に大きな「穴」があると不利になってしまいます。それを知っている親は、なるべくまんべんなくいい点が取れるよう「できていないところ」を指摘してしまいがちです。でも、それが実は子どものやる気を削いでいるだけだとしたら……。お笑いタレントで3児の母でもあるくわばたりえさんも実践している「親子できたことノート」。これを開発した行動科学専門家の永谷研一さんに、子どもの勉強へのやる気を引き出すヒントを紹介してもらいます。

「勉強しなさい!」で勉強する子はほぼいない

勉強に身が入っていないわが子に「勉強しなさい!」と言っていませんか? テストで不正解のところを指摘して責めてしまったり、無理やり次のテストの目標設定をさせてしまうことで、ますます子どもがやる気をなくしてしまう……という悪循環に陥ることもあるでしょう。

でも、親として、子どもが授業についていけているか心配の種ですし、遅れていたら何とかしてあげたい一心ですよね。ただ子どもが心配のあまり言っている言葉が、かえってやる気を削いでいるとしたら問題です。

  • さっさとやっちゃいなさい。ノロマね。(人格の否定)
  • お兄ちゃんを見習いなさい。あなたって。(誰かとの比較)
  • そんなことじゃ将来あなたが困るわよ。(恐怖の植え付け)

イライラしていたら、思わず言ってしまいそうな言葉ですよね。では、どうやって子どもと接すればいいのでしょうか。

実は簡単です。それは、「勉強そのものではなく、その周辺の“できたこと”に目を向けさせる」ことです。私は多くの企業で人材育成や研修を行い、今まで1万5000人以上の目標達成のための行動変容を見てきました。そして行動データを分析してきました。

その中でわかったことは、目標設定して“できなかったこと”に着目させるやり方は、短期的にはよいが、中長期になると、モチベーションが続かず途中で頓挫しやすいという事実です。中学受験で燃え尽き症候群になる人がいるのは、そのためかと思います。

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最初に“できたこと”の承認から入ると自己肯定感がつくので、そのあと不安や壁があっても乗り越えていける

主体性がなければ子どもは絶対に伸びない

私が開発した「親子できたことノート」の目的は行動変容です。できたことを自己認識して自分を肯定的に見る目を養うことで、新しい行動を自ら見いだすという主体性を導き出す道具です。

人が自ら“行動を変えたくなる”ためには、できなかったことではなく、できたことに注目して自己肯定感を向上し、その上で本人が「もっとこうしていこうかな」と振り返りをすることが重要です。

自己肯定感が低い状態では、「次はこうしてみよう」と自ら工夫するまでには至りません。逆に、自己肯定感が高い状態では、「明日からこうやってみよう」と、次の行動に移りやすくなります。そうした小さな行動の積み重ねが、結果的に大きな成果につながるのです。

よって、「今日は、算数のテストが80点だった」などと結果だけに着目するのは逆効果です。たいていの人は、テストで80点だったとしても、できていない20点のほうに目を向けてしまうからです。

もし、勉強面に前向きに取り組んでもらいたいなら、むしろ、勉強をするまでの準備段階など、直接勉強とは関係ないことに積極的に目を向けるようにすると効果的です。要は“プロセス”に着目するのです。この上で週1回、新しい行動を見つけ出すための振り返りを行うことで、行動変容を導き出していきます。

ここまで聞いて、「勉強結果に着目させて、足りないところを埋めるように促すのが、成績を上げる近道ではないか」と考える人も多いことでしょう。それもひとつの考え方かもしれません。

しかし、親子できたことノートで大切にしている考え方は、「子どもの主体性」です。人に言われたからではなく、自分で考え、自ら行動を見出していってほしいのです。そして、どんなささいなことと思われる小さい行動の変化であっても、できたことを磨いて新しい行動を見いだす習慣が根付いていることが大きい成果を生み出すのです。

まさに「生きる力」を養成していると言っても過言ではありません。そして、親としてできることは、子どもが自分で考えるということを支援する「質問(問いかけ)」です。

親子できたことノートには、毎日できたことを書く、できたことメモ欄に加え、週1回はベストできたことを選び、さらに“次の行動計画”を書く欄があります。

問いかけで「できたこと」を補強する

その週で一番いい!と思ったことを「ベストできたこと!」として1つ選んでください。選び方は直感でOKです。「どれが一番好きなできたこと?」と聞いてもいいでしょう。

あくまで子どもの意見を尊重することが大切です。決して誰かと比較して優れたもの(たとえばテストで100点だった)だけに着目して親から誘導しないように注意してください。その1つのベストできたことについて、親から子どもに問いかけをすることで新たな行動を見いだしていきます。

では、「勉強前に、散らかっていた部屋の掃除をした」というベストできたことから新しい行動を引き出した事例で説明しましょう。

1. できたことを詳しく聞く

できたことの詳細を、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」に沿って聞いていきます。有名な4W1Hですね。

  • いつやったの?(When)「今日、家に帰ってきたとき」
  • どこでやったの?(Where)「自分の部屋で」
  • 誰とやったの?(Who)「誰に言われたわけでもなく」
  • 何をしたの?(What)「使わなくなった参考書やプリント類を」
  • どうやったの?(How)「分類して捨てたり並べたりして整理した」
2. なぜ、できたのか聞く

次に、できた理由を探ります。人はできなかった原因を考えることはあっても、できた理由を考えることはあまりありません。しかし、人が行動を変えるためには、そもそも、なぜ「自分がそうした行動をとったのか?」 と考えを深めていく必要があります。

そのため、親から「なぜできたのかな?」と聞いてあげるとよいでしょう。では、事例の親子のやりとりを見ていきましょう。

親「えらいね。なぜ、部屋を掃除できたんだろうね?」
子「散らかっていた部屋で過ごしたくなかったから」
親「へえ。なぜ、散らかった部屋だと過ごしたくないんだろうね?」
子「汚いと落ち着かないしイヤだから」
親「なるほど。なぜ、落ち着かないとイヤなの?」
子「気持ちよく勉強する気も起きなくなるから」

このように、「なぜ?」と質問を繰り返すことで、「部屋の掃除をした」という出来事の本当の目的が、「気持ちよく勉強をする気になるため」であることが明確になりました。

いい行動に着目し、その行動をとった理由がはっきりすると、「次に、また勉強にやる気が出なかった場合には、まず、部屋を掃除してみる」というような、行動の変化が起こりやすくなります。

 

PROFILE
永谷 研一

行動科学専門家。行動科学や認知心理学をベースにこれまで1万人以上の行動実践データを検証・分析し、目標達成のための行動習慣メソッドを確立。自己肯定感をあげることで成果を上げる「できたことノート」は、企業のみならず学校にも取り入れられている。4児の父。